5 / 47
Side 1ーOne way loveー
4(今泉翠)
しおりを挟む
勇気を出して伝えた。
すぐに杉原さんの顔が見られなかった。
今まで読んできた漫画や小説なら「大丈夫だよ」とか「怖がらないで」とか「俺がはじめての男だね。俺が最後の男だから」なんて言ってくれて、処女を喜んでくれる人が大半だった。
しかし、しばらくしても返答がなく、杉原さんの表情を見る。
「いや、ありえないでしょ。28でしょ。それにそんな遊んでそうな感じで?翠ちゃんってそういう嘘平気でつく人なんだね。俺、嘘つく女が一番嫌いなんだよ。」
今まで見たことのない冷たい目で私をみた。
私は言葉を返せないまま、すぐに走り出した。足音が聞こえていたから多分追いかけてくれていたのだと思うけれど私はすぐに東京の人混みの中に紛れて振り返っても杉原さんの姿は見えなかった
「嘘なんてついてないのに」
(はい、終了。さようなら私の久しぶりの恋愛。)
私はそんなに悪いことをしたのでしょうか。それとも前世で何かやらかしたのでしょうか。
真夜中の公園でしゃがみこんだ。これ見よがしにイチャつくカップル達に反吐がでる。
とめどなく溢れる涙が、あの星を見た日に無言で家に送られて部屋に帰って涙が出た時と似ている。
空を見上げると星が一切出ていない東京の空に安心する。こんな時に星が綺麗だったらもっと虚しくなる。
なんだかんだで、あの日にみた星が忘れられなくて、あの日のこともずっと気にかかっている。
女としてどう対応するべきだったのか。
あの日に、処女を卒業していたら杉原さんが抱いてくれたかもしれないのに。
「誰かと思えば今泉じゃん。こんなところで何してんの?」
聞き覚えのある声に、目を向けると涙ぐむ私の表情で察したのか気さくに声をかけたことを後悔した顔をする瀬戸口が私と同じ目線にしゃがみこんだ。
相変わらず、無造作に伸びた髪の毛に個性的なメガネと、一日を終えたせいかアゴにはうっすらとヒゲが生えている。先ほどまで一緒にいた杉原さんとは正反対すぎる。
だいたいこういう時に声をかけられればその人に揺らぐものだけれど瀬戸口に限ってはない。
でも、こんな時にただ話を聞いてくれるだけの人が今必要だ。
「とりあえずさ、うん。どうしよう。飲みにでも行くか」
優しい声で言った瀬戸口は、うずくまっていた私の手を強引に引っ張っていく。その手は力強くてあたたかくて大きかった。
瀬戸口が偶然通りかかっていなかったらどうなっていただろう。
知らない男にのこのことついていったかもしれない。その偶然に私は感謝することになる。
すぐに杉原さんの顔が見られなかった。
今まで読んできた漫画や小説なら「大丈夫だよ」とか「怖がらないで」とか「俺がはじめての男だね。俺が最後の男だから」なんて言ってくれて、処女を喜んでくれる人が大半だった。
しかし、しばらくしても返答がなく、杉原さんの表情を見る。
「いや、ありえないでしょ。28でしょ。それにそんな遊んでそうな感じで?翠ちゃんってそういう嘘平気でつく人なんだね。俺、嘘つく女が一番嫌いなんだよ。」
今まで見たことのない冷たい目で私をみた。
私は言葉を返せないまま、すぐに走り出した。足音が聞こえていたから多分追いかけてくれていたのだと思うけれど私はすぐに東京の人混みの中に紛れて振り返っても杉原さんの姿は見えなかった
「嘘なんてついてないのに」
(はい、終了。さようなら私の久しぶりの恋愛。)
私はそんなに悪いことをしたのでしょうか。それとも前世で何かやらかしたのでしょうか。
真夜中の公園でしゃがみこんだ。これ見よがしにイチャつくカップル達に反吐がでる。
とめどなく溢れる涙が、あの星を見た日に無言で家に送られて部屋に帰って涙が出た時と似ている。
空を見上げると星が一切出ていない東京の空に安心する。こんな時に星が綺麗だったらもっと虚しくなる。
なんだかんだで、あの日にみた星が忘れられなくて、あの日のこともずっと気にかかっている。
女としてどう対応するべきだったのか。
あの日に、処女を卒業していたら杉原さんが抱いてくれたかもしれないのに。
「誰かと思えば今泉じゃん。こんなところで何してんの?」
聞き覚えのある声に、目を向けると涙ぐむ私の表情で察したのか気さくに声をかけたことを後悔した顔をする瀬戸口が私と同じ目線にしゃがみこんだ。
相変わらず、無造作に伸びた髪の毛に個性的なメガネと、一日を終えたせいかアゴにはうっすらとヒゲが生えている。先ほどまで一緒にいた杉原さんとは正反対すぎる。
だいたいこういう時に声をかけられればその人に揺らぐものだけれど瀬戸口に限ってはない。
でも、こんな時にただ話を聞いてくれるだけの人が今必要だ。
「とりあえずさ、うん。どうしよう。飲みにでも行くか」
優しい声で言った瀬戸口は、うずくまっていた私の手を強引に引っ張っていく。その手は力強くてあたたかくて大きかった。
瀬戸口が偶然通りかかっていなかったらどうなっていただろう。
知らない男にのこのことついていったかもしれない。その偶然に私は感謝することになる。
0
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。
そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。
真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。
彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。
自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。
じれながらも二人の恋が動き出す──。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる