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第26話 共和国の誕生
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アキラは八人のリーサル杖士を相手に、無傷で戦っていた。
確かに手強い八人だったものの、アキラはこの前の山での一件から、大人数を相手するときの戦い方を身につけていたのだ。四方八方が囲まれてしまうとどうしても負けてしまうため、あえて自分を壁に追い込んで、狭い視野で戦っていた。
一人の攻撃が当たりそうになったが、大ジャンプをしてどうにかよけた。
「リーサル杖士もそんなに大したことなさそうだな。練習不足じゃないのか?」
こうやって敵をあおるのもアキラの得意技だ。
敵は挑発にのって冷静さを失い、普段ならしないようなミスをしてしまう。
しかし、やはり不利なことには変わらなかった。
右の小柄な敵がフェイントをかけ、左から三人もの敵がそれぞれ別の攻撃を繰り出してくる。
かわしたつもりだったのだが、なんと胸をかすってしまった。
「しまった……」あまりの痛さに顔をしかめる。「やばいな……」
まさに命の危機が迫っていた。
クリスはとんでもないほどのスピードで、アジトまで帰還していた。
エルフは走るのがとても速く、体力もほぼ無限大だ。
「ランラン! シエナ! 大丈夫か!?」
「クリス! どうしたの?」
クリスはひとまず安心した。ランランに問題はなく、いつも通りだったからだ。
「この大陸が危険にさらされている」クリスが言った。「ジャックとアキラが危ない」
「アキラ……」シエナが泣きそうな声でつぶやく。「どこに行ったの?」
「二人の居場所はまったくわからない。ただ、スペイゴールの危機はそれだけじゃない。ユハ帝国も残っている」
「つまり、ユハ帝国を終わらせれば、アキラもジャックも見つかる、そう言いたいの?」ランランが目を丸くした。「それなら、まずは国の仲間を集めないと」
「そうだな。デイブレイク共和国の仲間を集めよう」
そうしてクリスは、共和国のリーダーとしての任務を果たそうと決心するのだった。
一方、ユハ帝国は完全な戦闘態勢に入っていた。
「リーサル杖士どもはどこに行った?」議長が聞いた。
「アキラを殺しに行きました。ドラゴンキラーも瞬殺したような連中です。あのアキラでも敵わないでしょう」と伝達係。
「ドラゴンキラーは役立たずだった。それと比べれば、リーサル杖士はまだましだ」
「これでデイブレイクのエース級戦力が消えました。そろそろ戦争をしかけますか?」
「待て」議長がとめた。「やつらに少しだけ時間の猶予を与えてやろう。こちらが勝つことは見えている。プライドも何もかも、粉々にしてやるのだ」
外では武装をした兵士たちが、デイブレイクのアジトがある南を向いて、きれいに整列していた。
「殺される前に、言いたいことがある!」
八人のリーサル杖士に痛めつけられ、殺される寸前のアキラは、どうにか時間を稼ごうと話し始めた。
「告白タイム! 俺がこの世で一番好きな食べ物といえばクリスのシチュー。オズ道場で訓練を受けていたときの俺のあだ名はあきちゃん。好きな女性はシエナ。でもまだデートに行けてないから、死ぬ前にどうしても行きたいと思ってる!」
八人は急に言い出したアキラの告白に、どういう反応をすればいいのかわからなくなっていた。こいつはアホか?とでも言いたげな目をしていた。
「だから、まだ殺さずに、俺がシエナとデートした後で殺されにくるってのはどうだ?」
鼻が大きくて背が低いリーサル杖士は、ゆっくりうなずいた。「それならいいかも」
「おい、ばかか」隣のリーサル杖士が注意する。「どうせ逃げるつもりだ」
「いやいや、俺は素直でルールを守るやつだ。だから頼む」
もちろんこれは時間稼ぎだった。
しかし、シエナのことが好きで、あのときできなかったデートがしたいというのは、当然ながら事実だった。
それに、少し前にシエナはアキラに好きだという気持ちを打ち明けている。もしかしたら、今後いい関係が気づけたりして、恋人同士になったり、夫婦になったりするのかもしれない。一番の条件は、この過酷な状況を生き延びられれば、ということだ。
