【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル

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魔力判定

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それから数日が経ち、騎士の訓練に入る前に確認したいことがあると、私はオレフィスに別室へと連れて行かれた。

そこには見たことがない装置のようなものがあり、その上には手のひらサイズの透明な球体が置いてある。

「マルスティア様は初めてご覧になりますよね。これは魔力を測る装置なんです。特に危ないものではないのでご安心ください」

オレフィスは優しく私に微笑むと、続けて言った。

「この球体に手をかざしていただいて、魔力を球体に押し込むような感覚でぐっと手に力を入れてください」

私は言われた通りに手をかざし、手に力を入れた。魔力を押し込むようにって、怪物を倒す時と同じ要領でいいのかな。

えいっ。

私はふっと魔力を手から放った。
その瞬間、ポワッと球体が光ったかと思うと、紫に色が変化した。

わぁ、すごい。
色で魔力がわかるのね。

「これで終わり?オレフィス」

「……」

「オレフィス?」

私は目の前であんぐりと口を開けたままのオレフィスに声をかける。

何?
もしかして私壊した?

オレフィスの反応に戸惑いながら、私はおーいと顔の前で手を振った。
ハッとしたようにオレフィスは私を見ると、ようやく口を開いた。

「あの…マルスティア様」

「ごめんなさい、私何かやってしまったかしら?」

「いえ、そうではなく、ですね」

いつになく歯切れが悪い。
オレフィスはフルフルと首を横に振ると、しばらくここで待っていて欲しいと私を残して部屋を出て行ってしまった。

どうかしたのかな?


***

オレフィスは混乱していた。
マルスティアがただの伯爵令嬢ではないことや、怪物を一人で倒してしまうだけの能力を持っていることは今までの出来事でわかっていた。

だが、これは違う。
あの方はただの魔法が使える強い伯爵令嬢ではない。

信じられなかった。通常の魔力を持つものであれば、良くても青色。
オレフィスですら、うっすらとした紫色しか出せなかった。

それなのに、マルスティアは濃い紫色を出したのだ。あの色を見たのは、ルカ皇太子の時以来だ。

あの方に、普通の魔法の訓練だけでは足りない。むしろ訓練など意味をなさないだろう。

これは、一体どうしたものか…

***

一人取り残された部屋で、私はぼんやりと空を見つめていた。

この国に転生してから十数年の時が経った。元いた世界の私は、一体どうなっているのだろう。

そういえば、映画を観る途中でトイレに行ってそこからだったわよね。お腹が痛くなって、それで…

私は転生する前から食に関して貪欲だったわね。思い出に浸るものの、自分の食への執着に呆れてしまう。

トイレに行っていなければ、この世界に来ることはなかったんだろうか。なんか、転生する直前の理由がお腹が痛くなってって…もう少しましな理由だったらよかったのに。

そんなことを考えていると、ドアが開いた。

「オレフィス、どうだった…え?」

目の前に現れたのは、クリスティアだった。
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