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#2.Future of the bright 2 ~フューチャー・オブ・ザ・ブライト 2~
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舞い上がる激しい土煙が晴れると、桜色の長髪を逆立てる北欧風の美少女は動かなくなった怪物から何かを引き抜くと、その怪物から軽やかに跳躍して地面に降りた。
そしてその少女は日本語で少年に怒鳴りつけてながら歩み寄ってくる。
「そこのアンタ!聞こえなかった!?もう一度聞くけど…ここがどんなに危険な場所かわかってないの!!?」
「……日本語」
「はあ?ちょっと頭、大丈夫?」
少女は怒りながらも少し心配そうな表情で目の前のボロボロの制服を着た少年を見る。
「あ、あぁ…ごめん。気にしないでくれ。それよりも助けてくれてありがとう」
「そんなの仕事だから別にいいわよ。それよりもアンタ、なんでこんな危険な場所にいるわけ?」
「いや、気がついたらここにいたんだよ。俺もなにがなんだかわかってないんだ。それになんだよ…あの怪物…」
少年は少女の後ろで動かなくなった巨顔の怪物を見ると、少女も振り返りその怪物を見た。
「アンタ偽天使を知らないの!?どんだけボンボンなのよ」
「ギテンシ?何だよそれ…あんなの今までいなかっただろ…どうなってんだよ」
少女は若干驚愕と呆れを混在させながらそう言うと、どこか軽蔑するかのように少年を見た。
「ハァ…まぁいいわ。とりあえずここは危険だから、安全な場所に移動するわよ」
少女は深いため息を吐きながらどこかへ歩き始めた。
*
数歩先を歩く桜色の長髪の少女はどう言うわけか、さっきまでとは違い言葉数が減りどこかよそよそしさを感じさせた。もちろんさっき会った時に初めて会ったわけだから友達のように接するのは難しいだろうが、それでも今よりも距離感は近かった気がする。
この謎な気まずさを打開しようと、意を決して少年は話しかけた。
「なぁ、いつからここはこんなになったんだ?」
少年は至極普通の事を聞いたつもりだったかが、どう言うわけか少女は答えるつもりがないのか口を開いてくれなかった。
それどころか少し歩くスピードが上がった気さえした。
「あのギテンシって奴は他にもいるのか?」
そう口にすると目の前の少女はピタリと歩くのやめると、こちらを振り返った。
「アンタ、いい加減にしなさいよ。どこのボンボンかなんて知らないし知りたくもないけど!冗談でもしていい話じゃないでしょ!あいつらのせいでどれだけの人が大変な思いしてると思ってるのよ!…アンタがどれだけ安全な場所で苦労なく暮らしてきたか知らないけど馬鹿にするのも大概にしなさいよ!!!」
「………」
少女は怒鳴りながらそう言うと「二度と話しかけないで」と言葉を最後に再び足早に歩き始めた。
怒鳴りつけられた少年は戸惑いながらも、静かに後を追いかけるしかなかった。
………
……
…
渋谷の街でありながら、この街はもはや遺跡に近かった。
巨顔の怪物からの全力逃走や倒壊したビルの瓦礫や倒木を乗り越えたりと、慣れない道のりに少年の体力に限界が近いのか、息切れが激しくなっている。
それに気がついたのか、少女は少年を一瞥すると歩みを止めた。
「……この辺りで一度休憩にするわよ」
「え…あぁ。すまねぇ」
少年は近くにあった巨大な木の影に入ると、息を整えようと腰を下ろす。
少女はそれを見ると、少年より少し離れた位置に腰掛り腰に巻いているポーチから何かを取り出し、それを少年の方へ投げた。
「その中に水が入ってるから飲んで」
そう言われ投げられた物を見ると、そこには小さな透明な筒状の何かが落ちていた。
少年はそれを拾い上げるが、どうしたらいいのかわからずにいると再度彼女が口を開く。
「アンタねぇ……まぁいいわ。下にあるボタンを押しなさい。そしたら勝手に空気中から水を作ってくれるから」
