16 / 29
聖女が可愛すぎる
しおりを挟む
クリスティアは私を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。
とてつもなく可愛いんだけど。
「マルスティア様ですよね。前回お会いした時にきちんとご挨拶できなかったので。クリスティアと申します」
「初めまして、マルスティアと申します。ええと、私は…」
なんて答えたら良いんだろう。魔法が使えて怪物を倒せる力があるから協力して欲しいと言われてこれから魔法騎士たちの訓練に参加することになりました…説明するにはあまりにも情報量が多い。
迷っていると、クリスティアは目を輝かせて私を見ながら言った。
「魔法が使えるのですよね。お話は伺っています」
そっか。そういえばクリスティアは第二王子の婚約者だった。聖女である上にまもなく宮殿に身を置く存在の彼女に、私の話が知れ渡っていてもおかしくはない。
「そうなんです。今日から騎士たちの訓練にも参加することになって」
「魔法を使えるなんてすごいです」
クリスティアはキラキラした目で私を見てくる。なんて純粋な瞳なんだろう。
さすがは物語のヒロインだわ。
「聖女様だって、治癒魔法を使われるじゃないですか。その力の方がすごいですわ」
「あの…失礼でしたら申し訳ないのですが、名前で呼んでいただけませんか?」
「はい?」
「ええと…聖女様ではなく、クリスティアと」
私は驚いてクリスティアを見ると、恥ずかしそうにもじもじとしながら私を見ている。
えっ、どういうこと?
何この可愛らしい生き物は。
聞けば、この宮殿には彼女以外の令嬢がおらず、使用人からも名前ではなく聖女様と呼ばれ、皆が崇めるように接してくるので話し相手がおらず寂しかったのだと言う。
今まで修道院でコキを使われていた環境と比べれば天と地の差ではあるものの、以前とは違う環境下で急に聖女だと崇められ、話し相手がいないというのは彼女にとっては苦しくもあったらしい。
「マーク様はとても良くしてくださっているのですが、どうしてもまだこの環境に慣れることができなくて。マルスティア様が来てくださると聞いて、とても嬉しかったのです。おこがましいですが、どうかお友達になってくださいませんか…」
「喜んで!!」
クリスティアが言い終わる前に食い気味に返事をした。断る理由がない。
嬉しそうに微笑むクリスティアをみて、私はデレデレになりそうな顔を必死で引き締める。
クリスティアと話していて分かったのは、物語が変わったのはおそらくクリスティアとマークが戦地で出会ったことがきっかけのようだった。
その日はマークがクリスティアの地域に怪物の侵入状況と負傷した住民がどれだけいるのか視察に来ていた。そこで怪物と出くわし、負傷してしまう。たまたまクリスティアは病院での勤務を終えて一時的に修道院に戻る途中、負傷したマークとその一員に出会う。
クリスティアはすぐにマークの処置をしたが、その治癒魔法の凄さに驚いたマークが皇帝にそのことを報告。聖女といえばその国の第一王子と婚約するのが通常だが、クリスティアの人柄に惹かれたマークが皇帝に伝え、それが認められてマークとの婚約にいたったのだという。
元々クリスティアを見つけたのもマークであったことや、ルカが別の人物と婚約を考えていると言い出したことも要因だった。
私はクリスティアが聖女として迎え入れられるに至る経緯を知らない。あくまでも推測だが、ここから物語が変わっていたのだろう。
それにしても…
ルカが婚約を考えている人物がいるってこと?一体誰なんだろう。
この物語はどうやって終わりに向かっていったんだっけ。二人が結ばれないのだとすれば、きっと結末も変わるはず。
その頃には元の世界に戻れたら良いな。
クリスティアと話しながら、ぼんやりとそんなことを思った。
とてつもなく可愛いんだけど。
「マルスティア様ですよね。前回お会いした時にきちんとご挨拶できなかったので。クリスティアと申します」
「初めまして、マルスティアと申します。ええと、私は…」
なんて答えたら良いんだろう。魔法が使えて怪物を倒せる力があるから協力して欲しいと言われてこれから魔法騎士たちの訓練に参加することになりました…説明するにはあまりにも情報量が多い。
迷っていると、クリスティアは目を輝かせて私を見ながら言った。
「魔法が使えるのですよね。お話は伺っています」
そっか。そういえばクリスティアは第二王子の婚約者だった。聖女である上にまもなく宮殿に身を置く存在の彼女に、私の話が知れ渡っていてもおかしくはない。
「そうなんです。今日から騎士たちの訓練にも参加することになって」
「魔法を使えるなんてすごいです」
クリスティアはキラキラした目で私を見てくる。なんて純粋な瞳なんだろう。
さすがは物語のヒロインだわ。
「聖女様だって、治癒魔法を使われるじゃないですか。その力の方がすごいですわ」
「あの…失礼でしたら申し訳ないのですが、名前で呼んでいただけませんか?」
「はい?」
「ええと…聖女様ではなく、クリスティアと」
私は驚いてクリスティアを見ると、恥ずかしそうにもじもじとしながら私を見ている。
えっ、どういうこと?
何この可愛らしい生き物は。
聞けば、この宮殿には彼女以外の令嬢がおらず、使用人からも名前ではなく聖女様と呼ばれ、皆が崇めるように接してくるので話し相手がおらず寂しかったのだと言う。
今まで修道院でコキを使われていた環境と比べれば天と地の差ではあるものの、以前とは違う環境下で急に聖女だと崇められ、話し相手がいないというのは彼女にとっては苦しくもあったらしい。
「マーク様はとても良くしてくださっているのですが、どうしてもまだこの環境に慣れることができなくて。マルスティア様が来てくださると聞いて、とても嬉しかったのです。おこがましいですが、どうかお友達になってくださいませんか…」
「喜んで!!」
クリスティアが言い終わる前に食い気味に返事をした。断る理由がない。
嬉しそうに微笑むクリスティアをみて、私はデレデレになりそうな顔を必死で引き締める。
クリスティアと話していて分かったのは、物語が変わったのはおそらくクリスティアとマークが戦地で出会ったことがきっかけのようだった。
その日はマークがクリスティアの地域に怪物の侵入状況と負傷した住民がどれだけいるのか視察に来ていた。そこで怪物と出くわし、負傷してしまう。たまたまクリスティアは病院での勤務を終えて一時的に修道院に戻る途中、負傷したマークとその一員に出会う。
クリスティアはすぐにマークの処置をしたが、その治癒魔法の凄さに驚いたマークが皇帝にそのことを報告。聖女といえばその国の第一王子と婚約するのが通常だが、クリスティアの人柄に惹かれたマークが皇帝に伝え、それが認められてマークとの婚約にいたったのだという。
元々クリスティアを見つけたのもマークであったことや、ルカが別の人物と婚約を考えていると言い出したことも要因だった。
私はクリスティアが聖女として迎え入れられるに至る経緯を知らない。あくまでも推測だが、ここから物語が変わっていたのだろう。
それにしても…
ルカが婚約を考えている人物がいるってこと?一体誰なんだろう。
この物語はどうやって終わりに向かっていったんだっけ。二人が結ばれないのだとすれば、きっと結末も変わるはず。
その頃には元の世界に戻れたら良いな。
クリスティアと話しながら、ぼんやりとそんなことを思った。
244
お気に入りに追加
1,645
あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

次は幸せな結婚が出来るかな?
キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。
だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる