地味な私と公爵様

ベル

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王子様の護衛 side ラエル

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ローズをかかえて馬車に乗り込んだ時、誰かに見られていたのは分かっていた。ただ、ローズを離したくない一身で行動に移してしまった。爪が甘かった自分を殴ってやりたい。


そして、これはどう釈明しようともう手遅れだ。


ローズを送り届けた後、私はカイに明日以降ローズを守るようにと指示を出した。


明日は厄介なことに公務の一旦を引き受けている。重要な任務のため、別日に回す事はできない。


ローズの側にいられないことがとても歯痒くもあったが、カイが側にいれば安心だ。


厳重の注意を払っていても、確実に安全な事はない。あの中庭での出来事は少なからず明日以降令嬢達の噂のタネとなるだろう。そして、嫉妬の矛先が私ではなくローズに向かう事は明らかだ。


「ラエル公爵様、おそらく目撃したのは....シルキー伯爵令嬢かと思われます。他にも数名おりましたが、彼女が一番取り乱していたようです」


少し躊躇しながらカイが言う。


「シルキー伯爵令嬢か...」


これほどまでに過去の自分を呪った事はない。


私が自分勝手に遊んでいた時に相手をしていた令嬢の1人だ。


彼女の執着は凄まじく、かつての私ですら近づくのも面倒だと思うようになり、途中から相手をしなくなった。


よりによって彼女が見ていたとは...


ローズが危険な目に遭わぬよう、そして辛い思いをしないよう今まで注意してきたと言うのに、なんて事をしてしまったのだろうか。


「...私がおりながら、大変申し訳ありません」


「いや、お前は悪くない。私とローズのためにしてくれたことだ。それに、彼女をかかえて馬車に乗ったのは私だ」


ふう、と息を吐く。
なんとしてもローズを守らなければ。


「何があろうとローズお嬢様をお守りします。マリアもそばを離れないよう伝えておきますので」


「あぁ、頼む」


カイにマリア令嬢もいればひとまずは安心だ。問題は、これから回るであろう噂だ。


ローズが辛い思いをしなければ良いが...


まもなく学園を卒業し、ローズとようやく夫婦となれる日が近いのだ。誰にも邪魔をされたくはない。


彼女は必ず守る。何があっても。


先程までの彼女の熱を思い出し、そっと息を吐くのだった。
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