そう言われ、底を見ると確かに押せそうなボタンがあったので軽く押すと、プシューと炭酸飲料の蓋を開けた時みたいな音を出しながら透明な容器に水が湧き出てきた。
「………すっげ…」
思わず小さく言葉に出る。
水は容器がある程度いっぱいになると、勝手に止まりカチッと音がなるとボタンが元に戻った。
容器に付いたゴムのコルクを抜き恐る恐る水を口にするが、特におかしな味がするとかは無く至って普通の無味だった。
一杯飲み終わると再度ゴムのコルクで蓋を閉め、立ち上がって少女の元へそれを返しに行く。
「これ、ありがとう。助かったよ」
「別にいいわよ。早く安全地帯に行くための必要な休憩だっただけよ」
差し出した容器を受け取りながらそう言う少女は、それを再度腰のポーチへとしまうと少年の顔を見つめてきた。
「な、なに?」
「……アンタ、名前は」
「あぁ、そっか。言ってなかったな…俺は空護。真城空護。よろしく」
空護は手を差し出しながらそう言うが、少女はその手を軽く払い除ける。
「そういうんじゃないから。たださっきは怒鳴って悪かったわね。アレについては謝るつもりはないけど、いきなり怒鳴ったことは謝るわ」
少女は膝を抱え込み遠くを見つめながら、静かに怒鳴ったことへの謝罪をする。
「別にいいよ。この世界のこと、何にも知らない俺がズカズカ聞いたのが悪かっただけだから」
「なにも知らないって。アンタ第二都市の出身じゃないの?」
少女は遠くにあった視線を戻し、空護の方を見た。
「いや、違うと思う。こんな事言っても多分信じないと思うけど…俺はこの時代の人間じゃないと思う」
空護は遠くを見つめ遺跡となった渋谷の街に、自分が知っている渋谷の街の情景を重ね合わせながらそう答える。
女手一つで空護と妹を育てた優しい母さんや生意気だけど家族思いの妹も、電車で毎日通った学校も、放課後に立ち寄ったゲーセンも気心の知れた友人達も全て自分が見ていた夢だったのではないかと思わせるには十分すぎた。
知らず知らずと頬を伝う涙が一滴、また一滴と地面に生える草花の上に落ちる。
またふざけた冗談を言う空護を怒鳴りつけようと開けた口を、その涙を見て静かに閉じ、少女も遠くに広がる渋谷の街を眺める。
そしてその少女は日本語で少年に怒鳴りつけてながら歩み寄ってくる。
「そこのアンタ!聞こえなかった!?もう一度聞くけど…ここがどんなに危険な場所かわかってないの!!?」
「……日本語」
「はあ?ちょっと頭、大丈夫?」
少女は怒りながらも少し心配そうな表情で目の前のボロボロの制服を着た少年を見る。
「あ、あぁ…ごめん。気にしないでくれ。それよりも助けてくれてありがとう」
「そんなの仕事だから別にいいわよ。それよりもアンタ、なんでこんな危険な場所にいるわけ?」
「いや、気がついたらここにいたんだよ。俺もなにがなんだかわかってないんだ。それになんだよ…あの怪物…」
少年は少女の後ろで動かなくなった巨顔の怪物を見ると、少女も振り返りその怪物を見た。
「アンタ偽天使を知らないの!?どんだけボンボンなのよ」
「ギテンシ?何だよそれ…あんなの今までいなかっただろ…どうなってんだよ」
少女は若干驚愕と呆れを混在させながらそう言うと、どこか軽蔑するかのように少年を見た。
「ハァ…まぁいいわ。とりあえずここは危険だから、安全な場所に移動するわよ」
少女は深いため息を吐きながらどこかへ歩き始めた。
*
数歩先を歩く桜色の長髪の少女はどう言うわけか、さっきまでとは違い言葉数が減りどこかよそよそしさを感じさせた。もちろんさっき会った時に初めて会ったわけだから友達のように接するのは難しいだろうが、それでも今よりも距離感は近かった気がする。
この謎な気まずさを打開しようと、意を決して少年は話しかけた。
「なぁ、いつからここはこんなになったんだ?」
少年は至極普通の事を聞いたつもりだったかが、どう言うわけか少女は答えるつもりがないのか口を開いてくれなかった。
それどころか少し歩くスピードが上がった気さえした。
