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伯爵令嬢の娘 side ルカ

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第一王子として生まれ、魔力を持って生まれた私は、どんな場面でも常に冷静でいられるよう、精神的にも肉体的にも厳しく育てられた。
怪物と共存していくためには、並大抵の努力ではこの国をまとめ上げることはできない。私は剣の練習に加えて魔法についても学ぶ必要があった。

父上は魔力を持つ者たちを騎士として迎え入れ、怪物との戦いに備えて騎士の軍を配置した。とはいえこの国の外には結界が張られており、怪物が容易に侵入出来ないようになっている。

それは遥か昔の魔族が怪物から身を守るために結界を張ったとされており、結界がある限り国は守られていた。しかし、その結界を求めて他国から攻められることもあったため、油断はできなかった。

国の状況が一変したのは、私が10代になってすぐの頃。結界が破られ、怪物が侵入してきたのだ。

この非常事態に、人々は大混乱に陥った。
多くの負傷者が出て、病院にはひっきりなしに人がやってくる。

治療にあたる人も限界がきていると憔悴しきった医師たちが、何とかしてくれと懇願することもあった。

この状況をどうにかしようと頭を悩ませる父上に、私はとある人物に、わずかな希望を抱いていた。

それは、とある伯爵令嬢のパーティーでの事だった。わずかに怪物の気配を感じ取った私は、父上に許可をとり数名の騎士たちと見回りをしていた。

その頃は、結界が破られたかどうかの調査をする段階であり、国民を混乱させないために常に怪物がいないかを騎士たちと見回りをしていた。

人々の悲鳴を聞きつけた私は、他の騎士たちよりも早くその現場へと駆けつけた。

そこで、私は目を疑う光景に出くわす事になる。

とてつもなく巨大な怪物の目の前には、私よりも幼いであろう少女の姿。綺麗に着飾った姿を見るに、どこかの御令嬢なのだろう。恐怖からなのか、オロオロと落ち着きがない。

あのままでは怪物にやられてしまう!
焦った私は、逃げ惑う人々を押し除け、彼女の元へと走った。

どうか間に合ってくれ…!!

腰に刺していた剣を抜き、彼女を守る体制に…なった、その時だった。

シュバっ

それは、一瞬の出来事だった。
気がつくと、怪物は白目を剥きドスーーンッとその場に倒れ込んだ。

何が起きたんだ..?

目の前の少女は、あれ?と不思議そうな表情をしたかと思うと辺りをキョロキョロと見渡し、焦ったようにその場から走り去った。

今のは何だったんだ?

怪物のそばに近づくと、既に生き絶えた後だった。しかも傷のような外傷は一つもない。

「ルカ様!!一人で行かれては困りますっ!!…何ですか、これは」

怪物の前で呆然と立ち尽くす私に、ようやく追いついた護衛騎士たちが驚いたように怪物を見た。

外傷はない。ということは、これは魔法だ。魔法でこの怪物は倒されたのだ。

…彼女が倒したのか?
あんなに幼い彼女が?

これが、最初の出会いだった。


それからというもの、亀裂から怪物が侵入してきては国民を襲う日々が続いた。

父上は何とかしてこの国を守ろうと数々の対策を打ち出したが、怪物の威力は凄まじく、頭を抱える日々が続くこととなった。


そんな時だった。
再び彼女が現れたのだ。

それは、怪物がよく出没すると言われる場所で待機していた時のことだった。

ふと強い魔力を感じた私は、木の影から様子をうかがっていた。この魔力は怪物ではない。騎士たちは別の場所で待機しているため騎士でもない。

一体誰だ?

そんな時、怪物が現れた。
騎士たちが一斉に戦闘体制に入ったその時、再び強い魔力を感じたかと思うと、一瞬にして怪物が倒れ込んだのだ。

騎士たちが怪物の方へ意識を向けているあいだ、私は魔力を感じた方へと視線を移した。すると、一瞬だけだが彼女らしき姿が見えた。

姿が見えたと思った途端に、サッと消えていく。

まさか…移動魔法か!?

移動魔法。存在は知っていたが、ごく一部の者しか使用できない魔法であり、それはこの結界を張った魔族たちが使用していたとされるものだった。

信じられない。
またも、彼女なのか。

その日以降、私は彼女について調べる事にした。最初は見間違えだと思っていた。あんな少女が怪物を倒せるはずがないと思っていたからだ。

しかし、怪物を倒す瞬間を二度も目の当たりにしたのだ。調べない理由がなかった。

結界が破られた今、この国には彼女の力が必要だ。情けないが私の魔力だけではこの国全体を守ることはできない。

何とかして、彼女を迎え入れなければ。
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