そうやって時間稼ぎをしている間に、後ろからこっそりとジャックが迫ってくるのが見えた。
しかし、八人の敵には見えていない。影のように近づいていっている。
アキラは勝ちを確信した。「まあ、とにかく、俺を殺すことはできないってわけだ! じゃあな!」
そう叫び、困惑している八人が及ばない速さで杖を振りかぶった。
不意を突いた杖の一撃は、目の前にいた二人の敵に命中し、砂のように崩れていった。
そしてジャックも驚くほどの速さで魔法を呼び出し、残りの六人を炎と風のコンビネーション技で一掃した。
「わお、やるじゃん」アキラが褒める。
ジャックは何も答えなかった。いつもなら軽くうなずいたり、首をかしげたりするのだが、今のはなぜか反応が冷たいように感じた。
アキラはもう一つの異変にも気がついた。
「ジャック、後ろ!」
ジャックの後ろにはまだ倒していないリーサル杖士がいたのだ。
それも、一番最初に話した、体格のいい男だ。
アキラはすぐに杖の構えを取った。「まだ生きてたのか」
男は杖すら持っていない。「お前と戦う気はない。俺の名はエイダンだ」
「どういう風の吹き回しだ?」アキラが不審に思って聞く。
「俺様もこの八人は嫌いだった。消えてくれて嬉しいくらいだ。それに、俺様の目的は杖士を殺すことよりも、スペイゴールを支配することにある」
「何を言うんだ? スペイゴールはみんなのものだ。俺たちは大陸最大の共和国を作り、みんな平等で平和な社会を実現するのが目標だ。お前が一人で支配することは認めない」
「誰が一人だと言った?」
「どういう意味だ?」
ジャックが低い声でつぶやいた。「俺だ。俺がこの大陸を支配する」
「ジャック、どうした? こいつに洗脳でもされたのか?」
「これは俺の意志だ。俺にはこのスペイゴールを自由に支配するだけの力がある。それを使えば、帝国だの、共和国など気にせず、好きなようにできる」
「それは杖士の教えに反するぞ、ジャック!」アキラが強く首を振った。「自己中心的な考えは許されない」
「勘違いしないでほしいが、俺は自己中ではない。俺が支配すれば、さらによりよい社会になると言っている」
「スペイゴールをどうするつもりだ?」
「まずは魔王を地上に呼び起こし、悪の心を持つ者をすべて始末する。そし善の心を持った者たちだけで、新しい世界を作る」
少し前まで青く輝いていた空が急に曇りだし、周囲が一瞬のうちに暗くなった。
「どうかしてるぞ! ジャック、本当のお前はもっと――」
「本当の俺? 何がわかる? アキラ、俺が右腕を失ってから、どうして変わったのか知っているか!?」
雷が近くの木に落下し、とてつもない轟音を響かせる。
「……」
「世の中に対する憎しみと怒り、そして正義が、俺を変えた」
「怒りや憎しみからは何も生まれない。ただ悪が生まれるだけだ」
「違う! 憎しみは力になる! 普段感情を表さない本当の理由を知りたいか!?」
「ジャック……どうして……」
「なぜ俺が黒魔術を使えると思う!?」
「それは……」
「常に憎しみを抱えて生きているからだ! 世の中の悪が憎い! 俺の腕を奪ったやつが憎い! 闇の魔術を引き出せるのも、その怒りや憎しみが、俺を動かしていたからだ!」
「悪というのは単に正義の裏返しじゃないぞ、ジャック! 誰にでも悪は潜んでいるんだ。大事なのは、それをうまくコントロールすること! 実際、今お前がしようとしていることは、お前がお前の中の悪に負けた結果なんだ!」
ジャックは黙り込んだ。
「残念だが、アキラ」エイダンが同情するように言う。「ジャックはもうすでにこちらの人間になったようだな」
「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」クリスが大声で言った。「もうすぐユハ帝国との戦争が始まる! この戦争に勝つことができれば、もう二度と戦争することはない! スペイゴールに平和が訪れる!」
たくさんの兵士たちの歓声が上がった。