「あのギテンシって奴は他にもいるのか?」
そう口にすると目の前の少女はピタリと歩くのやめると、こちらを振り返った。
「アンタ、いい加減にしなさいよ。どこのボンボンかなんて知らないし知りたくもないけど!冗談でもしていい話じゃないでしょ!あいつらのせいでどれだけの人が大変な思いしてると思ってるのよ!…アンタがどれだけ安全な場所で苦労なく暮らしてきたか知らないけど馬鹿にするのも大概にしなさいよ!!!」
「………」
少女は怒鳴りながらそう言うと「二度と話しかけないで」と言葉を最後に再び足早に歩き始めた。
怒鳴りつけられた少年は戸惑いながらも、静かに後を追いかけるしかなかった。
………
……
…
渋谷の街でありながら、この街はもはや遺跡に近かった。
巨顔の怪物からの全力逃走や倒壊したビルの瓦礫や倒木を乗り越えたりと、慣れない道のりに少年の体力に限界が近いのか、息切れが激しくなっている。
それに気がついたのか、少女は少年を一瞥すると歩みを止めた。
「……この辺りで一度休憩にするわよ」
「え…あぁ。すまねぇ」
少年は近くにあった巨大な木の影に入ると、息を整えようと腰を下ろす。
少女はそれを見ると、少年より少し離れた位置に腰掛り腰に巻いているポーチから何かを取り出し、それを少年の方へ投げた。
「その中に水が入ってるから飲んで」
そう言われ投げられた物を見ると、そこには小さな透明な筒状の何かが落ちていた。
少年はそれを拾い上げるが、どうしたらいいのかわからずにいると再度彼女が口を開く。
「アンタねぇ……まぁいいわ。下にあるボタンを押しなさい。そしたら勝手に空気中から水を作ってくれるから」
そう言われ、底を見ると確かに押せそうなボタンがあったので軽く押すと、プシューと炭酸飲料の蓋を開けた時みたいな音を出しながら透明な容器に水が湧き出てきた。
「………すっげ…」
思わず小さく言葉に出る。
水は容器がある程度いっぱいになると、勝手に止まりカチッと音がなるとボタンが元に戻った。
容器に付いたゴムのコルクを抜き恐る恐る水を口にするが、特におかしな味がするとかは無く至って普通の無味だった。
一杯飲み終わると再度ゴムのコルクで蓋を閉め、立ち上がって少女の元へそれを返しに行く。
「これ、ありがとう。助かったよ」
「別にいいわよ。早く安全地帯に行くための必要な休憩だっただけよ」
差し出した容器を受け取りながらそう言う少女は、それを再度腰のポーチへとしまうと少年の顔を見つめてきた。
「な、なに?」
「……アンタ、名前は」
「あぁ、そっか。言ってなかったな…俺は空護。真城空護。よろしく」
空護は手を差し出しながらそう言うが、少女はその手を軽く払い除ける。
「そういうんじゃないから。たださっきは怒鳴って悪かったわね。アレについては謝るつもりはないけど、いきなり怒鳴ったことは謝るわ」
少女は膝を抱え込み遠くを見つめながら、静かに怒鳴ったことへの謝罪をする。
「別にいいよ。この世界のこと、何にも知らない俺がズカズカ聞いたのが悪かっただけだから」
「なにも知らないって。アンタ第二都市の出身じゃないの?」
少女は遠くにあった視線を戻し、空護の方を見た。
「いや、違うと思う。こんな事言っても多分信じないと思うけど…俺はこの時代の人間じゃないと思う」
空護は遠くを見つめ遺跡となった渋谷の街に、自分が知っている渋谷の街の情景を重ね合わせながらそう答える。
女手一つで空護と妹を育てた優しい母さんや生意気だけど家族思いの妹も、電車で毎日通った学校も、放課後に立ち寄ったゲーセンも気心の知れた友人達も全て自分が見ていた夢だったのではないかと思わせるには十分すぎた。
知らず知らずと頬を伝う涙が一滴、また一滴と地面に生える草花の上に落ちる。
またふざけた冗談を言う空護を怒鳴りつけようと開けた口を、その涙を見て静かに閉じ、少女も遠くに広がる渋谷の街を眺める。
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