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Side 1ーOne way loveー

16(今泉翠)

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付き合ったはいいものの一向に前に進もうとしない私に痺れを切らした瀬戸口が、
「次のシフトの休みが被ったらその前の日は俺の家にお泊まりね」と言い放った。
硬直した私に瀬戸口は

「大丈夫、下心があるわけじゃなくてただ一緒にいたいだけ。普通に映画とか見てお酒飲むだけだよ。」

「なんか、それ学生の時によくされたナンパみたい。安心させてるつもりでも本心はヤル気満々のやつ。」

「おいそういうこと言うなよ。てゆーかそんな風にナンパされてたの?そいつらと俺を一緒にしないでよ・・・」

逆に、瀬戸口もそうやって女の子を安心させておいて体の関係に至っていたのかと少し不信感を抱きそうになったが深く考えないことにした。私への片思い期間に免じて。

数日後、来月のシフトが出された時に、月初から綺麗にシフトが重なっており私は瀬戸口が何か手を回したのでないかと疑うほどだった。

当日仕事が終わり、珍しくお互いに残業をせずに会社を後にした。
後に一大イベントが控えていると言うのに仕事に集中できるはずがなかった。


お互いに食べたいものとお酒を買い俺の部屋の前に着くと緊張が一気に押し寄せる。

「そんなに緊張するなって・・・とりあえず一緒にご飯食べよう。」

と優しい声で言った。
相変わらずセンスのいいインテリアで統一された空間と、生活感のないすっきりとした部屋に男らしさを感じてしまう。

(これは部屋に呼んだらどんな女でも落とせるな・・・)

ソファで隣同士に座って、仕事の話をしながらお酒を飲むと少しだけ緊張がほぐれた。


「お風呂先に入って来なよ」

「うん・・・」

瀬戸口の家でシャワーを浴びる自分などこの会社に入社したての自分が想像できただろうか・・・
自分のシャンプーや洗顔は一通り持ってきたが、なんとなくボディーソープは借りることにした。
瀬戸口は、シャンプーやボディーソープをそのまま使うのではなくオシャレなポンプに詰め替える派だった。
そのため、何のボディーソープを使用しているか分からなかったが、今日は瀬戸口と同じ香りに包まれたいと思ってしまう。
きっとこれからこの先、この香りと出会った時にこの夜ことを思い出すのだと思う。
それぐらい香りというの記憶に残るものだ。
瀬戸口が最初で最後の男だったとしても、そうでなかったとしても・・・


お風呂から上がり、ドライヤーを探したが引き出しを勝手に開けるのも気が引けたため瀬戸口にドライヤーを借りると変によそよそしくて、それが一層緊張感を高めていく。

(もうすぐ卒業するんだ・・・)

しばらくして、お風呂から上がった瀬戸口は白いTシャツに黒のスウェットで髪をタオルでゴシゴシしながら現れた。腕を上げているためおへそのあたりがちらりと見えた。
意外にも割れている腹筋と、濡れた髪。私が借りたボディーソープの匂い。
私の体からも同じ匂いがする。

(酔いそうだ・・・瀬戸口に・・・)


「じゃあ、寝ようか・・・・」

時刻は、夜の11時を指し寝室へ向かう瀬戸口の後ろを歩いた。今自分がどんな顔をしているのか恥ずかしくてみたくない。鼓動が早くなっていく。


(緊張する・・・)

間接照明を淡い光に変えて、ベッドに寝転がった瀬戸口の横に転がる。
この瞬間を瀬戸口は何回も経験してきたわけで、こんな風に全てに緊張する私を面倒くさいと思っているのだろうな・・・という不安が思わず言葉になってしまう。


「ごめんね・・・処女ってめんどくさいんでしょ?」
ボソッと独り言のように呟いた。

「なんで?どうして?」

「うん。なんかので見たの」
今日に至るまでに、漫画やブログ、恋愛についてのまとめた記事を読み込んだ。こうしたら男に嫌われるとか、こうした方がいいだとか・・・今となっては頭がパンクしてもう何が正解なのか分からない。


「そう言う変なネットの記事みたいなの真に受けんなって。俺は翠が処女でやった~~って思ったよ。
最初で最後の男になれるから・・・」

瀬戸口が私の頭を優しく撫でてそう言った。緊張が少し緩和された。

(瀬戸口に全部任せよう・・・)


誰にも邪魔されない二人だけの空間で、今まで一番長いキスをする。


瀬戸口は私の体に少しずつ触れていく。
微かな淡い光に染まる天井を見上げる。恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
しかし、恥ずかしなどと言っている余裕がないほどに自分の体が女になっていく。
触れられていく全てが熱を帯びる。キスが首筋、鎖骨、胸へと移っていく。

「かわいい・・・」
「綺麗だよ・・・」

そんな甘い言葉をかけられた私は溢れ出す声が抑えきれない。
よく「喘ぎ声」は女の演技だなんていうけれど、これは演技なんかじゃない。
全部全部、瀬戸口のせい・・・
どうしてこんなに私のことを知っているの??

とうとう、私の膣は瀬戸口の指を飲み込んだ。恥ずかしい音を立てながらかき乱されていく。
それが続くと、ビクビクと波打ち自分の知らない感覚に腰が浮く。


「大丈夫・・・?」
そう問いかける瀬戸口に、私は頷いた。
(本当は、大丈夫なんかじゃない。でも、やめて欲しくないの・・・)


「翠・・・愛してるよ・・・」

「うん・・・私も・・・」

ほぐされた私の中に、瀬戸口のものが入りゆっくりと動かしていく。
痛みを感じつつもそれが快楽に変わっていくのがわかる。

部屋中に響き渡るベッドの軋む音と、薄暗い照明の下で瀬戸口の引き締まって少し汗ばんだ体に必死にしがみつく。
次第に、瀬戸口も余裕がなくなっていくのがわかった。

(もう、息が苦しいよ・・・)
このまま離れてしまうのが惜しい。
息ができないほど苦しいのに、この甘い夢見たいな時間がずっと続けばいいなとさえ思う。

そうして、また果てていく・・・
その動きが止まった時に、ゴム越しに伝わる生暖かい感覚に瀬戸口も果てたことがわかった。


一度、止まりお互いに息を整えた後、抱きしめあって甘くて長いキスを交わす。

「初めてが瀬戸口でよかったよ・・・」

「ベッドの中でも苗字で呼ぶんだ。さみし~~~」

「ごめん・・・・あれ・・・下の名前なんだっけ」

「おいっ泰生だわ」

「ごめん。泰生・・・」

「うわ・・・呼び捨てキュンとする」

私を腕の中に引き寄せて腕枕をする。その暖かい腕の中にいつまでも抱かれていたい。






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