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六階 主天使

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 こんなにたくさんの人が入ったら…どうするの?ちょっと待ってもらっていいかな…。ええと…殆どの人が美香とお近づきになりたいから入る…と?この部活の意味がなくなるんだけど。
「一旦…美香さんだけ入って」
「では、失礼いたしますわ」
 美香は自分だけ入ると容赦なく扉を閉める。外ではブーイングが起こっているけど…知ったこっちゃない。だって、そんなに許容できないんだもん。
「この部活の意味、知ってる?」
「わかりませんわ?」
「友達を作る事なんだけど…友達になる気はある?」
「そうですわね…皆さん一度お会いした友達になるんではなくて?」
 嘘…だろ?!天然でここまで…天使って、すごいな?!智一は美香に見惚れていて、ルトは首を千切れんばかりに横に振っている。うん、俺の認識って間違ってないよね?
「あのですね?人間界ではそうは行かないですよ?」
「あら、そうでしたの?」
「ええ、派閥みたいなものが存在します」
「そうでしたの…ラファエル派とガブリエル派とミカエル派みたいなものですの?」
「そうです、過去に大戦争を起こしたあの三派閥ぐらいです」
 いや、壮大すぎ!!戦争起こす程じゃないから!戦争起こしているのは…キノコかタケノコかぐらいだよ?!それでも…そこまで行かないけど。
「分かりましたわ!それでわたくしはどちらに着けば肇様と一緒に居られるのでしょうか?」
「どこに着いても…私が居る限り通しません!」
「あら…残念ですわ。」
 ごめん、ちょっとだけ…時を止めることはできるかな?話をしなければならない事があるんだけど…。
 笑夢は即座に時を止める。やっぱり俺と天使以外にはこの空間で動ける人は居ないみたいだ。
「俺以外の他の人を…探すことは出来ないかな?」
「そうですわね…できなくはないのですけれど…長い年月がかかりますわ」
「そっか…今すぐにとは行かないのね?」
「紹介してくださるなら、よろしくてよ?」
「今でこそ俺に優しいけど、最初から俺に優しかった奴は誰一人いないから、ここでは無理だろうね」
「そうでしたか?それではダメですわね。」
「長い年月を掛ける事が出来るなら…俺の人生を見ていてくれれば居るんじゃないかな?」
 俺もすぐに天界に行くことにはならないだろうし。笑夢を見ると、笑夢は頷く。やっぱそうだよね?て事は…しばらくはこっちで面倒を見ないとだから。俺みたいな人間を探すのか…できるだろ!
「肇さん?多分…ほぼ居ませんよ?」
「……え?」
「わたくし達は長い年月を掛けてと申しましたわよね?」
「うん?」
「どれぐらいの年月の想定ですか?」「どれぐらいの年月の想定でして?」
 二人が同時に聞いてくる。長い年月、そういえば具体的な年月って聞いてなかったな…。どれぐらいなんだろう?百年とか二百年とか…かな?
「いいえ、具体的には数千年と言う単位です」
「うわぁ…俺って千年に一人の逸材だったの?」
「そうですわね…なかなか人間の中ではいらっしゃらないでしょうね」
 それは…困ったな。俺、普通に死んでるよ?長くても百年だからね?でも、俺ってそんなに凄くないと思うんだ?ただ優しいってだけでしょ?
「そうではないです。優しさを持つ人間は基本的に悪意に染まりやすいです」
「例えばこの方達なんていい例ですわね?」
 智一を指さす。智一っていいやつだよな?何かあるのか?ルトは少しだけ…染まりやすいかな?中二病、お嬢様…なんでも染まってた気がする。
「そこです、優しい方は染まりやすいんです。」
「自分の芯を持った優しい方は…あまりいらっしゃらないですわね」
「そうなんだ…俺も染まってない?」
「肇様はそうではないですわ?貴方の心には穢れが一つも見えないのです。」
「そうです、だから天使が集まってくるんですけどね」
「そうなんだ…悪い気はしないな」
「あんなに自分を否定されて折れない人は肇さんぐらいしか居ないんですよ」
 ああ、顔の事でたくさん否定された。世界の悪意に飲まれるかと思った。でも、天使が来てくれなかったら…俺は今どうなっていただろうか。
「それで天使を派遣するのをお許しになられたのですよ?」
「神?」
「はい、そうです。私はいち早く挙手したんです」
「わたくしは…二番手になってしまいましたの。」
 美香は目を手で覆い隠す。笑夢はガッツポーズをしていた。俺のモテ期は最高だけど…モテなくて良かった。誰かを傷つけるぐらいなら…。
「良いのですよ、わたくし達が勝手にしている事ですので」
「それで、貴方は諦めない…と?」
「はい!わたくしは諦めません!」
「う~ん…もし俺が笑夢と一緒になる選択をした場合、美香さん?はどうするの?」
「どうもこうもありませんわね…わたくしも研修で人間界に居て、笑夢さんと同じことをいたしますわ」
 あ、じゃあ、学校に残るんだ?!そしたら…部活に一緒に居てもらった方がいいのかな?笑夢の方が長いし、サポートできるだろうし。悪意に染まる天使は…何より見たくないから。
「肇さん…優しすぎますよ?」
「わたくしの事なんてどうでもよい、と思っていただいてもよろしかったのに…ますます好きになってしまいます!」
 しまった…迂闊だった…。ごめんね、笑夢。少しだけ…少しだけだけど、遠回りに付き合って。
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