アジトの前に集められた兵士たちは、皆がデイブレイクの建国に賛成し、ユハ帝国を滅ぼすという目標のもとで団結していた。
ゲチハデ王国からの大量のゴブリン兵たちや、ナスカ街の人間兵たち、闘技場でともに戦った兵士たちもいる。それに加え、なんとエルフの街から、大勢のエルフの援軍が駆けつけてきた。デストロイヤーのメンバーも、引退したはずだったが今回は武装をして戦いを待っている。
「いよいよね」エリスが言った。「ユハ帝国にぎゃふんと言わせてやるわ」
「その意気だ! 僕、クリスはここに宣言する! デイブレイク共和国は無敵だ!」
「無敵だ!」兵士たちが叫ぶ。
「スペイゴールの救世主!」
「救世主!」
「より平和な社会を!」
「平和な社会を!」
クリスは満足そうだ。
ランランはというと、クリスの隣で幸せそうに立っている。
しかしシエナはアキラたちが心配だった。「アキラとジャックがいないと、この戦争には勝てないわ」小声でクリスにつぶやく。
「でも、そんなことは言えない。みんなやる気になっている」クリスも小声で返す。
「私、二人を捜してくるわ」
「だめだ。ただでさえ人手が足りないっていうのに、シエナまでいなかったら大変なことになる」
「でも、アキラたちがいないと――」
「二人なら大丈夫」ランランが言った。「あたし、二人を信じてる。これまでもこれからもずっと」
「そうしたいのも山々だけど……」シエナはまだ不安そうだ。
「よし、諸君! ユハ帝国の軍が北の彼方に見えた! 領土まで侵攻されないよう、北へ全身だ!」
「ラジャー!」
デイブレイク共和国の寄せ集め軍団は、スペイゴール最大の帝国であるユハ帝国に挑もうとしていた。
★ ★ ★
~作者のコメント~
いよいよユハ帝国との戦争が始まりましたね!
なんですって!? そんなことより、ジャックのことが気になる?
今回もジャックに焦点が当たっています。実はタイトルにある「リミッター外して」という言葉は、チームのことだけでなく、ジャック自身のことでもあるんです。
作中最強クラスの実力者ですから、スペイゴールを支配できると思っているんですよね。
この話を通して、世の中の悪と正義について深く考えていただけると嬉しいです。
確かに手強い八人だったものの、アキラはこの前の山での一件から、大人数を相手するときの戦い方を身につけていたのだ。四方八方が囲まれてしまうとどうしても負けてしまうため、あえて自分を壁に追い込んで、狭い視野で戦っていた。
一人の攻撃が当たりそうになったが、大ジャンプをしてどうにかよけた。
「リーサル杖士もそんなに大したことなさそうだな。練習不足じゃないのか?」
こうやって敵をあおるのもアキラの得意技だ。
敵は挑発にのって冷静さを失い、普段ならしないようなミスをしてしまう。
しかし、やはり不利なことには変わらなかった。
右の小柄な敵がフェイントをかけ、左から三人もの敵がそれぞれ別の攻撃を繰り出してくる。
かわしたつもりだったのだが、なんと胸をかすってしまった。
「しまった……」あまりの痛さに顔をしかめる。「やばいな……」
まさに命の危機が迫っていた。
クリスはとんでもないほどのスピードで、アジトまで帰還していた。
エルフは走るのがとても速く、体力もほぼ無限大だ。
「ランラン! シエナ! 大丈夫か!?」
「クリス! どうしたの?」
クリスはひとまず安心した。ランランに問題はなく、いつも通りだったからだ。
「この大陸が危険にさらされている」クリスが言った。「ジャックとアキラが危ない」
「アキラ……」シエナが泣きそうな声でつぶやく。「どこに行ったの?」
「二人の居場所はまったくわからない。ただ、スペイゴールの危機はそれだけじゃない。ユハ帝国も残っている」
「つまり、ユハ帝国を終わらせれば、アキラもジャックも見つかる、そう言いたいの?」ランランが目を丸くした。「それなら、まずは国の仲間を集めないと」
「そうだな。デイブレイク共和国の仲間を集めよう」
そうしてクリスは、共和国のリーダーとしての任務を果たそうと決心するのだった。
一方、ユハ帝国は完全な戦闘態勢に入っていた。
「リーサル杖士どもはどこに行った?」議長が聞いた。
