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第28話 ホームレス、優秀なチームを作り上げる

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「ということで、突然だがリーニャ大尉とアリーナ大尉が俺たちのチームに加わることになったからよろしくな」

 俺がそういうとクリスタ大尉はとても驚いていた。ちなみに、アリーナ大尉というのは、リーニャ大尉のチームメイトだった女性士官だな。

 要は、俺とクリスタ大尉のチームが、リーニャ大尉のチームを吸収した形になった。
 俺が司令官。
 クリスタ大尉が兵站担当。
 リーニャ大尉が情報担当。
 アリーナ大尉が工兵担当。

 こんな感じで役割分担した。

 聞いた感じ、プロイセン式の参謀本部みたいな考え方は成立していないみたい。
 近世から近代初期くらいの文明レベルだから、指揮官の能力に依存した指揮系統のようだ。

「でも、クニカズ大尉? ずいぶん珍しいですよね。こんなにきっちりと役割分担するのは……」
 リーニャ大尉が不思議そうにそう話した。
 こういう感じで役割分担するのは珍しいらしいな。仮に、この世界がウェストファリア条約が成立する前後のヨーロッパとリンクしていると考えれば、プロイセン式の参謀本部は歴史より200年ほど先にあるオーパーツだ。

「ああ、クリスタ大尉にも聞いたけど、士官学校の机上演習とかは、各々が別々の師団とかを率いていたんだろ? そうなると、補佐役に適性がある人間でも、リーダーにならなくてはいけなくなるから、効率が悪くなるんだよ。だから、各々が適性がある部門を担当し、専門家としてリーダーを補佐するのが効率的なんだ」

 俺の説明を聞いて、3人は目を見開いた。

「たしかに、僕は指揮官の才能がなかったから、士官学校の演習では勝率は散々だったな。でも、昨日は自分が一番得意な分野で戦うことができたら充実感があった!」

「私もどちらかといえば、デスクワークの方が得意だし……昨日の演習で自分の指揮には限界があるとわかりましたから、この方式のほうがいいですよね」

「私も、ど・どちらかと言えば調整のほうが得意ですぅ」
 アリーナ大尉はちょっと自信なさげだった。でも、ちょっと勝気すぎるリーニャ大尉と長年相棒になっていたくらいだから、コミュニケーションは得意なんだろうな。

「それでさ、さっき教官から言われたんだけど……」
 俺はさっき言われた衝撃的なことをメンバーにも話す。

「今度さ、大佐クラスの人たちと机上演習することになちゃった……」

「「「えええええーーーー」」」

――――
用語解説

プロイセン式の参謀本部

19世紀のプロイセン(ドイツ)で誕生した形式及び考え方。
これが誕生するまでは指揮官ひとりだけに重大な責任を背負わせるのが当たり前だったが、複雑化していく戦争では限界が生じたため、参謀(=専門家)たちの助言をもとに指揮官が意思決定をしていくスタイルに変わるきっかけになった。
最初は実戦部隊と補給部隊の分業からはじまり、徐々に理論化されていった。
ナポレオン戦争において大敗したプロイセンが、軍の近代化を推し進める過程で体系化された。
この考え方が普及し、近代化されたプロイセンは、オーストリア・フランスというヨーロッパの列強国を次々と撃破し、ドイツ統一を成し遂げる原動力になった。
誕生から200年近くたった現在でも、この形式が軍隊の基本的なものになっている。
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