8 / 61
二階 大天使
(4)
しおりを挟む
まさか、アトラクションに乗らずに園内のキャラクターだけを見て、軽く2、3時間飛んでいくとは思いもしなかった。出てきたのは朝の9時頃だった。今時計を見たら昼になっている。ゴールデンレトリーバー、ペキニーズ、シーズー、果てはアザワクという日本に一桁程しかいないとされる犬までキャラ化されていた。
「ふぅ…見終わったのかな?」
「ですね!いやぁ…ここはいつ来てもすごいですよ!」
笑夢はつやつやした顔をしている。いやぁ…良かったよ、ここを選んでおいて。いつしか俺の緊張もほぐれていたし。う~ん…引っ張ることは今のところ出来てないけど。いいのだろうか?
「良いんですよ、そんなこと気にしなくて!」
「え?そうかな?」
「はい、男性だから引っ張っていくとか気にしないでください!今が楽しいのですから!」
「う、うん。分かったよ」
「マンネリとかも気にしないでください、どこにでも連れていけますからね?」
頼もしすぎる…。でも、そっか。囚われなくていいのか。気持ちが大分楽になるな。うん、余計な事を考えても読まれるし、やめておこう。
「何を考えようとしたんですか?悪い事ですか?浮気ですか?」
「いや、何も、ないよ?」
「隠してますね…?なんです?」
「本当に何も考えてないんだって!」
「まぁ、いいでしょう。今回は許しますよ?」
「は、はい。」
笑夢は強張らせていた顔を元の笑顔に戻す。落差があって少し怖いな。はっ…。まずい…ははは、可愛いな~綺麗だな~。
「ふふふ、もう遅いですよ?」
「はい、すいません。少し怖いです」
「そうですか、怖いですか?」
「なんか、作ってるみたいな感じがありまして…」
「なるほど、そういう風に思うんですね?」
笑夢は繋いでいた手をパッと放して腕を組んで考える。前から思っていた事だけど、考えている時の横顔は驚くほど綺麗だ。怖いって言ったって、怒らせる俺に原因があるし、仕様がないと言えるかな。
「ごめん、ご飯食べに行こうよ」
俺は頭を下げた後、すぐに手を差し出す。笑夢は俺の方を見てにこっと笑うと答えるように手を取った。お昼に食べるものは…何にしようか。
テーマーパークに一角に飲食店が立ち並んでいる所がある。洋食、中華、和食…いろいろ並んでるんだな。感心しながら一つ一つを見て回る。こういう遊園地に来ると定番は洋食なんだろうな。
洋食店の前に出ている看板には、ナポリタン、ハンバーグ、ステーキ…ハンバーガーも書いてある。色々ありすぎても選べないんだけど。
「どうしようか?」
「肇さんは何が食べたいですか?」
「ごめんだけど、食べたい物は浮かんでこないんだよね」
「そうですか…では、ビーフシチューオムライスとかどうですか?」
「美味しそうだね!」
「作るのに手間がかかるんですよ…美味しいですけど!」
もしかして、ビーフシチューから作るとか?それは確かに手間がかかるな…オムライス自体も簡単ではないし。前に作ろうとしたことあったけど、卵がぐちゃぐちゃになって綺麗に出来なかったんだよな…。
「じゃあ、入りましょうか?」
「そうしよう」
店の入り口から入り席に案内される。中は割と混雑していて、席の八割程は埋まっていた。何か視線を集めているような…あ、手を繋いだまま入ってきたからかな?そう思っていたら、「隣の人綺麗な人だね」とかいろいろ聞こえてくる。あ、笑夢が視線を集めていたのか。
「なんか、食べづらいかもね?」
「結界張って見えなくしますか?」
「それこそ注目の的じゃない?!」
「そうでしょうか?消えれば何とかなりますよ?」
「いや、イリュージョンになっちゃってるから」
そんなやり取りをしていると、席に料理が運ばれてくる。ビーフシチューのいい香りとオムライスの卵とバターの香りがマッチしていて食欲をそそられる。
「いただきます」「いただきます」