「アキラを殺しに行きました。ドラゴンキラーも瞬殺したような連中です。あのアキラでも敵わないでしょう」と伝達係。
「ドラゴンキラーは役立たずだった。それと比べれば、リーサル杖士はまだましだ」
「これでデイブレイクのエース級戦力が消えました。そろそろ戦争をしかけますか?」
「待て」議長がとめた。「やつらに少しだけ時間の猶予を与えてやろう。こちらが勝つことは見えている。プライドも何もかも、粉々にしてやるのだ」
外では武装をした兵士たちが、デイブレイクのアジトがある南を向いて、きれいに整列していた。
「殺される前に、言いたいことがある!」
八人のリーサル杖士に痛めつけられ、殺される寸前のアキラは、どうにか時間を稼ごうと話し始めた。
「告白タイム! 俺がこの世で一番好きな食べ物といえばクリスのシチュー。オズ道場で訓練を受けていたときの俺のあだ名はあきちゃん。好きな女性はシエナ。でもまだデートに行けてないから、死ぬ前にどうしても行きたいと思ってる!」
八人は急に言い出したアキラの告白に、どういう反応をすればいいのかわからなくなっていた。こいつはアホか?とでも言いたげな目をしていた。
「だから、まだ殺さずに、俺がシエナとデートした後で殺されにくるってのはどうだ?」
鼻が大きくて背が低いリーサル杖士は、ゆっくりうなずいた。「それならいいかも」
「おい、ばかか」隣のリーサル杖士が注意する。「どうせ逃げるつもりだ」
「いやいや、俺は素直でルールを守るやつだ。だから頼む」
もちろんこれは時間稼ぎだった。
しかし、シエナのことが好きで、あのときできなかったデートがしたいというのは、当然ながら事実だった。
それに、少し前にシエナはアキラに好きだという気持ちを打ち明けている。もしかしたら、今後いい関係が気づけたりして、恋人同士になったり、夫婦になったりするのかもしれない。一番の条件は、この過酷な状況を生き延びられれば、ということだ。
そうやって時間稼ぎをしている間に、後ろからこっそりとジャックが迫ってくるのが見えた。
しかし、八人の敵には見えていない。影のように近づいていっている。
アキラは勝ちを確信した。「まあ、とにかく、俺を殺すことはできないってわけだ! じゃあな!」
そう叫び、困惑している八人が及ばない速さで杖を振りかぶった。
不意を突いた杖の一撃は、目の前にいた二人の敵に命中し、砂のように崩れていった。
そしてジャックも驚くほどの速さで魔法を呼び出し、残りの六人を炎と風のコンビネーション技で一掃した。
「わお、やるじゃん」アキラが褒める。
ジャックは何も答えなかった。いつもなら軽くうなずいたり、首をかしげたりするのだが、今のはなぜか反応が冷たいように感じた。
アキラはもう一つの異変にも気がついた。
「ジャック、後ろ!」
ジャックの後ろにはまだ倒していないリーサル杖士がいたのだ。
それも、一番最初に話した、体格のいい男だ。
アキラはすぐに杖の構えを取った。「まだ生きてたのか」
男は杖すら持っていない。「お前と戦う気はない。俺の名はエイダンだ」
「どういう風の吹き回しだ?」アキラが不審に思って聞く。
「俺様もこの八人は嫌いだった。消えてくれて嬉しいくらいだ。それに、俺様の目的は杖士を殺すことよりも、スペイゴールを支配することにある」
「何を言うんだ? スペイゴールはみんなのものだ。俺たちは大陸最大の共和国を作り、みんな平等で平和な社会を実現するのが目標だ。お前が一人で支配することは認めない」
「誰が一人だと言った?」
「どういう意味だ?」
ジャックが低い声でつぶやいた。「俺だ。俺がこの大陸を支配する」
「ジャック、どうした? こいつに洗脳でもされたのか?」
「これは俺の意志だ。俺にはこのスペイゴールを自由に支配するだけの力がある。それを使えば、帝国だの、共和国など気にせず、好きなようにできる」
「それは杖士の教えに反するぞ、ジャック!」アキラが強く首を振った。「自己中心的な考えは許されない」
「勘違いしないでほしいが、俺は自己中ではない。俺が支配すれば、さらによりよい社会になると言っている」
「スペイゴールをどうするつもりだ?」
