地味な私と公爵様

ベル

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理性を必死で保つ王子様 sideラエル

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ローズと共に馬車に乗り込んだ瞬間から、私は必死で理性を保っていた。


なんとか堪えなければと、馬車の中では彼女の手にキスをすることで落ち着かせた。


喜びを噛み締めながらも、私の中で渦巻く葛藤と戦う。


このまま部屋へと連れ帰ってしまえばどうなるかは火を見るよりも明らかだ。


離れた方がいいのは分かっていたが、ようやく彼女の口から好きだという言葉を聞けたのだ。このまま返せるわけがない。


頭の中で父上との会話を思い出す。私とローズの婚約について聞かされた直後のことだ。


「ラエル。お前も分かっているとは思うが、結婚前に相手と行為を行うことは公爵家ではご法度だ。わかっておるな?」


「はい、重々承知しております」


「ふむ。それなら良い。ニコラド伯爵の娘はたいそう可愛らしいからな。お前の理性が保たれることを願うとしよう」


この時は、こんなにも彼女を愛してしまうなんて思ってもいなかった。


適当に婚約して愛のない結婚生活を送るのだ。そんな気も起きない相手に理性も何もないだろう、と。


...俺はつくづくバカだった。


目の前にこんなにも可愛らしい彼女がいるのに手を出せないなんて、なんという拷問だろう。


「二人きりにしてくれ。夕食は一緒に食べるから、用意を頼む」


「かしこまりました」


使用人にそう伝えると、私はローズの手を引いて部屋へと移動した。


使用人たちも私がいつもと違う様子であることを察したのだろう。早々にその場を離れていった。


「ラエル様...?」


馬車から降りてずっと無言だったからだろうか。ローズが少しだけ不安そうに私の名を呼んだ。


ただ、今の私にとってはそれすらも煽っているようにしか聞こえない。


....理性よ、耐えてくれ。


心の中で祈りながら、私はローズと共に部屋へと入った。


ローズと部屋に二人きり。そう思うと、先程までの理性が崩れてゆくのがわかる。


私はローズをぎゅっと抱きしめた。彼女は私のことを好きだと言ってくれた。もう、遠慮することも、嫌われているのではと恐れることもない。


ローズが腰に腕を回した瞬間、私の中の何かが弾けた。


.......これは、やばい。


腰に手を回して欲しいと伝えたのは私だが、ここまで煽られるとは思わなかった。


細い腕が恐る恐る回り、それだけでなくきゅっと力を入れたのだ。


ふぅ、と息を吐きながらなんとか堪える。


何かを感じ取ったのか、ローズもいつもより一層緊張した様子だ。


...怖がらせてはいないだろうか。


彼女の顔を見ようと頬を撫でながら覗き込むと、火照って赤くなった頬をした彼女が私の目に映る。


これは、反則だ。


怖がらせないようにと、そっと啄むようにキスをする。


...足りない。


私は彼女を抱き抱えると、側のソファへと下ろした。


このままベッドへと移動してしまえば、これだけで済まないことは分かっている。


私は彼女の様子を見ながらなんとか理性を総動員させる。


堪えようとするたびに息が上がる。いつまで持ってくれるだろうか。


キスを深くすると驚いたようにローズが私を離そうと可愛い手で押し返してきた。けれど、それすらも私を煽るのには十分だった。


後頭部と腰に手を回し、夢中でキスをした。


どうにか堪えなければ。
....どうにか。


そう思えば思うほどにキスは長くなり、お互いに息が上がるほどだった。


はっと気がつくとローズの首周りには私がつけたマークが散らばっている。


...やりすぎた。
これは尋常じゃないほどの数だ。


ローズはまだ気づいていないのが救いだった。


「大丈夫かい、ローズ?」


「はい...なん、とか..」


はぁ、と息を上げながら潤んだ瞳で私を見つめる。ぐらぐらと揺れる気持ちを必死で抑えつつ、私はそっと腕を回して彼女を優しく抱きしめた。


「...ローズ、明日は髪の毛を下ろして登校した方がいい」


「何故、ですか...?」


「いいから。髪を下ろしてきてくれるかい?」


「はい、わかりました」


不思議そうに首を傾げながらも、ふわりと
笑顔で彼女が答える。


愛する人と心が通じ合うことがこんなにも幸せな気分になるなんて、昔の私からしたら考えられないことだ。


...幸せだ。


私はローズをきゅっと抱きしめながら、これこらもこのような甘い生活が続くのかと思うとたまらなく幸せだった。
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