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Side 1ーOne way loveー

4(今泉翠)

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勇気を出して伝えた。


すぐに杉原さんの顔が見られなかった。
今まで読んできた漫画や小説なら「大丈夫だよ」とか「怖がらないで」とか「俺がはじめての男だね。俺が最後の男だから」なんて言ってくれて、処女を喜んでくれる人が大半だった。

しかし、しばらくしても返答がなく、杉原さんの表情を見る。

「いや、ありえないでしょ。28でしょ。それにそんな遊んでそうな感じで?翠ちゃんってそういう嘘平気でつく人なんだね。俺、嘘つく女が一番嫌いなんだよ。」

今まで見たことのない冷たい目で私をみた。
私は言葉を返せないまま、すぐに走り出した。足音が聞こえていたから多分追いかけてくれていたのだと思うけれど私はすぐに東京の人混みの中に紛れて振り返っても杉原さんの姿は見えなかった

「嘘なんてついてないのに」

(はい、終了。さようなら私の久しぶりの恋愛。)

私はそんなに悪いことをしたのでしょうか。それとも前世で何かやらかしたのでしょうか。
真夜中の公園でしゃがみこんだ。これ見よがしにイチャつくカップル達に反吐がでる。
とめどなく溢れる涙が、あの星を見た日に無言で家に送られて部屋に帰って涙が出た時と似ている。
空を見上げると星が一切出ていない東京の空に安心する。こんな時に星が綺麗だったらもっと虚しくなる。
なんだかんだで、あの日にみた星が忘れられなくて、あの日のこともずっと気にかかっている。
女としてどう対応するべきだったのか。
あの日に、処女を卒業していたら杉原さんが抱いてくれたかもしれないのに。



「誰かと思えば今泉じゃん。こんなところで何してんの?」
聞き覚えのある声に、目を向けると涙ぐむ私の表情で察したのか気さくに声をかけたことを後悔した顔をする瀬戸口が私と同じ目線にしゃがみこんだ。
相変わらず、無造作に伸びた髪の毛に個性的なメガネと、一日を終えたせいかアゴにはうっすらとヒゲが生えている。先ほどまで一緒にいた杉原さんとは正反対すぎる。
だいたいこういう時に声をかけられればその人に揺らぐものだけれど瀬戸口に限ってはない。
でも、こんな時にただ話を聞いてくれるだけの人が今必要だ。

「とりあえずさ、うん。どうしよう。飲みにでも行くか」

優しい声で言った瀬戸口は、うずくまっていた私の手を強引に引っ張っていく。その手は力強くてあたたかくて大きかった。
瀬戸口が偶然通りかかっていなかったらどうなっていただろう。
知らない男にのこのことついていったかもしれない。その偶然に私は感謝することになる。


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