上 下
6 / 76

第6話 ホームレス、王国最強の兵士に圧勝する

しおりを挟む
「まさか、いったいどこから壁が……やはり、異世界から来た怪物というわけか。この速さで魔力を発動させるとは……ならば、これならどうだァ」
 アルフレッドは、さらに攻撃をかけてくる。
 何度もフェイントをかけて、俺の魔力の影響範囲の外から技を繰り出そうとするものの俺の願望をストレートに反映するダンボールの妖精は、相手の攻撃を簡単に防いでいく。

『先輩! こんなにすごい攻撃ばかりだとさすがに新しくダンボールを作るのが大変なんで、周囲に浮かべておきますね。いまから、このダンボールたちはあなたの思うままに動きますから好きにやっちゃってください!』

 いままで作り出されたダンボールがその言葉に反応するように宙を舞った。

「ばかな……この数の物体を同時に動かすだと!? なんという魔力キャパシティだ。ええい、やはり異世界の英雄は化け物かァ」

 意思を持ったダンボールは、アルフレッドの動きを完全に制限した。攻撃態勢に移る前にダンボールが相手に突撃しバランスを崩させる。魔力による強化も発動しているんだろうな。ペラペラのはずのダンボールが木刀と互角以上の強度になっている。

 そして、いくつものダンボールによる波状攻撃の後、ついにその瞬間は訪れた。さすがのアルフレッドも、ダンボールによる連鎖攻撃をかわしきれずにバランスを崩し、俺の意思で突撃させたダンボールの第2波が木刀を叩き折った。

 折れた刀の半分が、クルクルと宙を舞い地面に突き刺さる。
 
 審判が慌てて、俺たちの間に入った。

「そこまで。勝者・クニカズ!!」

「わあああ」という歓声とともに、拍手がまき起きる。模擬戦を見ていた兵士たちもあわてて、アルフレッドに近寄った。

「まさか、伝説の無詠唱魔力に、数十を超える物体操作だと!? クニカズの魔力キャパシティはどうなっているんじゃ……」

「それも、この武器だが、触ってみればよく分かる。まるで、厚めの紙のようなものだ……これが木刀を叩き折るくらいの強度に変化していた。物体操作と同時に、硬度上昇魔力も使っているんだ」

「王国最強の剣士が、敵に一回も触れることができずに、敗北しただとぉ」

 俺はその様子をぼう然と見ていた。

『やりましたね、先輩!! さすがは私の見込んだホームレスです。天性のダンボールさばき。まさに、ファンタジスタの系譜!』
 いや、人をサッカー選手みたいに呼ばないで? それ、褒めているんだかけなされているんだかよくわかんない。

『やっぱり、30まで○○の人は魔法使いになれるってのは本当だったんですね! 初戦闘で世界最高の魔力センスですよ!!』
 絶対にからかっているんだろ。そうなんだろ!

 俺が妖精と脳内で会話していると、敗者のアルフレッドが近づいてきた。

「クニカズ様! さすがは、異界の英雄ですね。お見それいたしました。完敗です。20年ほど生きてきましたが、これほどの完敗は生まれて初めてです。やはり、あなたは本物だ。わが父がご無礼をいたしましたこと、一族を代表して謝罪させていただきます」

 いや、むしろなんかごめん。

「いや、しかしすごい武器でしたな。気がついたらふわりと出現してまるで生きているかのように動くのですから。これはきっとなにか名のある魔力道具なのでしょうなァ。なんというのですか?」

「えっと、ダンボールっていうんだ。俺たちの世界では子供の時からよく使っていてさ」
 ソリにしたり、文化祭のお化け屋敷を作るのに使ったりするもんな。

「なんと!? これ程のアイテムを子供の時からですか!? なるほど、クニカズ様が住んでいる世界は、幼少期からそのようなエリート教育をしているのですね。おそろしい」

「いや、これは戦闘というか本来、物を作ったり運んだりするときに使うもので……」
 俺は布団代わりに使っていたけどさ。

「ということは、非戦闘用のアイテムということですか!? まさか、それであのような戦闘力を発揮するとは……まだ、本気を出されていないのですね。これはますます本物の救世主だ」
 や・ば・い。
 完全に勘違いされている。

 アルフレッドの中での日本は完全に世紀末世界になっている。でも、誤解を解くと、不利になるかもしれないから笑ってごまかそう。尊敬されるなんて向こうじゃ滅多になかったしなァ。

 だが、まだ当の宰相は納得していなかったようだ。
 息子が敗れたことに憤慨している。

「まだだ、これはまだ一つ目の試練にすぎません。次の試験が残っておりますぞぉ!!!」

―――
登場人物紹介

ヤマダクニカズ(転生後)
前世では、ニート&ホームレスだったが、転生後はダンボールの妖精の加護を受けて強大な魔力と戦闘力を手に入れた。
知略:73
戦闘:130(妖精補正)
魔力:130(妖精補正)
政治:68

スキル:妖精の加護・腹黒政治家・創造者・無詠唱魔力
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...