3 / 22
友人とのお茶会
しおりを挟む
二人で会う機会は多かったわけではない。むしろ少なかった。
年に数回会えれば良い方で、クラストが歳を重ねるごとに公務の一部を徐々に任されるようになり、なかなか会える時間がなかったのだ。
マリーは全く気にしていなかった。家のための政略結婚。そう割り切っていたからだ。
もちろん、結婚するからには妻としての役目は果たさなれければいけない。それは承知の上だった。
「クラスト侯爵様と結婚なんて、羨ましいわ。あんな素敵な方が旦那様なんて!」
「本当よ。マリー、分かってるの?クラスト侯爵様は伯爵令嬢達にとても人気があるお方なのよ」
「そうよ!男爵令嬢のあなたが婚約者だと聞いて、みんなあなたを目の敵にしてるって噂よ」
正式にクラスト様との婚約が決まり、お祝いをすると友人達にお茶会に招かれた時のことだった。友人の御令嬢達から口々に責められてマリーは目をパチクリさせた。
「...クラスト様って、そんなに人気なお方なの?」
「「当たり前じゃない!今更何言ってるのよ!!」」
おぉ、声が揃ったわ...
勢いに圧倒されながらも、マリーは考えた。なるほど、私と同じように侯爵様の妻になれば悠々自適な生活ができるって考える方が多いのかしら。
そんな的外れなことを考えているとはつゆ知らず、友人達は口々に嘆いた。
「あぁ、クラスト侯爵様はどうしてマリーと結婚なさるのかしら。こんな世間知らずな...」
「本当よね。この子読書にしか興味がないんだもの。マリー、あなたまず恋愛を勉強した方がいいわ」
「マリー、クラスト侯爵様に失礼のないようにね」
あなた達、私の友人よね?
政略結婚とはいえ結婚する友人に対して放つ言葉じゃないような気がするけれど...
まぁ、いいわ。昔から私のことをわかってくれている数少ない貴重な友人なのだ。
「わかったわ。しっかり妻としての役割を果たすわ」
友人達の言葉に頷き、マリーは笑顔を見せた。これからは侯爵家の妻として、振る舞いにも気をつけていかなければならないのだろう。
正直面倒だけれど、これからの生活を思うとわくわくした。
そんなマリーを他所に、友人達はふと声を潜めて話し始める。
「...ねぇ。少し心配なんだけれど、この子本当に分かってるのかしら?」
「うーん、マリーは鈍感だし、分かっていないでしょうね。でも、むしろその方がいいんじゃないかしら?気づいたらこの子逃げ出しそうだし」
「まぁ、それはそうね。結婚したらさすがにわかるわよ。クラスト侯爵様が...」
どれだけマリーを溺愛していて、男性を一切寄せ付けないためにパーティーへの参加を禁止にしていたか。男爵令嬢との婚約はやはり侯爵家にとってのメリットが少ないと判断され、マリーとの婚約が白紙になりそうになった時、どれほどクラストが抵抗したか。
マリーとの結婚を認めてもらうため、優秀な兄二人に負けないほどの公務を担い、尽くしていたか。
マリーは全く知らなかった。クラストの愛情が異常なほど彼女に向いていたことを。
年に数回会えれば良い方で、クラストが歳を重ねるごとに公務の一部を徐々に任されるようになり、なかなか会える時間がなかったのだ。
マリーは全く気にしていなかった。家のための政略結婚。そう割り切っていたからだ。
もちろん、結婚するからには妻としての役目は果たさなれければいけない。それは承知の上だった。
「クラスト侯爵様と結婚なんて、羨ましいわ。あんな素敵な方が旦那様なんて!」
「本当よ。マリー、分かってるの?クラスト侯爵様は伯爵令嬢達にとても人気があるお方なのよ」
「そうよ!男爵令嬢のあなたが婚約者だと聞いて、みんなあなたを目の敵にしてるって噂よ」
正式にクラスト様との婚約が決まり、お祝いをすると友人達にお茶会に招かれた時のことだった。友人の御令嬢達から口々に責められてマリーは目をパチクリさせた。
「...クラスト様って、そんなに人気なお方なの?」
「「当たり前じゃない!今更何言ってるのよ!!」」
おぉ、声が揃ったわ...
勢いに圧倒されながらも、マリーは考えた。なるほど、私と同じように侯爵様の妻になれば悠々自適な生活ができるって考える方が多いのかしら。
そんな的外れなことを考えているとはつゆ知らず、友人達は口々に嘆いた。
「あぁ、クラスト侯爵様はどうしてマリーと結婚なさるのかしら。こんな世間知らずな...」
「本当よね。この子読書にしか興味がないんだもの。マリー、あなたまず恋愛を勉強した方がいいわ」
「マリー、クラスト侯爵様に失礼のないようにね」
あなた達、私の友人よね?
政略結婚とはいえ結婚する友人に対して放つ言葉じゃないような気がするけれど...
まぁ、いいわ。昔から私のことをわかってくれている数少ない貴重な友人なのだ。
「わかったわ。しっかり妻としての役割を果たすわ」
友人達の言葉に頷き、マリーは笑顔を見せた。これからは侯爵家の妻として、振る舞いにも気をつけていかなければならないのだろう。
正直面倒だけれど、これからの生活を思うとわくわくした。
そんなマリーを他所に、友人達はふと声を潜めて話し始める。
「...ねぇ。少し心配なんだけれど、この子本当に分かってるのかしら?」
「うーん、マリーは鈍感だし、分かっていないでしょうね。でも、むしろその方がいいんじゃないかしら?気づいたらこの子逃げ出しそうだし」
「まぁ、それはそうね。結婚したらさすがにわかるわよ。クラスト侯爵様が...」
どれだけマリーを溺愛していて、男性を一切寄せ付けないためにパーティーへの参加を禁止にしていたか。男爵令嬢との婚約はやはり侯爵家にとってのメリットが少ないと判断され、マリーとの婚約が白紙になりそうになった時、どれほどクラストが抵抗したか。
マリーとの結婚を認めてもらうため、優秀な兄二人に負けないほどの公務を担い、尽くしていたか。
マリーは全く知らなかった。クラストの愛情が異常なほど彼女に向いていたことを。
2
お気に入りに追加
1,864
あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

天才魔術師から逃げた令嬢は婚約破棄された後捕まりました
oro
恋愛
「ねぇ、アデラ。僕は君が欲しいんだ。」
目の前にいる艶やかな黒髪の美少年は、にっこりと微笑んで私の手の甲にキスを落とした。
「私が殿下と婚約破棄をして、お前が私を捕まえることが出来たらな。」
軽い冗談が通じない少年に、どこまでも執拗に追い回されるお話。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。

束縛婚
水無瀬雨音
恋愛
幼なじみの優しい伯爵子息、ウィルフレッドと婚約している男爵令嬢ベルティーユは、結婚を控え幸せだった。ところが社交界デビューの日、ウィルフレッドをライバル視している辺境伯のオースティンに出会う。翌日ベルティーユの屋敷を訪れたオースティンは、彼女を手に入れようと画策し……。
清白妙様、砂月美乃様の「最愛アンソロ」に参加しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる