【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命

文字の大きさ
上 下
20 / 32

第20話 大きな脅威

しおりを挟む
 シエナは午前中ずっとドキドキしていた。
 今日はアキラと「お試しデート」ということで、街のレストランにて夕食をともにするのだ。

 ずっと心が落ち着かず、図書館で借りていた恋愛関連の本をひたすら読んで午前中をすごしていた。

 そもそも、なぜ二人はデートをすることになったのか。それは昨日の昼にさかのぼる。



「みんな! いいニュースだ!」朝から出かけていたアキラが、満面の笑みで帰ってきた。

「どーしたの?」ランランが聞く。

 アキラ以外の四人は、アジトの中で何かしら好きなことをしていた。

「それがな、なんと高級レストラン『ヴィーナス』のチケットが手に入ったんだ!」アキラが嬉しそうに答えた。「たまたま前を通りかかったら、店の人がくれたんだ」

「それは運がいいな」クリスが言う。「どんな手を使ったんだ?」

「おいおい、俺はズルなんてしてないぞ。店の人は俺が闘技場で戦ったときの観客で、ファンだからくれたってわけよ」

「なるほどね、それは自慢?」とランラン。

「まあ、そうなるな」アキラがうなずいた。「だが、二人分しかない。残念だけど、俺と誰か一人で行くことになるな」

 ランランが飛び跳ねた。「え、あたし、行きたい! あそこ、ずっと行ってみたかったんだよね」

「そう焦るな」アキラが言う。「ランランの他に行きたい人は? いないなら明日の午後にランランと行ってくるけど――」

 クリスが咳払いをした。「ランラン、少しばかり考えて、それでも本当に――」

「あ、そっか」ランランはクリスのおかげで何かを察したらしい。「ごめん、やっぱ行けないや」

 シエナはさっきからずっともじもじしている。

「ジャック、一緒に行くか?」アキラがジャックを見る。「スペイゴールで唯一の三つ星レストランだぞ。スペイゴールの書にも載ってたじゃん」

「俺はそんなに察しの悪い男ではない」ジャックは魔術の本から目を離さない。「シエナと行け」

「どういうことだ?」アキラは本当に意味がわかっていないようだった。「高級レストランなんだぞ! クリスは行きたくないのか?」

「僕も遠慮しとくよ」クリスは苦笑いで首を横に振った。

「ふーん。いいんだ? じゃあ、シエナと楽しんでこようかな。ていうか、シエナまで行きたくないとか言い出さないよな?」

「私行きたい」シエナは顔が赤い。「その……それはつまり……デート、だよね?」

「え!?」アキラが驚いた。「確かに! それは考えてなかった。もし嫌なら――」

「ううん、行きたいって行ったでしょ。それに、ずっと……その……アキラとデートに行きたいと思ってたから」なんだか恥ずかしくて、声がだんだん小さくなっていった。

「そうか。じゃあ、お試しデートだな」アキラが言う。「よし! シエナに好きになってもらえるように頑張るぞ、俺!」

 もうとっくに好きなんだけど。シエナはそう言えなかった。

 他の三人はというと、アキラがなぜこんなにアホなのかを考えていた。



 こういうわけで、今日、街のシンボルでもある大きな金色の鐘が鳴るころには、夕食デートが始まっている。

 ちなみに、鐘は朝方に一回、真昼に一回、夕方に一回、夜中に一回鳴っている。夕食は基本、夕方の鐘で始まる家庭が多いようだ。しかし、アジトは街から少し距離があるため、鐘の音があまり聞こえない。そのため、鐘が鳴る前までにレストランにいることが大切だ。

 シエナはまだまだ昼の段階で、待ちきれなくなって街に出ていった。

「シエナ、すごく楽しみにしてるみたいだな」アジトでは、早く出ていったシエナを見て、クリスが微笑んでいた。

「だって、好きな相手と食事なんだよ! それは待ちきれないよ!」ランランが言う。

「アキラのやつ、鈍感レベルがますますひどくなってる」ジャックがつぶやいた。「呆れるくらいだ」

「もうとっくに呆れてるさ。今日気づくといいんだけど」

「ていうか、本人はどこ? アキラも街に行ったの?」ランランが聞く。「いつの間にか出ていっちゃった」

「アキラは仕事だ。俺にも内容は教えてくれなかった」

「ジャックにも言わないなんて、何かあったのかな? そもそも仕事って何?」

「さあな。建国事業のことかもしれない」

「それは嬉しいな」クリスが言った。「このペースだと、最終的な目標達成まで十年はかかりそうだから」

「俺はこのペースでも構わない」

「いや、せめて五年にしてくれ」



 アキラは杖士ブレイカーの道場である、オズ道場に訪れていた。

 オズ道場は広大で、一つの都市といっても過言ではない。石造りのきれいな建物が、次から次に並んでいる。
 しかし、そこで暮らしている訓練生や先生は少なく、訓練に特化した場所だ。広い土地、そして街で戦うことも訓練のカリキュラムに入っている。

 オズ道場はアジトからも街からもかなり離れていて、歩いていたら丸一日はかかる。しかし、ヤコンに乗って移動することで二時間ほどで着いた。

「カリス師匠」アキラが細い金色の目をした中年の男に話しかけた。「お呼びでしょうか?」

 アキラの師匠であり、杖術じょうじゅつのスペイゴール大会で優勝経験もあるカリスは、アキラの言葉に深くうなずいた。

「年末でもないのにお呼びだなんて、何事です?」アキラが丁寧な口調で聞いた。

「大変なことになった」カリスが言う。「ドラゴンキラーという男だ。お前も戦ったことがあるだろう?」

「ええ、闘技場で。俺、大ファンなんですよ。あれ? 『お前も』……てことは、師匠も戦ったんですか?」

「実に手強い相手だ」カリスの表情は暗かった。「明らかに一流の剣術の訓練を受けている」

「あの剣術はどこで身につけたのでしょうか? そんじょそこらの訓練所や道場では、教えてもらえません」

「アキラ……お前も感じているだろう……リーサル杖士ブレイカーだ」

「リーサル杖士ブレイカー!?」

「あまり大きな声で言うな」カリスがとめる。「子どもたちが聞いてしまったらどうする?」

「おっと。すみません」

「リーサル杖士ブレイカーは長年この大陸から姿を消していた。しかし……あの剣術の腕前は明らかにリーサルの手ほどきを受けている。ジーノにも相談したが、信じてはもらえなかった」

「なぜです? あの偉大なジーノですよ!」

 カリスが大きなため息をついた。「偉大すぎるくらいだ。信じてもらえないのも仕方がない。そもそも、ジーノがリーサル杖士ブレイカーらを滅ぼしたのだからな」

 二人の会話の中心となっている『リーサル杖士ブレイカー』というのは、残酷で、命を奪うため、自分の楽しみのためだけに杖・魔力を使う杖士ブレイカーたちのことだ。彼らは特殊な訓練を受け、より残酷に、より残虐に育てられる。
 ドラゴンキラーは杖を使わないのだが、その高い腕前や戦い方から、リーサル杖士ブレイカーたちから手ほどきを受けたのでは、と疑われているわけだ。

「まだ生き残りがいたようですね」アキラが言った。「手がかりはありませんか?」

「残念だが、ドラゴンキラーだけが唯一の頼りだ。やつと戦い、情報を聞き出せ。アキラとこうして話したことで、リーサル杖士ブレイカーはいると確信した。私は道場を離れられない。しかし、今自由なアキラなら、戦えるはずだ」

「わかりました。しかし、なんでジャックを呼ばなかったんです? ていうか、デイブレイクみんな呼べばいいじゃないですか?」

「ジャックには後で別の依頼がある」カリスが説明する。「他のメンバーに関しては、私が頼むことではない。弟子であるアキラとジャックに頼みたいのだ」

 アキラは力強くうなずいた。「了解です、師匠。ドラゴンキラーはどこです?」

「それがだな、アキラ。申し訳ないのだが、ユハ帝国に行ってもらわなくてはならないようだ」



 一方、シエナはレストラン『ヴィーナス』に早く着いたようだ。
 こうして鐘が鳴るまでアキラを待っている。
 
「アキラ、まだなの?」

 シエナは夕方の鐘が鳴っても、アキラを待ち続けていた。



★ ★ ★



 ~作者のコメント~
 今回はやっと、シエナとアキラがデートしてくれる(闘技場でのことはデートではない)ということで、盛り上がった方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、アキラが遠い道場で、さらに遠いところへの任務を与えられるという展開に。
 シエナとの約束、忘れないで!
 しかし、彼らに迫る脅威も忘れてはなりません。
 緩めのスローライフの中にあるシリアスな脅威にも注目です!!
 シーズン3もよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり

竹井ゴールド
ファンタジー
 森の中で突然、仲間に追放だと言われた治癒師は更に、 「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」  と殺されそうになる。  だが、【痛いの痛いの飛んでけぇ〜】には【無詠唱】、【怪我移植(移植後は自然回復のみ)】、【発動予約】等々の能力があり······· 【2023/1/3、出版申請、2023/2/3、慰めメール】

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...