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友人とのお茶会
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二人で会う機会は多かったわけではない。むしろ少なかった。
年に数回会えれば良い方で、クラストが歳を重ねるごとに公務の一部を徐々に任されるようになり、なかなか会える時間がなかったのだ。
マリーは全く気にしていなかった。家のための政略結婚。そう割り切っていたからだ。
もちろん、結婚するからには妻としての役目は果たさなれければいけない。それは承知の上だった。
「クラスト侯爵様と結婚なんて、羨ましいわ。あんな素敵な方が旦那様なんて!」
「本当よ。マリー、分かってるの?クラスト侯爵様は伯爵令嬢達にとても人気があるお方なのよ」
「そうよ!男爵令嬢のあなたが婚約者だと聞いて、みんなあなたを目の敵にしてるって噂よ」
正式にクラスト様との婚約が決まり、お祝いをすると友人達にお茶会に招かれた時のことだった。友人の御令嬢達から口々に責められてマリーは目をパチクリさせた。
「...クラスト様って、そんなに人気なお方なの?」
「「当たり前じゃない!今更何言ってるのよ!!」」
おぉ、声が揃ったわ...
勢いに圧倒されながらも、マリーは考えた。なるほど、私と同じように侯爵様の妻になれば悠々自適な生活ができるって考える方が多いのかしら。
そんな的外れなことを考えているとはつゆ知らず、友人達は口々に嘆いた。
「あぁ、クラスト侯爵様はどうしてマリーと結婚なさるのかしら。こんな世間知らずな...」
「本当よね。この子読書にしか興味がないんだもの。マリー、あなたまず恋愛を勉強した方がいいわ」
「マリー、クラスト侯爵様に失礼のないようにね」
あなた達、私の友人よね?
政略結婚とはいえ結婚する友人に対して放つ言葉じゃないような気がするけれど...
まぁ、いいわ。昔から私のことをわかってくれている数少ない貴重な友人なのだ。
「わかったわ。しっかり妻としての役割を果たすわ」
友人達の言葉に頷き、マリーは笑顔を見せた。これからは侯爵家の妻として、振る舞いにも気をつけていかなければならないのだろう。
正直面倒だけれど、これからの生活を思うとわくわくした。
そんなマリーを他所に、友人達はふと声を潜めて話し始める。
「...ねぇ。少し心配なんだけれど、この子本当に分かってるのかしら?」
「うーん、マリーは鈍感だし、分かっていないでしょうね。でも、むしろその方がいいんじゃないかしら?気づいたらこの子逃げ出しそうだし」
「まぁ、それはそうね。結婚したらさすがにわかるわよ。クラスト侯爵様が...」
どれだけマリーを溺愛していて、男性を一切寄せ付けないためにパーティーへの参加を禁止にしていたか。男爵令嬢との婚約はやはり侯爵家にとってのメリットが少ないと判断され、マリーとの婚約が白紙になりそうになった時、どれほどクラストが抵抗したか。
マリーとの結婚を認めてもらうため、優秀な兄二人に負けないほどの公務を担い、尽くしていたか。
マリーは全く知らなかった。クラストの愛情が異常なほど彼女に向いていたことを。
年に数回会えれば良い方で、クラストが歳を重ねるごとに公務の一部を徐々に任されるようになり、なかなか会える時間がなかったのだ。
マリーは全く気にしていなかった。家のための政略結婚。そう割り切っていたからだ。
もちろん、結婚するからには妻としての役目は果たさなれければいけない。それは承知の上だった。
「クラスト侯爵様と結婚なんて、羨ましいわ。あんな素敵な方が旦那様なんて!」
「本当よ。マリー、分かってるの?クラスト侯爵様は伯爵令嬢達にとても人気があるお方なのよ」
「そうよ!男爵令嬢のあなたが婚約者だと聞いて、みんなあなたを目の敵にしてるって噂よ」
正式にクラスト様との婚約が決まり、お祝いをすると友人達にお茶会に招かれた時のことだった。友人の御令嬢達から口々に責められてマリーは目をパチクリさせた。
「...クラスト様って、そんなに人気なお方なの?」
「「当たり前じゃない!今更何言ってるのよ!!」」
おぉ、声が揃ったわ...
勢いに圧倒されながらも、マリーは考えた。なるほど、私と同じように侯爵様の妻になれば悠々自適な生活ができるって考える方が多いのかしら。
そんな的外れなことを考えているとはつゆ知らず、友人達は口々に嘆いた。
「あぁ、クラスト侯爵様はどうしてマリーと結婚なさるのかしら。こんな世間知らずな...」
「本当よね。この子読書にしか興味がないんだもの。マリー、あなたまず恋愛を勉強した方がいいわ」
「マリー、クラスト侯爵様に失礼のないようにね」
あなた達、私の友人よね?
政略結婚とはいえ結婚する友人に対して放つ言葉じゃないような気がするけれど...
まぁ、いいわ。昔から私のことをわかってくれている数少ない貴重な友人なのだ。
「わかったわ。しっかり妻としての役割を果たすわ」
友人達の言葉に頷き、マリーは笑顔を見せた。これからは侯爵家の妻として、振る舞いにも気をつけていかなければならないのだろう。
正直面倒だけれど、これからの生活を思うとわくわくした。
そんなマリーを他所に、友人達はふと声を潜めて話し始める。
「...ねぇ。少し心配なんだけれど、この子本当に分かってるのかしら?」
「うーん、マリーは鈍感だし、分かっていないでしょうね。でも、むしろその方がいいんじゃないかしら?気づいたらこの子逃げ出しそうだし」
「まぁ、それはそうね。結婚したらさすがにわかるわよ。クラスト侯爵様が...」
どれだけマリーを溺愛していて、男性を一切寄せ付けないためにパーティーへの参加を禁止にしていたか。男爵令嬢との婚約はやはり侯爵家にとってのメリットが少ないと判断され、マリーとの婚約が白紙になりそうになった時、どれほどクラストが抵抗したか。
マリーとの結婚を認めてもらうため、優秀な兄二人に負けないほどの公務を担い、尽くしていたか。
マリーは全く知らなかった。クラストの愛情が異常なほど彼女に向いていたことを。
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