政略結婚なのにここまで溺愛されるなんて思いませんでした

ベル

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パーティー

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「お誕生日パーティー、ですか」


「...あぁ」


ある日の夕食時、クラストは眉間に皺を寄せながら頷いた。


「どうしても夫婦一緒に欲しいと言われてね。...マリー、同席してくれるかい?」


「ええ、もちろんです」


「...顔を見せたらすぐに帰ろう」


クラストが帰宅後、深刻そうな顔で何を言うのかと思えば、今進めている事業の取引相手である公爵家長男の誕生日パーティーに呼ばれたとの話だった。立場上断ることができなかったという。


何故こんなにも深刻な表情をされているのかしら?そういえば、私パーティーに参加するなんて初めてじゃない?


今まで参加を禁止されていたマリーは、これが初めての大きなパーティーへの参加となる。


それに、公爵家で長男の誕生日パーティーなんて、きっと盛大なものに決まっているわ。ちゃんとマナーについて学ばないと。


...もしかして、私が不慣れだからヘマをしないか心配されているのかしら。


「クラスト様」


「ん?どうした?」


「私、しっかりパーティーのマナーや立居振る舞いについて学んでおきますね」


「...マリー。何か勘違いしているようだけれど」


クラストはうーん、と考えるような仕草を見せ、ちらっとマリーを見た。


クラストの目には、マリーがとても光輝いて見える。こんなに可愛いマリーを大勢の男どもが参加するパーティーに連れて行くなんて考えただけでも嫌だった。


しかし、立場上断れない。何故かマリーはやる気を見せているし、これは絶対何か勘違いしているな。


「マリー、パーティーについてなど学ぶ必要はない。僕がずっと側にいるから、決して離れないでくれ。それだけでいい」


「でも...」


「いいね?」


「は...はい」


クラストは笑顔でマリーに言うと、マリーは思わずコクリと頷いた。


なんだか、ただならぬ圧を感じたような...


クラストはまだ何も知らない彼女を見ながらふぅと息を吐く。


クラストがマリーを溺愛していることは、マリー以外の貴族には周知の事実だった。男爵令嬢と侯爵家の結婚はなかなか珍しいもので、かつ侯爵家の方が溺愛しているとなればみな相手はどんな令嬢なのかと興味が湧いた。


しかし、すでにパーティーなどを禁止とされていたマリーは、親しい友人以外は接触することは出来ないようクラストが囲い込んでいた為、謎のベールに包まれていた。


おそらく相手の長男はそれを知っていて、敢えて夫婦で来るようにと言ったのだろう。マリーに興味を示したようだ。


「厄介なことになったな...」


クラストはポツリと呟いた。
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