9 / 22
パーティー
しおりを挟む
「お誕生日パーティー、ですか」
「...あぁ」
ある日の夕食時、クラストは眉間に皺を寄せながら頷いた。
「どうしても夫婦一緒に欲しいと言われてね。...マリー、同席してくれるかい?」
「ええ、もちろんです」
「...顔を見せたらすぐに帰ろう」
クラストが帰宅後、深刻そうな顔で何を言うのかと思えば、今進めている事業の取引相手である公爵家長男の誕生日パーティーに呼ばれたとの話だった。立場上断ることができなかったという。
何故こんなにも深刻な表情をされているのかしら?そういえば、私パーティーに参加するなんて初めてじゃない?
今まで参加を禁止されていたマリーは、これが初めての大きなパーティーへの参加となる。
それに、公爵家で長男の誕生日パーティーなんて、きっと盛大なものに決まっているわ。ちゃんとマナーについて学ばないと。
...もしかして、私が不慣れだからヘマをしないか心配されているのかしら。
「クラスト様」
「ん?どうした?」
「私、しっかりパーティーのマナーや立居振る舞いについて学んでおきますね」
「...マリー。何か勘違いしているようだけれど」
クラストはうーん、と考えるような仕草を見せ、ちらっとマリーを見た。
クラストの目には、マリーがとても光輝いて見える。こんなに可愛いマリーを大勢の男どもが参加するパーティーに連れて行くなんて考えただけでも嫌だった。
しかし、立場上断れない。何故かマリーはやる気を見せているし、これは絶対何か勘違いしているな。
「マリー、パーティーについてなど学ぶ必要はない。僕がずっと側にいるから、決して離れないでくれ。それだけでいい」
「でも...」
「いいね?」
「は...はい」
クラストは笑顔でマリーに言うと、マリーは思わずコクリと頷いた。
なんだか、ただならぬ圧を感じたような...
クラストはまだ何も知らない彼女を見ながらふぅと息を吐く。
クラストがマリーを溺愛していることは、マリー以外の貴族には周知の事実だった。男爵令嬢と侯爵家の結婚はなかなか珍しいもので、かつ侯爵家の方が溺愛しているとなればみな相手はどんな令嬢なのかと興味が湧いた。
しかし、すでにパーティーなどを禁止とされていたマリーは、親しい友人以外は接触することは出来ないようクラストが囲い込んでいた為、謎のベールに包まれていた。
おそらく相手の長男はそれを知っていて、敢えて夫婦で来るようにと言ったのだろう。マリーに興味を示したようだ。
「厄介なことになったな...」
クラストはポツリと呟いた。
「...あぁ」
ある日の夕食時、クラストは眉間に皺を寄せながら頷いた。
「どうしても夫婦一緒に欲しいと言われてね。...マリー、同席してくれるかい?」
「ええ、もちろんです」
「...顔を見せたらすぐに帰ろう」
クラストが帰宅後、深刻そうな顔で何を言うのかと思えば、今進めている事業の取引相手である公爵家長男の誕生日パーティーに呼ばれたとの話だった。立場上断ることができなかったという。
何故こんなにも深刻な表情をされているのかしら?そういえば、私パーティーに参加するなんて初めてじゃない?
今まで参加を禁止されていたマリーは、これが初めての大きなパーティーへの参加となる。
それに、公爵家で長男の誕生日パーティーなんて、きっと盛大なものに決まっているわ。ちゃんとマナーについて学ばないと。
...もしかして、私が不慣れだからヘマをしないか心配されているのかしら。
「クラスト様」
「ん?どうした?」
「私、しっかりパーティーのマナーや立居振る舞いについて学んでおきますね」
「...マリー。何か勘違いしているようだけれど」
クラストはうーん、と考えるような仕草を見せ、ちらっとマリーを見た。
クラストの目には、マリーがとても光輝いて見える。こんなに可愛いマリーを大勢の男どもが参加するパーティーに連れて行くなんて考えただけでも嫌だった。
しかし、立場上断れない。何故かマリーはやる気を見せているし、これは絶対何か勘違いしているな。
「マリー、パーティーについてなど学ぶ必要はない。僕がずっと側にいるから、決して離れないでくれ。それだけでいい」
「でも...」
「いいね?」
「は...はい」
クラストは笑顔でマリーに言うと、マリーは思わずコクリと頷いた。
なんだか、ただならぬ圧を感じたような...
クラストはまだ何も知らない彼女を見ながらふぅと息を吐く。
クラストがマリーを溺愛していることは、マリー以外の貴族には周知の事実だった。男爵令嬢と侯爵家の結婚はなかなか珍しいもので、かつ侯爵家の方が溺愛しているとなればみな相手はどんな令嬢なのかと興味が湧いた。
しかし、すでにパーティーなどを禁止とされていたマリーは、親しい友人以外は接触することは出来ないようクラストが囲い込んでいた為、謎のベールに包まれていた。
おそらく相手の長男はそれを知っていて、敢えて夫婦で来るようにと言ったのだろう。マリーに興味を示したようだ。
「厄介なことになったな...」
クラストはポツリと呟いた。
10
お気に入りに追加
1,864
あなたにおすすめの小説

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

憐れな妻は龍の夫から逃れられない
向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。


ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
義兄の執愛
真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。
教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。
悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる