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聖女が可愛すぎる
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クリスティアは私を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。
とてつもなく可愛いんだけど。
「マルスティア様ですよね。前回お会いした時にきちんとご挨拶できなかったので。クリスティアと申します」
「初めまして、マルスティアと申します。ええと、私は…」
なんて答えたら良いんだろう。魔法が使えて怪物を倒せる力があるから協力して欲しいと言われてこれから魔法騎士たちの訓練に参加することになりました…説明するにはあまりにも情報量が多い。
迷っていると、クリスティアは目を輝かせて私を見ながら言った。
「魔法が使えるのですよね。お話は伺っています」
そっか。そういえばクリスティアは第二王子の婚約者だった。聖女である上にまもなく宮殿に身を置く存在の彼女に、私の話が知れ渡っていてもおかしくはない。
「そうなんです。今日から騎士たちの訓練にも参加することになって」
「魔法を使えるなんてすごいです」
クリスティアはキラキラした目で私を見てくる。なんて純粋な瞳なんだろう。
さすがは物語のヒロインだわ。
「聖女様だって、治癒魔法を使われるじゃないですか。その力の方がすごいですわ」
「あの…失礼でしたら申し訳ないのですが、名前で呼んでいただけませんか?」
「はい?」
「ええと…聖女様ではなく、クリスティアと」
私は驚いてクリスティアを見ると、恥ずかしそうにもじもじとしながら私を見ている。
えっ、どういうこと?
何この可愛らしい生き物は。
聞けば、この宮殿には彼女以外の令嬢がおらず、使用人からも名前ではなく聖女様と呼ばれ、皆が崇めるように接してくるので話し相手がおらず寂しかったのだと言う。
今まで修道院でコキを使われていた環境と比べれば天と地の差ではあるものの、以前とは違う環境下で急に聖女だと崇められ、話し相手がいないというのは彼女にとっては苦しくもあったらしい。
「マーク様はとても良くしてくださっているのですが、どうしてもまだこの環境に慣れることができなくて。マルスティア様が来てくださると聞いて、とても嬉しかったのです。おこがましいですが、どうかお友達になってくださいませんか…」
「喜んで!!」
クリスティアが言い終わる前に食い気味に返事をした。断る理由がない。
嬉しそうに微笑むクリスティアをみて、私はデレデレになりそうな顔を必死で引き締める。
クリスティアと話していて分かったのは、物語が変わったのはおそらくクリスティアとマークが戦地で出会ったことがきっかけのようだった。
その日はマークがクリスティアの地域に怪物の侵入状況と負傷した住民がどれだけいるのか視察に来ていた。そこで怪物と出くわし、負傷してしまう。たまたまクリスティアは病院での勤務を終えて一時的に修道院に戻る途中、負傷したマークとその一員に出会う。
クリスティアはすぐにマークの処置をしたが、その治癒魔法の凄さに驚いたマークが皇帝にそのことを報告。聖女といえばその国の第一王子と婚約するのが通常だが、クリスティアの人柄に惹かれたマークが皇帝に伝え、それが認められてマークとの婚約にいたったのだという。
元々クリスティアを見つけたのもマークであったことや、ルカが別の人物と婚約を考えていると言い出したことも要因だった。
私はクリスティアが聖女として迎え入れられるに至る経緯を知らない。あくまでも推測だが、ここから物語が変わっていたのだろう。
それにしても…
ルカが婚約を考えている人物がいるってこと?一体誰なんだろう。
この物語はどうやって終わりに向かっていったんだっけ。二人が結ばれないのだとすれば、きっと結末も変わるはず。
その頃には元の世界に戻れたら良いな。
クリスティアと話しながら、ぼんやりとそんなことを思った。
とてつもなく可愛いんだけど。
「マルスティア様ですよね。前回お会いした時にきちんとご挨拶できなかったので。クリスティアと申します」
「初めまして、マルスティアと申します。ええと、私は…」
なんて答えたら良いんだろう。魔法が使えて怪物を倒せる力があるから協力して欲しいと言われてこれから魔法騎士たちの訓練に参加することになりました…説明するにはあまりにも情報量が多い。
迷っていると、クリスティアは目を輝かせて私を見ながら言った。
「魔法が使えるのですよね。お話は伺っています」
そっか。そういえばクリスティアは第二王子の婚約者だった。聖女である上にまもなく宮殿に身を置く存在の彼女に、私の話が知れ渡っていてもおかしくはない。
「そうなんです。今日から騎士たちの訓練にも参加することになって」
「魔法を使えるなんてすごいです」
クリスティアはキラキラした目で私を見てくる。なんて純粋な瞳なんだろう。
さすがは物語のヒロインだわ。
「聖女様だって、治癒魔法を使われるじゃないですか。その力の方がすごいですわ」
「あの…失礼でしたら申し訳ないのですが、名前で呼んでいただけませんか?」
「はい?」
「ええと…聖女様ではなく、クリスティアと」
私は驚いてクリスティアを見ると、恥ずかしそうにもじもじとしながら私を見ている。
えっ、どういうこと?
何この可愛らしい生き物は。
聞けば、この宮殿には彼女以外の令嬢がおらず、使用人からも名前ではなく聖女様と呼ばれ、皆が崇めるように接してくるので話し相手がおらず寂しかったのだと言う。
今まで修道院でコキを使われていた環境と比べれば天と地の差ではあるものの、以前とは違う環境下で急に聖女だと崇められ、話し相手がいないというのは彼女にとっては苦しくもあったらしい。
「マーク様はとても良くしてくださっているのですが、どうしてもまだこの環境に慣れることができなくて。マルスティア様が来てくださると聞いて、とても嬉しかったのです。おこがましいですが、どうかお友達になってくださいませんか…」
「喜んで!!」
クリスティアが言い終わる前に食い気味に返事をした。断る理由がない。
嬉しそうに微笑むクリスティアをみて、私はデレデレになりそうな顔を必死で引き締める。
クリスティアと話していて分かったのは、物語が変わったのはおそらくクリスティアとマークが戦地で出会ったことがきっかけのようだった。
その日はマークがクリスティアの地域に怪物の侵入状況と負傷した住民がどれだけいるのか視察に来ていた。そこで怪物と出くわし、負傷してしまう。たまたまクリスティアは病院での勤務を終えて一時的に修道院に戻る途中、負傷したマークとその一員に出会う。
クリスティアはすぐにマークの処置をしたが、その治癒魔法の凄さに驚いたマークが皇帝にそのことを報告。聖女といえばその国の第一王子と婚約するのが通常だが、クリスティアの人柄に惹かれたマークが皇帝に伝え、それが認められてマークとの婚約にいたったのだという。
元々クリスティアを見つけたのもマークであったことや、ルカが別の人物と婚約を考えていると言い出したことも要因だった。
私はクリスティアが聖女として迎え入れられるに至る経緯を知らない。あくまでも推測だが、ここから物語が変わっていたのだろう。
それにしても…
ルカが婚約を考えている人物がいるってこと?一体誰なんだろう。
この物語はどうやって終わりに向かっていったんだっけ。二人が結ばれないのだとすれば、きっと結末も変わるはず。
その頃には元の世界に戻れたら良いな。
クリスティアと話しながら、ぼんやりとそんなことを思った。
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