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一章 ゲームスタート

第3話 RPG定番の金稼ぎをやってみる

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 異世界の僕(以降、面倒くさいのでシオンと呼ぶ)は、このゲームに出てくる最弱モンスターと同じくらい雑魚だった。
 HP(体力)とMP(魔力量)は一応初期主人公と同じだけど、それ以外は大きく下回っている。これだと、最弱モンスターと殴り合ったらギリギリ勝てるか勝てないかというライン。
 これでは一回戦闘をするために、街に戻り休憩しに戻らなければならない。
 手持ちの金で武器と防具をそれなりのものに

「……宿代を残して今使える手持ちはいくら?」
『あぁ?なもんねぇよ。手持ちゼロ。この草むしりでようやく安宿の半額集まったところだ』
「……おぅ、流石に生活ぎりぎり過ぎるよ。シオン」

 想像以上に限界ギリギリの生活を送っているシオンに僕は同情した。
 
 先ずはこの貧乏生活をどうにかしないと不味いね。

 僕はゲームの知識を引っ張り出し、金を集める方法を考える。が、あまりいい案は思い浮かばず定番の作戦をとることにした。

「……とりあえずこれかなぁ~。シオン、今からお金を集めに行くよ」
『分かった。だが、頼むからあんま酷使しないでくれよ。筋肉痛でヤベェから』
「…大丈夫、大丈夫。酷使はしないよ。まぁ、その代わり色々頑張ってもらうことになるけど」

 そう言って、僕はスタミナが回復したシオンを走らせるのだった。



 シオン視点

『……そこ右に曲がるよ』
「ゲ、ここに入るのかよ?止めとかね」

 半年にも及ぶ長い期間頼み込んだことで、ようやく異世界の俺(以降、紫音呼び)に協力してもらえるようになって一刻と少し。
 身体を紫音しおんに動かしてもらったことで、今までの自分では考えられない早さで草むしりを終わらすことができた。

 しかし、その代償に全身が筋肉痛でヤバイ。

 俺の先天系スキル『ゲームリンク』は、異世界にいるもう一人の自分にゲームという物を介して操作してもらうことで、ステータス最大限の動きを出来る様になる他、異世界の自分との会話が可能になり、後天系スキルを人よりも早く得られるようになるが、代償として操作されていない間に行動をしても何の成長も出来ないというもの。
 
 長ったらしく説明したが、俺が言いたいのは紫音に操作されている間は常に全力で動いていたから、全身が悲鳴を上げてヤバイってこと。
 
 今すぐ宿に戻って寝たいが、残念なことに宿代がまだ溜まっていないからそれは無理。
 『……宿代と武器と防具代を一気に稼ぐ』という紫音の言葉を信じ、痛みを我慢しながら歩いてやってきたのは路地裏。
 ゴミが捨てられており、その匂いが染み付いた物乞いがいる路地裏は悪臭が酷くて基本誰も寄り付かない。
 こんな場所で金を稼げるとは到底思えない俺は顔を顰めながら、考えを改めるよう忠告する。

『……いや、行く。大抵こういうところにあるんだ、お金を稼ぐためなんだから我慢して』
「マジっすか」

 が、俺の忠告は聞き入れてもらえず、結局路地裏に足を踏み入れることになった。
 
「おえっ!」

  路地裏に入ると、予想通り想像を絶する悪臭が襲ってきた。
 紫音に操作されている今俺は自由に動けないはずなのだが、この時はだけは何故か片手で鼻を覆うことが出来た。

「むりむりむり、もどる。くさすぎてしぬ!」
『…はいはい。頑張って~。多分そのうち慣れるよ』
「なれるか!」

 俺の訴えを無視し、紫音は俺の身体を操作して奥へと進んでいく。

「お恵みを~」

 すると、道端で倒れ伏していた老婆の物乞いに足を掴まれ懇願された。

『…イベント?』

 紫音が小さな声でそう呟くと、俺の体が動き先程受け取った報酬である5Gを差し出していた。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 老婆はそれを受け取ると、その場で涙を流して感謝の言葉を紡いだ。
 
『……ッチ、何もないパターンか。完全な無駄金だったね』
「はぁ!?ふざけんなよ!俺の苦労が水の泡じゃねぇか」

 紫音は俺の頼みを無視して、勉強をしていたから俺より頭がいい。だから、何か俺の考えつかない意図があると思って黙っていたのだが、失敗に終わり俺は紫音にキレた。

『……ゴメン。でも、まぁこれからそれ以上に稼げる予定だから。許して』

 紫音の方は失敗すると思っていなかったのか、申し訳なさそうな声で謝る。
 その後、すぐに身体を動かし始めたから本当に反省しているのかと俺は再び怒鳴ろうかと思った。が、急に怒り出した俺を老婆がびっくりした様子でこちらを見ているのに気付き、それ以上は何も言わなかった。
 
 数秒後。
 俺の足が止まった。また物乞いによるものではない。紫音が止めたのだ。
 目の前には、大きな樽。

 こんなものの前で止まって何をするつもりだ?

 俺は紫音の意図が分からず内心で首を傾げていると、次の瞬間俺の体が動いた。

 バゴンッ!

 樽に向かって全力の蹴りを放ち、樽を破壊したのだ。
 
「えっ、どうしたんだよ急に。苛ついて物に当たったのか?いや、でも、さっきのは流石にお前が悪いだろ」
『……違うよ。樽の中身を見て』

 突然の行動に困惑する俺に、紫音は冷静に樽の中身を見るよう促す。
 俺は言われるがままに、視線を樽の中へ移すとそこには綺麗な銅の剣が顔を覗かせていた。

「……どういうことだよ?」

 


 

 

 
 
 

 



 


 
 
 

 
 
 
 


 

 

 
 
 
 
 
 
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