地味な私と公爵様

ベル

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お姫様との対面 sideラエル

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「カイ」


「はい、何でしょう」


「お前...その頬はどうした?」


「....可愛い猫に引っ掻かれまして」


どう見ても引っ叩かれたとしか思えないほど頬を真っ赤にし、それでも澄まし顔で私の横に立つカイにやや不信感を持ちながらも、私は軽く朝食を済ませた。


馬車で彼女を迎えに行ったあの日から数日が経った。


私はローズと向き合うのが怖くなり、彼女を意識的に避けるようになった。


それでも、会いたくなってしまう。今頃何をしているだろうか、私のことを考えてくれていないだろうかなど女々しいことを考えながら、公務なんか手につかなかった。


...会いたい。


抑えきれず彼女と会う約束を取り付け、一緒に食事をとる日もあったが、馬車でのことは一切口にはしなかった。


彼女は私に何か言いたげだったが、別れ話だったらどうしようと怖くなり、聞くことはせず、彼女の前では得意の笑顔を振りまいた。


そんなある日のことだった。


「ラエル公爵様、今日は天気もいいですし、中庭に行きませんか?」


急にカイが横から現れてそう言ったかと思うと、私の手をぐいっと強引に引いた。


「おいっ、なんだっ...?」


にやりと不気味に笑うカイを不審に思いながらも、私は中庭へと強引に連れて行かれた。


「ちょっと、忘れ物をしたみたいです。こちらで待っていてください」


「おい、カイ」


「すぐ戻りますから!」


そう言って、カイはそそくさとその場を後にした。


一体なんなんだ。


明らかに様子がおかしい。何を企んでいるんだ?


カイの態度に若干苛立ちながらも、私はふぅ、と静かに息を吐いた。


ここにくるのは久しぶりだ。毎回どこの誰だか知らない令嬢が集まってきてゆっくりできた試しがなかったからだ。


ローズは今頃何をしているだろうか。


最近、時間があればローズのことばかり考えてしまう。考えれば考えるほど、別れを切り出されるのではないかと怖くなるのだ。


...私は、どうすればいいんだ。





「ら、ラエル様!」


...はっ。
幻聴まで聞こえるとは。


今日は公務があると彼女へ伝えているから、私がここにいるとは思わないはず。しかも中庭に今まで来たことがないのだ。


こんなところにいるはずがない。
...とうとうここまで落ちてしまったか。


「....っ、ラエル様!」


「え....」


幻聴じゃ、ない?


目の前で涙を浮かべながら私の名前を呼ぶローズを見て、私は呆然とする。


なぜ、ここに?


きっと、私は今ひどい顔をしているだろう。



「ローズ、なぜここに...」


「...きです」


「ローズ?」


「ラエル様、あなたが好きです」


顔を真っ赤にし、涙が彼女の目からこぼれ落ちる。


「好きです」


彼女の言葉は、私の奥深くに突き刺ささった。


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