23 / 61
四階 能天使
(5)
しおりを挟む
隣の部屋を覗いた智一は「なんだ、別に何もないじゃん」と言って方を落とした。そんなはずはない、確認のため中を覗いた。本当に何も無かった。
笑夢は荷物まで全部持って行ったのか…?それじゃあ本当に帰るみたいじゃないか。本当に…幻覚だった?いや、智一は認識していたし、ルトもそうだった。
「な、何かあったら大変だからね?長らく開けてなかったし」
「そうか?」
嘘ではないけど。そこに住んでいた人が居たはずだった。もしかして、荷物は必要ないのではないか?という希望的な憶測をしてみる。本人じゃなきゃ分かりはしないけど。
「あ、そろそろ解散の時間だね?」
「お、おう!そうだな」
「じゃあ、送るよ」
そういってリビングに戻ろうとすると、後ろから影が顔を出す。何事だ?!と思ったら、笑夢だった。ひっそりと帰ってきていたみたいだ。
「楽しそうな事をしていますね?」
「わ?!いつの間に?!」
「うぉぉ?!帰ってきてたのか?何でここに居るって分かったんだ?!」
「いえ、普通に遊びに来ただけですよ?」
笑夢は男性の姿で現れた。何かを察していたのか、なんなのか。本当に…良かったよ。俺の幻覚だったんじゃないか、ずっとそんなことを考えていたのだから。
「皆さんを送るんですか?私も行きましょうか?」
「ん?お前は…帰らないのか?」
「私は家が近いんですよ」
「ふ~ん…そうなんだ」
何か智一は勘ぐっている様子だ。そういえば、さっきからルトの声が聞こえないような気がする。隣を見て見ると、ルトは腰を抜かして立ち上がれなくなっていた。
「な?!どうしたの?」
「うち…驚きすぎて…」
「あ、そういう事?」
確かに驚きもするよね。だって音もしなかったんだもん。というか…何処から入ってきたんだ?まさか…天から降臨した?最初の時みたいに?
ルトに手を貸して起き上がらせる。二人はテキパキと準備をして、そのまま玄関に向かった。
駅に二人を送り届けて、笑夢と二人で歩く。不思議な感覚がする。ちょっと前まで当たり前だった事が、一瞬で無くなるという事実。それを痛いほど通関した。
「どうでした?私が居ない間は?」
「寂しかったし心細かったよ」
「分かってま……え?」
笑夢は驚いた表情を見せて、歩くのを止める。俺の返答がおかしかったのか、それとも予期せぬ返答が返ってきたのか。
「どうしたの?」
「い、いえ…そう素直に言われる事を予想していなかったので…」
「そう?今回ばかりは…ね?」
いつもやってくれていた事は大変な事だったと思うし、一緒に居てくれた事も嬉しかった。本当に。家が一人だと寂しいと感じた事も、授業に集中できなかったことも、一緒にご飯を食べれた事も。全てが本当に貴重なんだと思う。
「肇さん…どこかに本体が隠れていますか?!」
「え?!俺が本体なんだけど?」
「いや、そんなに感謝されるなんて思ってなくて…」
「慣れるのが早かった、この言葉を思い出してさ?」
「はい」
「あの稀有な状況に慣れてしまって、当たり前になっていたんだよ」
「そう…ですか」
「俺はきっと、何百年も生きるつもりで生きていたんだ」
こんな珍しい、一生かけてもお目にかかれない状況を当たり前にしていた。天使ってだけでも一生、いや…十生かけても出会えるような事じゃない。なのに俺の苦手な所を全部カバーしてくれるんだ。俺の事を好き、と言う理由だけで。
「俺も…きっと好きになったんだと思う」
「は…はい?!」
「笑夢の事を」
「こんな…急に告白なんて…?!」
笑夢頬を赤らめてくねくねしている。ははは、本当に面白い。俺は今世、いや前世も来世も含めて、最高の経験をさせてもらっている。本当にありがとう。
「こ、怖いですよ?!」
「そう思う?これ、笑夢にも思ってた事だからね?」
「あ~…肇さんから伝わってましたよ?でも、肇さんの場合は…人が変わったみたいで怖いです」
「怖い怖い言うなよ?!傷つくじゃん?」
「ふふっ、思ってないですよね?どうですか?怖いをネタに昇華出来ましたか?」
「え?!なんで知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんですか?」
「ははっ、天使だね」
「そうです!あ、ところで…今日の晩御飯は何にしますか?」
「う~ん…ごめん、なんでもいいよ?本当に…なんでも。」
笑夢は首を傾げているけど…俺の食生活見てないから分かってないんだろうな。カップ麺、総菜、出来合いの物しか食べてなかった一週間で、手作りの料理は本当に暖かい事を再認識した。
「は、肇さん…そんな生活していたんですか?」
「そうだ、バレるんだった…」
「健康に何か問題はないですか?」
「大丈夫かな…?寝不足、集中力なし、体も…若干重たい!」
「はい、生活習慣病予備軍ですね?」
この感覚も懐かしく感じるな。当たり前を当たり前だと思わない事が一番大事だ、ずっとそう思っておこう。
