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Side 1ーOne way loveー
13(今泉翠)
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「翠ちゃん・・・・」
自宅の目の前まで来ると、高級車がハザードをつけて近くに止まっている。
私を呼ぶ声は杉原さんだった。自宅を教えたことないのに知っているのは少し怖い。
多分、後をつけてきたのだろう。そしてこれで自宅を知られてしまった。
私が、何も言えずにいると偶然にもお母さんが玄関に出てきた。
「翠・・・おかえり。あらその方は誰?」
杉原さんは、爽やかな笑顔で挨拶するとお母さんは満更でもない表情で「やだ~~翠、とっても素敵な彼氏さんじゃない!せっかくだから上がって。散らかってるけど」と嬉しそうに言う。
「いや、彼氏じゃ・・・」
私が否定すると「恥ずかしがらなくてもいいじゃない」というお母さん。
この偶然と言う名の修羅場をどうくぐりぬければいいのだろうか。
晩酌をしていたお父さんは居心地の悪そうにしているが、杉原さんはたくさんの方の接待をしているだけあってあの硬くて真面目なお父さんを上手にほぐしている。
お母さんは、こんな風にしっかりスーツを着こなし育ちの良さそうな、仕事のできそうな風貌にうっとり。
一人娘の私が嫁に行くには申し分のない人であることは十分にわかっている。
でも、この家族の歓迎ムードの空気をぶち壊す術は私にはない。
私が着替えをしている間に、お父さんは相当杉原さんのことを気に入り日付が変わる前に帰っていった。
「いいお父さんだね。今度の週末一緒にゴルフに行くことになったよ。じゃあ、また連絡するわ」
と爽やかな笑顔で颯爽と帰っていった。
杉原さん帰宅後も、両親の杉原さん絶賛トークが止まらない。
決して彼は私の彼氏ではない。
でも、恋と結婚は別物なのだろうか・・・
瀬戸口に抱いた恋心が現実を見ればまるで学生の恋のように思えたりする。
(私の好きな人は誰?私が結婚したい人は誰?何を信じればいい?)
お風呂に入り、ベッドに寝転がると瀬戸口から着信がきていた。
それに応答する気力は残っていない。
むしろ私も今日は後ろめたいことをした。恋愛感情のない男を家に上げて両親が婚約者だと思って盛り上がっている。相手は私に好意があって、結婚相手にはふさわしくて、ならいっそこの私の「処女」は結婚する相手にだけ捧げればいい。
そんな風に思ってしまった。
週末、約束通りお父さんは杉原さんとゴルフに行った。
私はそれを送り出した後、出勤する。
瀬戸口は、おそらく西木にどこまで話をしたのか聞いたのだろう。
私たちのギクシャクした様子を西木は楽しそうにみている気がする。
相変わらずの残業が終了すると、社内の電気は暗くて誰も残っていない。
私は体を伸ばして深呼吸すると、机の上にコーヒーが置かれた。
「幻滅した?」
私のデスクに軽く腰をかけてきまずそうに瀬戸口が問いかける。
「うん」
私は正直に答える。
瀬戸口は頭を抱えてため息をつく。
「俺、本当に覚えてなくて・・・西木のこととかも。」
「いや、そんなのありえないでしょ・・・普通、そういうことした人の顔って覚えてない?」
「覚えてないよ。いつも、翠の顔を浮かべてた。デートするときも抱く時も…今までの人は全部、翠の代わり。でも、俺だって男だし、そういう欲求はあるわけで、相手も俺とセックスしたいわけだから、ギブアンドテイクじゃん?」
パシンっと乾いた音がした。
こんな風に男の人の頬を殴るなんて昔の恋愛ドラマみたいだ。
前半の言葉は少し嬉しかった。でも、後半はムカついた。
「ばかじゃないの?少しでも好きになって損した。これまでの仕事は今まで通りだけれど、それ以外ではもう二度と私に関わらないで。」
「はあ?なにそれ俺が今までどんな思いで俺が片思いしてきたと思ってんの?」
瀬戸口はデスクの上に私を押し倒し私の両手を右手で強く押さえて身動きが取れないようにする。
もう片方の左手で顎を掴んで激しく舌を絡めてキスをする。
この瞬間を誰かに見られたら大問題なのに、瀬戸口はやめない。
抵抗をしても、瀬戸口の強い力には敵わない。
「やめて・・・お願い・・・・」
私の頬に伝う涙を見た瀬戸口は我に帰って行為をやめた。
