上 下
6 / 48
私はアイドル

5

しおりを挟む
次の日、何事もなかったかのように私に笑顔を振りまいて「かのんさん今日も綺麗ですね」とか言ってしまうこの子たちと同じ空気を吸うのが怖い。

母にも誰にも相談することなく、社長に「辞めたい」と言ったが、意外にも「だよね~」と笑顔で返答した。

「もう覚悟してたよ。さすがにJKと一緒じゃキツかったよね。実はさこのグループは色々あったから解散にして、また新しくグループ作ろうと思ってたんだよね。それに、最近のかのんはすっかりお姉さんになっちゃってあの頃の少女感がなくなってきてたわけ。本当は俺からかのんには言おうと思ってたんだけど、言い辛くてさ、かのんから言ってくれてよかったよ。で、他の事務所にいくの?」

(解散の危機の時は、土下座までして引き留めたくせに今は除け者ですか・・・私がどれだけこのグループに貢献したと思ってんだよ・・・)

「でも、かのんはタレント向いてないし、女優・・・演技力ないよね。ダンスは年齢的にきついだろうし、
背も特別高くないからモデルも無理だし、ソロで行くにも歌唱力はあるけど曲作れないでしょ?・・・もうしかして、AVとか・・・?それだけは本当に辞めて・・・」

私は、一言も言っていないのに一方的に話を進める社長に痺れを切らす。

「もう芸能の仕事はしません。」

「ああそう・・・そう・・・え、もしかして結婚するとか?」

「その予定もありません。そもそも恋愛禁止って言ってきたのは社長ですよね・・・」

「まあそうだね。」
変なタイミングの咳払いが腹立たしい。



「とりあえず、卒業に関しては了承した。今まで本当にありがとう。じゃあ、まあメンバーに報告と、ファンへの告知と、あと卒業ライブと生誕祭一緒にしちゃおう。ハコ抑えとくから。」

「分かりました。」

社長も人が変わってしまった。

一度、「付き合って欲しい」と言われて断ったあたりから特に。

彼は現在、42歳で私を女としてみていたことに気持ち悪さを覚えたのはつい数年前のこと。

(絶対、面倒だから一緒にしたよね・・・)

社長室を出ると、大きなため息をつく。

12歳からやってきたのに、終わりというのはこんなにもあっけないものだろうか・・・

卒業ライブまでは、少し時間があるのがモチベーションを低下させていく。

一刻も早く辞めてしまいたいが、そういうわけにもいかないのだ。

私に向けられる歓声。プレゼントや手紙の数。

私のチェキ購入・握手のための長蛇の列。これはメンバーの中で一番長い。

中には同じものを10個以上購入してくれる人もいるし、デビュー当時からライブに足を運んでくれている人もいる。



突然「嫌になったから辞めます。はい、さようなら」というわけにはいかないのだ。
モチベーションが低下しつつも、彼らのことを考えればレッスンを頑張れた。

ファンの力は偉大だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編

タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。 私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが…… 予定にはなかった大問題が起こってしまった。 本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。 15分あれば読めると思います。 この作品の続編あります♪ 『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』

処理中です...