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七階 座天使

(7)

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 翌朝、早めに起きて最後の確認をする。荷物の点検をしないと…忘れ物をすると後悔が残りそう……よし!準備は万端だ。
 後ろからガサガサ音がする。皆がそれぞれ起床してきたようだ。机の上に置いてあるしおりを何気なく手に取る。ペラペラめくっていると、部屋割りが書いてあった。男子だけの部屋割りだろうな……は?班で泊まるの?
「見て!これ!班で部屋割りとかありえなくないか?!」
「え?私達が特殊なんですよ?」
「……?」
「うちらだけだよ?男女で班組んでるの」
「……え?そうなの?」
「だから俺が連れて行かれたんだろ?」
「あ、智一連れて行かれたんだっけ?」
「お~い!もう忘れたのか?!」
「そっか…そういう理由なのね。」
 ん…?待てよ…?クラスが静かになったのもそういう理由か…?覇気があった訳じゃ無くて…動揺?なんか…妙に納得したよ。そういう事だったのね。
「良く許可が下りたね…」
「わたくし達に出来ない事があるとお思いで?」
「あぁ…でも俺らの班だけ特別にしたの?」
「そういうわけではないです、くじ引きで引いた結果という事になってます(主に教師側に」
 そうですか…。ちゃんと齟齬が出ないようにしてるんだろうな…。そういえば、結君昨日全く話してなかったな?楽しかったんだろうか…。
「彼なら笑顔で帰って行ったので大丈夫でしょう」
「あ、そうなのか」
「えぇ、心配無用ですよ」
「なるほど…ってそろそろ行かないとだね!」
 時間を確認して、家を全員で出る。なんか、前日から続いているみたいで…楽しいな。俺も智一と一緒で“楽しみだな”ロボットになっちゃった。
 学校に到着すると、校庭に俺らの学年の人たちが集合していた。おびただしい数の人だかりが出来ている。自分たちのクラスの方に行って、点呼で確認してもらい、バスの一番後ろの席に乗り込んだ。
 三時間程、道路を走り最初の見学地に到着する。道路で道はつながっているのに、四方八方をお寺や神社が囲んでいる。大きな鳥居だったり、棟のような物が建っていたり。至る所に紋章みたいなのが描かれている。
「ここ、すごいね?」
「かなり複雑ですよ、本当に…面倒です」
「め、面倒?」
「あわわ…そんなこと言っていいのかな…」
 ルトが慌てている。そうだよな…だって着いて第一声がほぼ喧嘩売ってるんだもん。俺もちょっと怖い。宗教がらみの場所は怖いイメージがある。過激派が多いというか…なんというか。
「今もここに人は住んでるのか?」
「今のところは住んでいないでしょうね、文化財扱いなので」
「へぇ…じゃあ襲われることはないだろ!」
 道端に落ちていた本当に小さな小石みたいな物を智一が蹴った。わぁ…そんなことしたら大変だぞ?
「罰は当たるんじゃないですか?」
「え?」
 智一がきょとんとしていると、上から鳥の糞が落ちてくる。早すぎだろ…ていうか重たい罪だな?!本当に小突いただけみたいな蹴り方だったのに…。
「壊れたら大変ですし、神々が住まう場所ですからね」
「うぇぇ…最悪だ…。」
「まぁ…可哀そうではあるけど、自業自得でもある。なんとも言えない罰で良かったね!」
「なんでぇ…喜んでるんだよぉ…!!」
 喜んだわけじゃないんだけどさ。神が居る事を俺は知ってるから。どこにでも居るんだなぁ…。
「昔から日本は八百万の神が居る国と言われていますからね!」
 笑夢は得意げに語る。面白いな、そういう話を一緒にしてくれると、それだけで何か満足感がある。そういえば…この紋章だけ違う形をしているような…?なんだろう?天使の羽?のような…?
「それは私の紋章です」
 耳元でこそっと教えてくれる。そうなの?!笑夢の紋章とかあるんだ…。すごいな、ここ。日本にもあるんだな、海外の神とか天使を信仰している所。
「すごいね、これ」
「と言うより…ピンポイントで良く見つけましたね?」
「え?これ何個も種類あるの?」
 良く良く一つずつ見て見ると、全部がそれぞれ違う形をしている。わぁ…運命なのかな?なんちゃって。笑夢の方を見ると照れていた。
「おほん…行こう?」
「は、はい…そうですね」
 何か微妙な空気になってしまった。素直に考えてしまう事は止めることは出来ないし…許して。
 12時になり、皆で昼食を取る。古都まで来て食べるのは…紙に包まれた神バーガー。ねぇ、こんなの考えてたら罰当たるでしょ?!紙と神かけてるの?もっといいのあったでしょうよ…。
「これ…美味しいんだ…」
「神の事を紙と言っているだけありますね」
「許せませんけど、このおいしさに免じて許して差し上げましょう」
「なんで君たちが判断してるんだ?」
「さぁ?何ででしょうね?」
 若干不満そうにしながらも、たまに笑顔を覗かせる。美味しければなんでもよしらしい。良かったね、店主さん…。
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