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オスカーの帰郷編

その63 魔神とダークエルフ☆

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西園寺さいおんじオスカーを殺せ」

 まだ昼間なのにも関わらず闇に包まれる〈破滅の森〉で。
 どこか気取ったようにも聞こえる冷酷な声が轟いた。

 その声は森全体に響き渡り、陰に身を潜める邪悪な魔物達の神経を刺激する。この森で、西園寺オスカーという人間ヒューマンを知らない者はいない。

「絶好の機会チャンスだ。勇者学園に囚われているうちは、接近すらできない。今、この瞬間こそ、奴を仕留めるこの上ないチャンスと言っている」

 こう熱弁するのは、魔神デビゴッドの男。

 つい最近、〈破滅の森〉の盟主となった高位存在だ。

 森に差し込む僅かな光を反射する真っ白な肌に、全てが緋色に染まった目。肌の白さとは対照的に、闇を引き寄せる漆黒の髪。前髪は短めに整えているが、後ろ髪は腰にかかるまで伸ばしていた。
 長身で姿勢が良く、邪悪なオーラを放っておきながらも、多くの人の目を惹きつけてしまうほどの色気オーラの持ち主だ。

「しかし、タナトス様……西園寺オスカーは我々ダークエルフの手に負えるような人間ではありません。あの者に戦いを挑むほど、我が種族ダークエルフは愚かではありませぬぞ」

 魔神デビゴッドの男、タナトスにおずおずと意見したのは、ダークエルフの将軍シュテルベンだった。

「恐れるでない。私が貴殿らに力を貸そう。ああ、貸すとも。いくらでも貸してやろう。魔王セトを倒せし人間ヒューマン、実に興味深い」

 言葉を発するたびに興奮を抑えられなくなるタナトス。

 彼がオスカーの存在を知ったのは少し前だ。
 魔王セトを倒したという謎の少年。その脅威に胸を躍らせるタナトスは、そんな少年の原点であるという〈破滅の森〉へとやってきて、瞬く間に蹂躙した。

 今ではこの森で、彼に逆らえる魔物などいない。

「タナトス様……なんたる光栄……」

「今すぐ仲間を連れてこい。時間は限られている」

「承知致しました……我が君」

 シュテルベンは片膝をつき、盟主タナトスに最大の敬意を示した。

 タナトスはそんなシュテルベンの様子など見ていない。彼の関心は全て、西園寺オスカーに注がれている。
 血走った真っ赤な目を薄気味悪く光らせ、小さく呟く。

「西園寺オスカー……知っているか? 貴殿の倒した新米魔王セトは、まだ魔能スキル覚醒・・していなかった、ということを」
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