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九階 熾天使

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「肇さん?起きてください!」
「うん…?」
「朝ですよ?」
「そっか…おはよう」
 学校に行こう、ふと、カレンダーを見る。今日は三月の第三週、要するに…卒業式の日。色々あったけど、楽しかったと思う。最初はこんなに楽しめるとは思わなかった。それもこれも、全部笑夢が隣に居てくれたおかげだと思う。
「笑夢、ありがとう」
「何を言いますか!肇さんが頑張ったからじゃないですか?」
「そうかな?」
「はい!だって、頑張っている人にしか、私たちは微笑みませんよ?」
「そういうものなのか」
 智一もひいひい言いながら受験勉強をしていた。ルトは顔色一つ変えていなかったけど、見えない所で頑張っていたと思う。だから、二人して大学に受かったんだろうな。
「俺はさ、このままでいいのかな?」
「どういう事ですか?」
「大学にも行かず、普通に過ごしてていいのかな?」
「どんな生活を望んでいるんですか?」
「笑夢が居ればそれでいいんだけど」
「だったらなるようになります!」
「でもさ?怠惰な生活を送ってしまうんじゃないか?と怖くて」
「怠惰な生活にはなりませんよ?向こうの仕事を手伝ってもらいます!」
「ああ、そうなの?なら良かった」
 笑夢は首を傾げて不思議そうにしている。どういう反応が正解だったのかな?面倒くさそうにしてほしいって事?仕事をすることに嫌だ、とか言う感情は持ってないしなぁ…。
「強いていうなら…怖がられないで済むからいいかな?」
「なるほど…面白い答えですね」
「じゃあ、行こうか」
 制服を着るのも今日で最後。家を出て、通いなれた道を進んでいく。桜が舞っていてとてもきれいだ……?後ろに気配が!!
「おはよう」
「おはよう…ございます、先輩…。」
 元気がないな…?何かあったのかな?美香が何かしたのか?可愛い後輩に何かしたなら許さないぞ!!
「わたくしがそのような事をするわけがないですわよ?」
「わぁ?」
「なんです?その覇気のない驚きは…」
 溜息交じりに言われる。う~ん…そんなこと言ったって。どうせ居るのは分かっていたし。驚け!と言われる方が無理だ?
「友達部がなくなる危機ですわよ?」
「あ~…」
「そうですね、どうしましょうか?」
 結君のみなんだよね、俺らが卒業すると。さて…どうしたものか。かといって、卒業式だから、時すでに遅し。
「うちに遊びに来てもいいよ、全然」
「え?!いいんですか?!」
「うん?多分…ルトとか智一も来るよ」
 友達が出来れば別だけど。きっと会う頻度は今より減ってしまうとは思う。それでも、俺の事を忘れないでほしいな、と思う。
「そんなに薄情な奴だと思ってたのか?俺の事」
「うわ?!居たの?」
「居るに決まってるだろ?な、ルト!」
「そうだよ!うちも毎日来るよ?迷惑じゃ無ければ…」
 それはそれで問題じゃないか?!友達要らない宣言、今する?!嬉しいような、心配なような…複雑な感情だ。
「遅刻しそうだから、急ごうか?」
 学校の門をくぐって、卒業式に参加する。卒業式は案外サラッと終わって、結局皆で家に集まる。
「本当に、いつもと変わらないね」
「大学行っても変わらないだろ?」
「そうかもね?」
「そういえば、友達部ってどうした?」
「ああ、俺が噂を流しておいたぜ?」
「噂…?」
「そうだ!そのせいで大変な事が起こったんですよ!!」
 結君が憤っている。なんだ?!何をしたんだ?そんなに怒るような事をするとは思えないけど…?
「ここに入れば恋人ができるって」
「余計な事してるじゃん?!」
「今さ、結が部長だろ?」
「だから大変なんですよ…智一?」
「お前…最後まで呼び捨てだな?それのお返しも兼ねている!」
 「うちらは出来てないけど…?」
 「そうなんだけどな?実はカップルだったのか?!ってなってた」
 「えぇ…すっごい被害受けてるじゃん」
 「そんなに嫌そうにする?!」
 卒業式の後だけど、こんなに笑いあえるなら…大丈夫だ。皆、本当にありがとう。これからもよろしくね。
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