「まずは魔王を地上に呼び起こし、悪の心を持つ者をすべて始末する。そし善の心を持った者たちだけで、新しい世界を作る」
少し前まで青く輝いていた空が急に曇りだし、周囲が一瞬のうちに暗くなった。
「どうかしてるぞ! ジャック、本当のお前はもっと――」
「本当の俺? 何がわかる? アキラ、俺が右腕を失ってから、どうして変わったのか知っているか!?」
雷が近くの木に落下し、とてつもない轟音を響かせる。
「……」
「世の中に対する憎しみと怒り、そして正義が、俺を変えた」
「怒りや憎しみからは何も生まれない。ただ悪が生まれるだけだ」
「違う! 憎しみは力になる! 普段感情を表さない本当の理由を知りたいか!?」
「ジャック……どうして……」
「なぜ俺が黒魔術を使えると思う!?」
「それは……」
「常に憎しみを抱えて生きているからだ! 世の中の悪が憎い! 俺の腕を奪ったやつが憎い! 闇の魔術を引き出せるのも、その怒りや憎しみが、俺を動かしていたからだ!」
「悪というのは単に正義の裏返しじゃないぞ、ジャック! 誰にでも悪は潜んでいるんだ。大事なのは、それをうまくコントロールすること! 実際、今お前がしようとしていることは、お前がお前の中の悪に負けた結果なんだ!」
ジャックは黙り込んだ。
「残念だが、アキラ」エイダンが同情するように言う。「ジャックはもうすでにこちらの人間になったようだな」
「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」クリスが大声で言った。「もうすぐユハ帝国との戦争が始まる! この戦争に勝つことができれば、もう二度と戦争することはない! スペイゴールに平和が訪れる!」
たくさんの兵士たちの歓声が上がった。
アジトの前に集められた兵士たちは、皆がデイブレイクの建国に賛成し、ユハ帝国を滅ぼすという目標のもとで団結していた。
ゲチハデ王国からの大量のゴブリン兵たちや、ナスカ街の人間兵たち、闘技場でともに戦った兵士たちもいる。それに加え、なんとエルフの街から、大勢のエルフの援軍が駆けつけてきた。デストロイヤーのメンバーも、引退したはずだったが今回は武装をして戦いを待っている。
「いよいよね」エリスが言った。「ユハ帝国にぎゃふんと言わせてやるわ」
「その意気だ! 僕、クリスはここに宣言する! デイブレイク共和国は無敵だ!」
「無敵だ!」兵士たちが叫ぶ。
「スペイゴールの救世主!」
「救世主!」
「より平和な社会を!」
「平和な社会を!」
クリスは満足そうだ。
ランランはというと、クリスの隣で幸せそうに立っている。
しかしシエナはアキラたちが心配だった。「アキラとジャックがいないと、この戦争には勝てないわ」小声でクリスにつぶやく。
「でも、そんなことは言えない。みんなやる気になっている」クリスも小声で返す。
「私、二人を捜してくるわ」
「だめだ。ただでさえ人手が足りないっていうのに、シエナまでいなかったら大変なことになる」
「でも、アキラたちがいないと――」
「二人なら大丈夫」ランランが言った。「あたし、二人を信じてる。これまでもこれからもずっと」
「そうしたいのも山々だけど……」シエナはまだ不安そうだ。
「よし、諸君! ユハ帝国の軍が北の彼方に見えた! 領土まで侵攻されないよう、北へ全身だ!」
「ラジャー!」
デイブレイク共和国の寄せ集め軍団は、スペイゴール最大の帝国であるユハ帝国に挑もうとしていた。
★ ★ ★
~作者のコメント~
いよいよユハ帝国との戦争が始まりましたね!
なんですって!? そんなことより、ジャックのことが気になる?
今回もジャックに焦点が当たっています。実はタイトルにある「リミッター外して」という言葉は、チームのことだけでなく、ジャック自身のことでもあるんです。
作中最強クラスの実力者ですから、スペイゴールを支配できると思っているんですよね。
この話を通して、世の中の悪と正義について深く考えていただけると嬉しいです。
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