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チョコレートケーキ
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この時期、街中はピンク色と茶色で満たされる。
「本当は、私も、誰かからチョコレートが欲しかったのですが」
アルネブはとても甘党だ。酒すら甘い味のものを中心に嗜む。故に、バレンタインには、毎年わくわくしていた。
しかし、依頼に基づきヒトの命を奪って金をいただくアルネブが、チョコレートを贈られる筈はない。
そこで、閃いた。今年は、自分を労うために、自分で作ってみることにしたのだ。何にしようか迷ったが、チョコレートケーキを選んだ。
アルネブは、普段、料理なんてしない。ましてや菓子、チョコレートケーキを作るのなんて初めてだ。
レシピを見ながら、買い物に行って、ひとつひとつ必要な材料をそろえた。バター、砂糖、卵、小麦粉、ベーキングパウダー、ココアパウダー、そしてチョコレート。チョコレートは高級なものを選んだ。濃厚で香ばしく、とりわけ甘い味わいが好きだったからだ。
まずはバターを室温に戻し、砂糖と一緒にボウルでクリーム状になるまで混ぜた。次に卵を割り入れ、泡立て器でよく混ぜた。小麦粉とベーキングパウダーをふるいにかけ、ココアパウダーと合わせてボウルに加えた。さらに泡立て器で混ぜ、ふんわりとした生地を作った。
「この段階で結構疲れましたね……」
腰や腕を摩るが、こんなことでケーキ作りは終わらない。オーブンを予熱し、型に生地を流し入れた。表面を平らにならし、オーブンに入れた。焼き時間は30分だった。その間に、チョコレートを湯煎で溶かした。チョコレートの甘い香りがキッチンに広がった。彼はその香りに酔いしれた。
30分が経ち、オーブンからケーキを取り出した。ふくらみ、しっとりとしたケーキが出来上がっていた。彼は溶かしたチョコレートをケーキに塗り、冷蔵庫に入れて冷やした。最後に、添えるフルーツを選んだ。彼はイチゴとブルーベリーを選んだ。芸術には造詣が深いつもりである。赤と青の色がチョコレートの深い森の木の幹のような茶色に映えると思ったからだ。
アルネブはチョコレートケーキをカットし、皿に盛り付けた。イチゴとブルーベリーを飾り、ナイフとフォークを添えた。チョコレートケーキを作るのは初めてだったが、上手にできたと思った。彼は一切れを口に運んだ。チョコレートの夜空のように濃厚な味と香りが舌に広がった。
しかし、美味しければ美味しいほど、寂しさが募る。
「バレンタインは、幸せをヒトに分け、贈るもの。この味を、何方かと共有出来たら……」
そこで、アルネブはハッとなった。思いついた顔がある。早速端末を開いて、その人にメッセージを送るのだった。
「本当は、私も、誰かからチョコレートが欲しかったのですが」
アルネブはとても甘党だ。酒すら甘い味のものを中心に嗜む。故に、バレンタインには、毎年わくわくしていた。
しかし、依頼に基づきヒトの命を奪って金をいただくアルネブが、チョコレートを贈られる筈はない。
そこで、閃いた。今年は、自分を労うために、自分で作ってみることにしたのだ。何にしようか迷ったが、チョコレートケーキを選んだ。
アルネブは、普段、料理なんてしない。ましてや菓子、チョコレートケーキを作るのなんて初めてだ。
レシピを見ながら、買い物に行って、ひとつひとつ必要な材料をそろえた。バター、砂糖、卵、小麦粉、ベーキングパウダー、ココアパウダー、そしてチョコレート。チョコレートは高級なものを選んだ。濃厚で香ばしく、とりわけ甘い味わいが好きだったからだ。
まずはバターを室温に戻し、砂糖と一緒にボウルでクリーム状になるまで混ぜた。次に卵を割り入れ、泡立て器でよく混ぜた。小麦粉とベーキングパウダーをふるいにかけ、ココアパウダーと合わせてボウルに加えた。さらに泡立て器で混ぜ、ふんわりとした生地を作った。
「この段階で結構疲れましたね……」
腰や腕を摩るが、こんなことでケーキ作りは終わらない。オーブンを予熱し、型に生地を流し入れた。表面を平らにならし、オーブンに入れた。焼き時間は30分だった。その間に、チョコレートを湯煎で溶かした。チョコレートの甘い香りがキッチンに広がった。彼はその香りに酔いしれた。
30分が経ち、オーブンからケーキを取り出した。ふくらみ、しっとりとしたケーキが出来上がっていた。彼は溶かしたチョコレートをケーキに塗り、冷蔵庫に入れて冷やした。最後に、添えるフルーツを選んだ。彼はイチゴとブルーベリーを選んだ。芸術には造詣が深いつもりである。赤と青の色がチョコレートの深い森の木の幹のような茶色に映えると思ったからだ。
アルネブはチョコレートケーキをカットし、皿に盛り付けた。イチゴとブルーベリーを飾り、ナイフとフォークを添えた。チョコレートケーキを作るのは初めてだったが、上手にできたと思った。彼は一切れを口に運んだ。チョコレートの夜空のように濃厚な味と香りが舌に広がった。
しかし、美味しければ美味しいほど、寂しさが募る。
「バレンタインは、幸せをヒトに分け、贈るもの。この味を、何方かと共有出来たら……」
そこで、アルネブはハッとなった。思いついた顔がある。早速端末を開いて、その人にメッセージを送るのだった。
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