笑夢は荷物まで全部持って行ったのか…?それじゃあ本当に帰るみたいじゃないか。本当に…幻覚だった?いや、智一は認識していたし、ルトもそうだった。
「な、何かあったら大変だからね?長らく開けてなかったし」
「そうか?」
嘘ではないけど。そこに住んでいた人が居たはずだった。もしかして、荷物は必要ないのではないか?という希望的な憶測をしてみる。本人じゃなきゃ分かりはしないけど。
「あ、そろそろ解散の時間だね?」
「お、おう!そうだな」
「じゃあ、送るよ」
そういってリビングに戻ろうとすると、後ろから影が顔を出す。何事だ?!と思ったら、笑夢だった。ひっそりと帰ってきていたみたいだ。
「楽しそうな事をしていますね?」
「わ?!いつの間に?!」
「うぉぉ?!帰ってきてたのか?何でここに居るって分かったんだ?!」
「いえ、普通に遊びに来ただけですよ?」
笑夢は男性の姿で現れた。何かを察していたのか、なんなのか。本当に…良かったよ。俺の幻覚だったんじゃないか、ずっとそんなことを考えていたのだから。
「皆さんを送るんですか?私も行きましょうか?」
「ん?お前は…帰らないのか?」
「私は家が近いんですよ」
「ふ~ん…そうなんだ」
何か智一は勘ぐっている様子だ。そういえば、さっきからルトの声が聞こえないような気がする。隣を見て見ると、ルトは腰を抜かして立ち上がれなくなっていた。
「な?!どうしたの?」
「うち…驚きすぎて…」
「あ、そういう事?」
確かに驚きもするよね。だって音もしなかったんだもん。というか…何処から入ってきたんだ?まさか…天から降臨した?最初の時みたいに?
ルトに手を貸して起き上がらせる。二人はテキパキと準備をして、そのまま玄関に向かった。
駅に二人を送り届けて、笑夢と二人で歩く。不思議な感覚がする。ちょっと前まで当たり前だった事が、一瞬で無くなるという事実。それを痛いほど通関した。
「どうでした?私が居ない間は?」
「寂しかったし心細かったよ」
「分かってま……え?」
笑夢は驚いた表情を見せて、歩くのを止める。俺の返答がおかしかったのか、それとも予期せぬ返答が返ってきたのか。
「どうしたの?」
「い、いえ…そう素直に言われる事を予想していなかったので…」
「そう?今回ばかりは…ね?」
いつもやってくれていた事は大変な事だったと思うし、一緒に居てくれた事も嬉しかった。本当に。家が一人だと寂しいと感じた事も、授業に集中できなかったことも、一緒にご飯を食べれた事も。全てが本当に貴重なんだと思う。
「肇さん…どこかに本体が隠れていますか?!」
「え?!俺が本体なんだけど?」
「いや、そんなに感謝されるなんて思ってなくて…」
「慣れるのが早かった、この言葉を思い出してさ?」
「はい」
「あの稀有な状況に慣れてしまって、当たり前になっていたんだよ」
「そう…ですか」
「俺はきっと、何百年も生きるつもりで生きていたんだ」
こんな珍しい、一生かけてもお目にかかれない状況を当たり前にしていた。天使ってだけでも一生、いや…十生かけても出会えるような事じゃない。なのに俺の苦手な所を全部カバーしてくれるんだ。俺の事を好き、と言う理由だけで。
「俺も…きっと好きになったんだと思う」
「は…はい?!」
「笑夢の事を」
「こんな…急に告白なんて…?!」
笑夢頬を赤らめてくねくねしている。ははは、本当に面白い。俺は今世、いや前世も来世も含めて、最高の経験をさせてもらっている。本当にありがとう。
「こ、怖いですよ?!」
「そう思う?これ、笑夢にも思ってた事だからね?」
「あ~…肇さんから伝わってましたよ?でも、肇さんの場合は…人が変わったみたいで怖いです」
「怖い怖い言うなよ?!傷つくじゃん?」
「ふふっ、思ってないですよね?どうですか?怖いをネタに昇華出来ましたか?」
「え?!なんで知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんですか?」
「ははっ、天使だね」
「そうです!あ、ところで…今日の晩御飯は何にしますか?」
「う~ん…ごめん、なんでもいいよ?本当に…なんでも。」
笑夢は首を傾げているけど…俺の食生活見てないから分かってないんだろうな。カップ麺、総菜、出来合いの物しか食べてなかった一週間で、手作りの料理は本当に暖かい事を再認識した。
「は、肇さん…そんな生活していたんですか?」
「そうだ、バレるんだった…」
「健康に何か問題はないですか?」
「大丈夫かな…?寝不足、集中力なし、体も…若干重たい!」
「はい、生活習慣病予備軍ですね?」
この感覚も懐かしく感じるな。当たり前を当たり前だと思わない事が一番大事だ、ずっとそう思っておこう。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる