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恋人期間(神崎あやめ)
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しおりを挟む二次会が終了し、解散となると待っていた桐山さんの元に小走りで向かう。
「また、転んでバッグの中身ひっくり返すなよ」
と桐山さんは笑いながら嫌味を言った。
到着したホテルの部屋には大きなベッドが一つ置かれていて、東京の眩いネオンがガラスの中に映る。
桐山さんは、机の上に時計を置きネクタイを緩めた。
その一連の動作だけでも今日はいつもの3割増しぐらいでかっこいい。
「ひとまず消毒からしておこうかね。」
ベッド以外に行き場もなく佇む私の腕を引っ張って、優しく抱き寄せる。
見つめ合うと、私の顎をぐいっと持ち上げて、唇を重ねる。
「俺が教えた護身術が全然生かされてないじゃん」
「一回目は成功したんですけど、二回目は油断しました」
「油断・・・?彼が初恋の相手だから・・とか?」
私を抱きしめて首筋にキスをする。
「違いますよ。あんないじめっ子誰が好きになるんですか?」
「あの子は、あやめのことが好きすぎて意地悪してるだけでしょ。俺も、あやめと同級生だったらおんなじことしてるかもよ・・・きっとこのキスマーク見て余計腹が立ったんじゃない?」
そう言って桐山さんは私のドレスのファスナーを下げる。
キスマークのついた胸元があらわになる。
「桐山さんが全部消してくれるって言ったのに」
「だって、ここは自分で消せるでしょ?わざと消さなかったんじゃないの?」
「うわっ桐山さんも意地悪」
「その意地悪な男に逮捕されたいって言ったのは誰?」
「もう・・・」
いつも以上に強く抱きしめて、甘い甘いキスをする。
「はい容疑者確保・・・」
桐山さんは私の左手薬指に、指輪をはめる。
枕元の間接照明に照らされてダイヤモンドが煌めいた。
しかし、桐山さん言った言葉をもう一度頭で再生するとどこかで聞いたことのあるようなセリフだった。
手錠に見立てて左手薬指に指輪をはめるプロポーズの流れに。
シチュエーションCDの中では、恋人でありながら紆余曲折あった警察官の彼氏にプロポーズをされる。
「容疑者確保」と呟いて左手の薬指に指輪をはめる。
「俺の妻になってほしい罪で逮捕する」
というベタな言葉で終わるものであった。
このCDは、桐山さんに見られることなくカバンにしまったつもりだった。
「待って、待って、なんでそれ知ってるんですか?」
「あ・・・気づいた??」
桐山さんはニヤリと笑いながら言う。
「いや、荷物拾ってる時に一番最初に持ってたCDが目に止まっちゃって、なんだろうって気になって調べたらあれ内容すごいね。あんな警察いねーよってツッコみながら思わず最後まで聞いちゃった。
でも、あやめちゃんはこう言うプロポーズをされたいのかなって思って・・・」
私は、顔を手で押さえる。
体温が上昇し続けて一向に下がらない。
(もう帰りたい・・・恥ずかしくて消えたい)
「あのCDを俺のことを考えて買ってくれてたのだとしたら、俺は嬉しいけどね。」
そういって優しく頭を撫でた。
「そうですよ。桐山さんのことを考えて衝動買いしたんです。また会えたらいいなって・・・
街でパトカー見かけたら桐山さんに会えるかなとか・・・警察官の制服見ただけでドキドキしてました。刑事もののドラマとかも無意識にみちゃうし・・・こんなの生まれて初めてで、すごく苦しくて・・・・」
顔を赤くしながら答えた私。
ニコッと笑った桐山さんは、膝間ついて左手薬指にキスをする。
まるでプリンセスになった気分だ。
「改めて、神崎あやめさん・・・僕と結婚してください。」
私は、笑顔で「はい」と返事をした。
桐山さんは、カバンの中から、婚姻届を取り出した。
「書いてくれる・・・?」
「もちろんです・・・」
「でもね、書くまえにもう一回考えてほしい・・・
付き合う前に言った通り、俺は刑事で何かがあったらあやめよりも仕事を優先するし、子供ができても家族サービスはしてあげられない。
もちろん、最大限の努力はするけれど・・・
それでいて、いつ殺されてもおかしくない立場にいる。
常に命がけだよ。
俺がもし死んだとしても、いつまでも悲しんでいないで次の男を探して幸せに生きてほしいって考えてるけど、本当は再婚とかして欲しくないし、仕事中もずっとあやめのこと考えると思うし、俺が仕事で家を空けてる間に他の男と浮気していたら耐えられないし、もうとにかく好きすぎて辛い・・・
こんな俺でもいいの?」
「前半は了承しました・・・でも、桐山さんがいない人生なんて考えたくないです。」
私は、桐山さんに抱きついた。
「私からもいいですか?桐山さんの妻になっても、グッズやCDに漫画、DVDは捨てません。あとカナト様は特別枠です。この浮気は許してもらわないと結婚できません。」
「カナト様って・・・わかった。認める。」
にこりと笑った私に、桐山さんはキスをした。
二人で婚姻届を記入してもう一度絶え間なくキスをする。
「本当は、ご両親に認めてもらってからと思ったけれど・・・」
「嫌です。今日がいい。呼び出しに邪魔されたくないです。」
「それもそうだ・・・」
「桐山さん・・・その前にお風呂入ってもいいですか?」
「そうだね。一緒に入る?」
私は、桐山さんの頬をつねる。
「嫌です。」
冷静になって考えると、これから始まる情事に一気に緊張が襲う。
交代でシャワーを済まし、バスローブ姿になる。
「緊張してる?」
手の震える私の手をそっと握る。
「大丈夫だよ・・・」
優しく囁き桐山さんは頭を撫でる。
その手は身体中優しく弄り、バスローブが解かれてお互いが裸になる。
桐山さんの鍛え抜かれたに腕の筋に思わず見とれてしまう。
「もう、あやめのエッチ。いつまで見てんの?」
「だって筋肉すごいから・・・」
「そうだよ。俺30過ぎたおっさんだけどちゃんと鍛えてるからね。若者にはまだ、負けねーし。」
私はふふっと笑った。
「すごい余裕そうじゃん。今までしてきたことなんてほんの序の口だからな」
桐山さんは、いつもの通り私の弱いところを知り尽くして弄ぶ。
胸の弱いところ、首筋・・・
桐山さんは私の太ももを両手でワレメのところに顔を埋める。
「それはダメ・・・」あまりの恥ずかしさに桐山さんの顔を押しのける。
「だってこうしなきゃ入らないよ・・・」
構わずに続けて舐め回していく。
絶えず漏れる声が、ホテルの部屋の中に響き渡る。
隣の部屋の人のことを気にしなくていい。
広くて大きなベッドのシーツの海で、桐山さんに自分の恥部を晒す。
「やめて」と言ってもそれは「続けて」に捕らえられて、「やめないで」と言えば「止められて」
「もっとしてほしい」という感覚に襲われる矛盾。
優しいと意地悪を繰り返し
涙が出そうなくらいに愛されていると感じてしまう。
桐山さんに出会ったラブホテルの前で、肩を組む恋人同士はこの快楽を求めてピンクのネオンの光の元へと導かれていったのだと今更ながら知った。
「あやめ・・・挿れるよ・・・」
コンドームを開封して、桐山さんの大きく膨らんだそれを先ほどから十分にいじめられた私の中にゆっくりと差し込んでいく。
痛みが走る・・・
その痛みに顔を歪めると、桐山さんは優しくキスをして頭を撫でる。
「大丈夫だよ・・・力抜いて・・・ほら・・・全部・・・入った・・・それにしてもこれはやばい・・・きつ過ぎて動けない・・・」
私は絶えず喘ぎ続けることしかできない。
桐山さんの肌と密着する、のしかかる重み、ベッドが軋む音。
自分が今どういう状況なのかが頭で理解することができない。
もう何度果てたか分からない。
声が枯れていく・・・
でも、やめないで・・・・
感じた痛みは、不思議と快楽へと変わっていく。
「あやめ・・・ごめん・・・俺もう限界・・・」
私のことだけを見て、私の中で気持ちよくなっていく桐山さんがたまらなく愛おしい。
このまま離れないで・・・
他の人のことを見ないで・・・
私だけのことを見て・・・
私だけを愛して・・・・
二人で、力尽きて桐山さんの腕枕に抱かれて眠りにつく。
この幸せな夜を、私は生涯忘れない。
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