俺らのいただきますの声が揃ってしまったが同時に食べ始める。食べている最中にちらっと笑夢を見ると、片方の髪の毛をかきあげて、スプーンを口へ運ぶ。優雅で気品のある食べ方をしていてつい、見とれてしまった。
「ありがとうございます」
「あ、うん」
「一口要りますか?」
「え、いや、同じもの食べてるし…」
俺は顔をそっぽに向ける。笑夢はスプーンを置いて、俺の視界にわざわざ入ってきて両手で俺の顔を真正面に向けさせる。
「はい、どうぞ」
「いや、恥ずかしいって…」
「良いじゃないですか、別にここに居る人の大半は、もう会いませんよ」
「そうだけど…」
「はい、どうぞ」
自分にどうしようもない、と言い聞かせて、あーんを受け入れる。心臓がどきどき高鳴っていくのを感じる。もう、味なんて分かんないよ。笑夢は俺の方を見て何かを期待しているように見える。もしかして…
「え、俺もやるの?」
「やってください!ほら、あーん」
「う、分かったよ」
スプーンにオムライスを盛って笑夢の口に運ぶ。笑夢は満足そうに笑顔で噛みしめていた。もう…やっと落ち着いてきたのに…心臓が持たないって。
「ふぅ…見終わったのかな?」
「ですね!いやぁ…ここはいつ来てもすごいですよ!」
笑夢はつやつやした顔をしている。いやぁ…良かったよ、ここを選んでおいて。いつしか俺の緊張もほぐれていたし。う~ん…引っ張ることは今のところ出来てないけど。いいのだろうか?
「良いんですよ、そんなこと気にしなくて!」
「え?そうかな?」
「はい、男性だから引っ張っていくとか気にしないでください!今が楽しいのですから!」
「う、うん。分かったよ」
「マンネリとかも気にしないでください、どこにでも連れていけますからね?」
頼もしすぎる…。でも、そっか。囚われなくていいのか。気持ちが大分楽になるな。うん、余計な事を考えても読まれるし、やめておこう。
「何を考えようとしたんですか?悪い事ですか?浮気ですか?」
「いや、何も、ないよ?」
「隠してますね…?なんです?」
「本当に何も考えてないんだって!」
「まぁ、いいでしょう。今回は許しますよ?」
「は、はい。」
笑夢は強張らせていた顔を元の笑顔に戻す。落差があって少し怖いな。はっ…。まずい…ははは、可愛いな~綺麗だな~。
「ふふふ、もう遅いですよ?」
「はい、すいません。少し怖いです」
「そうですか、怖いですか?」
「なんか、作ってるみたいな感じがありまして…」
「なるほど、そういう風に思うんですね?」
笑夢は繋いでいた手をパッと放して腕を組んで考える。前から思っていた事だけど、考えている時の横顔は驚くほど綺麗だ。怖いって言ったって、怒らせる俺に原因があるし、仕様がないと言えるかな。
「ごめん、ご飯食べに行こうよ」
俺は頭を下げた後、すぐに手を差し出す。笑夢は俺の方を見てにこっと笑うと答えるように手を取った。お昼に食べるものは…何にしようか。
テーマーパークに一角に飲食店が立ち並んでいる所がある。洋食、中華、和食…いろいろ並んでるんだな。感心しながら一つ一つを見て回る。こういう遊園地に来ると定番は洋食なんだろうな。
洋食店の前に出ている看板には、ナポリタン、ハンバーグ、ステーキ…ハンバーガーも書いてある。色々ありすぎても選べないんだけど。
「どうしようか?」
「肇さんは何が食べたいですか?」
「ごめんだけど、食べたい物は浮かんでこないんだよね」
「そうですか…では、ビーフシチューオムライスとかどうですか?」
「美味しそうだね!」
「作るのに手間がかかるんですよ…美味しいですけど!」
もしかして、ビーフシチューから作るとか?それは確かに手間がかかるな…オムライス自体も簡単ではないし。前に作ろうとしたことあったけど、卵がぐちゃぐちゃになって綺麗に出来なかったんだよな…。
「じゃあ、入りましょうか?」
「そうしよう」
店の入り口から入り席に案内される。中は割と混雑していて、席の八割程は埋まっていた。何か視線を集めているような…あ、手を繋いだまま入ってきたからかな?そう思っていたら、「隣の人綺麗な人だね」とかいろいろ聞こえてくる。あ、笑夢が視線を集めていたのか。