私はすぐに乱れた服を着なおしてバッグを手に持った。
「大嫌い・・・・」
そういって私は会社を後にした。
自宅の目の前まで来ると、高級車がハザードをつけて近くに止まっている。
私を呼ぶ声は杉原さんだった。自宅を教えたことないのに知っているのは少し怖い。
多分、後をつけてきたのだろう。そしてこれで自宅を知られてしまった。
私が、何も言えずにいると偶然にもお母さんが玄関に出てきた。
「翠・・・おかえり。あらその方は誰?」
杉原さんは、爽やかな笑顔で挨拶するとお母さんは満更でもない表情で「やだ~~翠、とっても素敵な彼氏さんじゃない!せっかくだから上がって。散らかってるけど」と嬉しそうに言う。
「いや、彼氏じゃ・・・」
私が否定すると「恥ずかしがらなくてもいいじゃない」というお母さん。
この偶然と言う名の修羅場をどうくぐりぬければいいのだろうか。
晩酌をしていたお父さんは居心地の悪そうにしているが、杉原さんはたくさんの方の接待をしているだけあってあの硬くて真面目なお父さんを上手にほぐしている。
お母さんは、こんな風にしっかりスーツを着こなし育ちの良さそうな、仕事のできそうな風貌にうっとり。
一人娘の私が嫁に行くには申し分のない人であることは十分にわかっている。
でも、この家族の歓迎ムードの空気をぶち壊す術は私にはない。
私が着替えをしている間に、お父さんは相当杉原さんのことを気に入り日付が変わる前に帰っていった。
「いいお父さんだね。今度の週末一緒にゴルフに行くことになったよ。じゃあ、また連絡するわ」
と爽やかな笑顔で颯爽と帰っていった。
杉原さん帰宅後も、両親の杉原さん絶賛トークが止まらない。
決して彼は私の彼氏ではない。
でも、恋と結婚は別物なのだろうか・・・
瀬戸口に抱いた恋心が現実を見ればまるで学生の恋のように思えたりする。
(私の好きな人は誰?私が結婚したい人は誰?何を信じればいい?)
お風呂に入り、ベッドに寝転がると瀬戸口から着信がきていた。
それに応答する気力は残っていない。
むしろ私も今日は後ろめたいことをした。恋愛感情のない男を家に上げて両親が婚約者だと思って盛り上がっている。相手は私に好意があって、結婚相手にはふさわしくて、ならいっそこの私の「処女」は結婚する相手にだけ捧げればいい。
そんな風に思ってしまった。
週末、約束通りお父さんは杉原さんとゴルフに行った。
私はそれを送り出した後、出勤する。
瀬戸口は、おそらく西木にどこまで話をしたのか聞いたのだろう。
私たちのギクシャクした様子を西木は楽しそうにみている気がする。
相変わらずの残業が終了すると、社内の電気は暗くて誰も残っていない。
私は体を伸ばして深呼吸すると、机の上にコーヒーが置かれた。
「幻滅した?」
私のデスクに軽く腰をかけてきまずそうに瀬戸口が問いかける。
「うん」
私は正直に答える。
瀬戸口は頭を抱えてため息をつく。
「俺、本当に覚えてなくて・・・西木のこととかも。」
「いや、そんなのありえないでしょ・・・普通、そういうことした人の顔って覚えてない?」
「覚えてないよ。いつも、翠の顔を浮かべてた。デートするときも抱く時も…今までの人は全部、翠の代わり。でも、俺だって男だし、そういう欲求はあるわけで、相手も俺とセックスしたいわけだから、ギブアンドテイクじゃん?」
パシンっと乾いた音がした。
こんな風に男の人の頬を殴るなんて昔の恋愛ドラマみたいだ。
前半の言葉は少し嬉しかった。でも、後半はムカついた。
「ばかじゃないの?少しでも好きになって損した。これまでの仕事は今まで通りだけれど、それ以外ではもう二度と私に関わらないで。」
「はあ?なにそれ俺が今までどんな思いで俺が片思いしてきたと思ってんの?」
瀬戸口はデスクの上に私を押し倒し私の両手を右手で強く押さえて身動きが取れないようにする。
もう片方の左手で顎を掴んで激しく舌を絡めてキスをする。
この瞬間を誰かに見られたら大問題なのに、瀬戸口はやめない。
抵抗をしても、瀬戸口の強い力には敵わない。
「やめて・・・お願い・・・・」
私の頬に伝う涙を見た瀬戸口は我に帰って行為をやめた。
私はすぐに乱れた服を着なおしてバッグを手に持った。
「大嫌い・・・・」
そういって私は会社を後にした。
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