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八階 智天使

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 笑夢とお土産を見ながら町を歩く。手はずっと繋いだままで。勢いで神に任せてしまったんだけど…どうなんだろうか。
 「そうですよ、どうなんですか?」
 「え?どう…とは?」
 「私は別にいつでもいいんし、タイミングなんていいんです!」
 「そ、そうなの?」
 「ただ、普通に言葉で言ってくれるだけでも…。」
 そうか、そういえば。色々行動で示そう、と思ってばかりで言葉にすることもなかった。あんなに真剣に好きかどうかを考えていたはずなのに、気づけば違う形に固執してしまったのかもしれない。
 「本当に、好きだよ。いつもありがとう」
 面と向かって言うのは…ちょっと恥ずかしいけど。それでも、今思っている言葉を口にすればいい。
 「そ、そうですか?!嬉しいです!私も好きですよ!」
 形に固執しなければ、こんなにも二人が満たされる。俺は…笑夢を満たしてあげられればそれでいいんだ。
 “やれば出来るではないか!良い物を見た!宴だ!”
 いつもしてるじゃないか。宴ってなんの宴なんだよ?!……?待てよ。一人で見ているわけではない…?
 “む?複数人いるぞ?今この場に居るのは…ざっと千人程か?”
 そんなに視聴者が居たのか?!ちょっと、有名なテレビ番組じゃないんだぞ?!人の恋愛をなんだと思っているんだ…!
 “だから、楽しんでいる、と言っているだろう?”
 「肇さん、神が楽しんでいるのは応援している数と言う事になりますよ」
 「と、言うと?」
 「数千人が私達を応援してくれて、祝福してくれているという事です」
 「なんだろう…加護的な感じって事?」
 「そうですね!本来であれば、嬉しい事ですが…流石に私も恥ずかしいですかね」
 二人で顔を見あって照れる。照れている笑夢を見ていると、いとおしく思えてくる。往来がなくなった事を確認して、笑夢にハグをしてキスをした。
 “宴だ宴だ!!”
 神たちは騒ぎ過ぎているが、俺の心臓の音の方が騒がしい。初めてのキスが修学旅行…か。いい思い出になりそうだ。
 笑夢は固まって動かなくなってしまった。俺も…しばらく笑夢の顔を見れそうにないや。顔をそらして、来た道の方を振り返ると、見慣れた三人組がわなわな震えていた。
 「は、じめ。お、おま、おまえ?!」
 「な、なに?」
 「ごま、ごまか、せ…」
 「ゴマ?持ってないな…ごめん」
 「ごまかせると思うなよ?!」
 「わぁ…うちは笑夢君とくっつくと思ってたのに!」
 「あら、おめでとうございますわ」
 う~ん…同一人物ではあるんだけど。なんというか…もう説明しない!ていうか…ごまかす…ごまかす…。決定的な瞬間を見られているから…無理だ!諦めよう…。
 「肇!お前の彼女…なのか?!」
 「うん?そうだね」
 「もしかして家にあったおしゃれな置物とかは…」
 「彼女が置いてくれた」
 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 智一は頭を抱えて走り去った。智一…ごめん。別に隠すつもりはなかったんだ。彼女が居るってことを。ただ、タイミングが、な?
 「うちは驚かないよ?ただ…笑夢君が…」
 「大丈夫ですよ、彼は女性が好きですから」
 「そうなの?!残念だよ~…。」
 「性別がどうとかは関係ないですわね!強いて言えば、当人同士が好きならですわ。」
 「うん?ごめんけど…何回も言うけど俺は女性が恋愛対象です…。」
 見られてしまったのは仕方ない事だ。この後の智一のフォローをどうするか考えないと…。でも、祝福してくれると思ったんだけどなぁ…。逃げられちゃったよ。
 「大丈夫だよ!うちがフォローしておく!」
 「本当に…?」
 「彼女が出来なくても、彼氏は出来るかもって!」
 「それは…それで。」
 「じゃあ、どうしよう?いつかきっといい女性が現れるよ?」
 追い打ちにならないだろうか。ルトは私は付き合わないけど、みたいなことを言ってる感じに聞こえないだろうか。それはそれで…傷口に塩を塗りこまれている気がする。
 「そっとしておけば大丈夫だと思う。」
 「本当に?」
 「そうですわね、何も言わない方がわたくしもよろしいかと思いますわ?」
 「智一は立ち直れると思う、と言うか、ツッコみ待ちな可能性もある」
 ギャグ体質で居てくれて助かるよ…。今度何か返してあげるから…本当に。唯一の同学年の親友よ。
 「先を越されてしまいましたわね…」
 「え?あの人を知ってるの?」
 「ええ、知人ですわよ?」
 「どんな人なの?」
 「機械的で、感情が無さそう…何を考えているか分からない」
 「悪口ですね?聞こえていますよ?」
 「あら、ごめんあそばせ?」
 二人がまた火花を散らしている…。良くこんな感じで今まで暮らせていたな。顔を合わせるごとに喧嘩していたんじゃ…。
 「喧嘩するほど興味を持ってませんでした」
 「そうですわね?共通の目的を持ってしまったというか、何と言うかですわね?」
 「あ~…ごめんなさい。」
 「今はどうでもいいのですけど、この方が突っかかってきますわ」
 「貴方が来るのでしょう?」
 「もう…やめて~!!とりあえず…帰ろうか」
 「もういいのですか?」
 「ああ、お土産…見せられたでしょ?」
 「そうですね、きっと喜んでますよ」
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