「なんか、食べづらいかもね?」
「結界張って見えなくしますか?」
「それこそ注目の的じゃない?!」
「そうでしょうか?消えれば何とかなりますよ?」
「いや、イリュージョンになっちゃってるから」
そんなやり取りをしていると、席に料理が運ばれてくる。ビーフシチューのいい香りとオムライスの卵とバターの香りがマッチしていて食欲をそそられる。
「いただきます」「いただきます」
俺らのいただきますの声が揃ってしまったが同時に食べ始める。食べている最中にちらっと笑夢を見ると、片方の髪の毛をかきあげて、スプーンを口へ運ぶ。優雅で気品のある食べ方をしていてつい、見とれてしまった。
「ありがとうございます」
「あ、うん」
「一口要りますか?」
「え、いや、同じもの食べてるし…」
俺は顔をそっぽに向ける。笑夢はスプーンを置いて、俺の視界にわざわざ入ってきて両手で俺の顔を真正面に向けさせる。
「はい、どうぞ」
「いや、恥ずかしいって…」
「良いじゃないですか、別にここに居る人の大半は、もう会いませんよ」
「そうだけど…」
「はい、どうぞ」
自分にどうしようもない、と言い聞かせて、あーんを受け入れる。心臓がどきどき高鳴っていくのを感じる。もう、味なんて分かんないよ。笑夢は俺の方を見て何かを期待しているように見える。もしかして…
「え、俺もやるの?」
「やってください!ほら、あーん」
「う、分かったよ」
スプーンにオムライスを盛って笑夢の口に運ぶ。笑夢は満足そうに笑顔で噛みしめていた。もう…やっと落ち着いてきたのに…心臓が持たないって。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
瀬々市、宵ノ三番地
茶野森かのこ
キャラ文芸
瀬々市愛、二十六才。「宵の三番地」という名前の探し物屋で、店長代理を務める青年。
右目に濁った翡翠色の瞳を持つ彼は、物に宿る化身が見える不思議な力を持っている。
御木立多田羅、二十六才。人気歌舞伎役者、八矢宗玉を弟に持つ、普通の青年。
愛とは幼馴染みで、会って間もない頃は愛の事を女の子と勘違いしてプロポーズした事も。大人になって再会し、現在は「宵の三番地」の店員、愛のお世話係として共同生活をしている。
多々羅は、常に弟の名前がついて回る事にコンプレックスを感じていた。歌舞伎界のプリンスの兄、そう呼ばれる事が苦痛だった。
愛の店で働き始めたのは、愛の祖父や姉の存在もあるが、ここでなら、自分は多々羅として必要としてくれると思ったからだ。
愛が男だと分かってからも、子供の頃は毎日のように一緒にいた仲だ。あの楽しかった日々を思い浮かべていた多々羅だが、愛は随分と変わってしまった。
依頼人以外は無愛想で、楽しく笑って過ごした日々が嘘のように可愛くない。一人で生活出来る能力もないくせに、ことあるごとに店を辞めさせようとする、距離をとろうとする。
それは、物の化身と対峙するこの仕事が危険だからであり、愛には大事な人を傷つけた過去があったからだった。
だから一人で良いと言う愛を、多々羅は許す事が出来なかった。どんなに恐れられようとも、愛の瞳は美しく、血が繋がらなくても、愛は家族に愛されている事を多々羅は知っている。
「宵の三番地」で共に過ごす化身の用心棒達、持ち主を思うネックレス、隠された結婚指輪、黒い影を纏う禍つもの、禍つものになりかけたつくも神。
瀬々市の家族、時の喫茶店、恋する高校生、オルゴールの少女、零番地の壮夜。
物の化身の思いを聞き、物達の思いに寄り添いながら、思い悩み繰り返し、それでも何度も愛の手を引く多々羅に、愛はやがて自分の過去と向き合う決意をする。
そんな、物の化身が見える青年達の、探し物屋で起こる日々のお話です。現代のファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる