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最強の中二病編
その15 成り行きでできた敵対関係☆
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「西園寺オスカーさんは、私に匹敵するほどの膨大な魔力を誇っています」
生徒会室で行われている〈守護者会議〉。
生徒会長のアリアが放った一言に、残りの四人全員が黙り込んだ。
エイダンがそんなのあり得ないと怒鳴り散らすこともない。
ガブリエルが論理的に質問を繰り出すこともない。
ルーナが冗談はよしてと笑って流すこともない。
そして、副会長の白竜アレクサンダーはというと。
なぜか自慢げに頷いていた。
アリアは魔眼を持っている。
それが決定打だ。
彼女の魔眼が西園寺オスカーの秘めている魔力を見抜いたのなら、それがいくら突拍子のないことだったとしても事実である。
「本人と話をしてみましたが、おそらく本人も自分の魔力の大きさを自覚していると思われます。実際、ここ二週間生徒会の監視がついていることにも気づいていました」
「待てよ、二週間あいつを監視してたってのか!? 俺様は聞いてねぇぞ!」
「吾輩も初耳だ……」
「ワタシにも教えて欲しかったわ」
ここで黙っていた三人が一斉に口を開く。
生徒会長アリアは学園で人気の存在である。
それは生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の中でも同様だ。ガブリエルは密かに彼女に対して友情以外の好意を持っているし、エイダンは対抗心を燃やし、ルーナは彼女を一番の親友だと思っている。
穏やかで寛容。
それでいてリーダーシップがあり、頭も切れ、実技においても学年トップの高い実力を誇っている。同じ人間として、勇者候補として、尊敬できる人格の持ち主だ。
「こうなるから言わなかったのさ」
また騒がしくなった三人に対して、副会長が笑いながら言った。
「おい! おめぇは知ってたのかよ!」
「まぁね。ボクは副会長だから」
「この野郎! 俺様とやり合いてぇのか!!」
エイダンが椅子から立ち上がり、アレクサンダーに怒鳴る。
アレクサンダーはというと、余裕の表情で微笑んでいるだけだ。
それを見てさらに苛立ったエイダン。
彼の胸ぐらを乱暴につかみ、思いきり睨みつける。大柄なエイダンと、小柄なアレクサンダー。
「阿呆、無謀な戦いはやめておけ。貴様ごときがアレクサンダーに敵うはずがない」
エイダンを止めたのはガブリエルだった。
軽蔑するような視線を投げている。
「その者の強さは貴様もよく理解しているだろう」
「ちぇっ」
少し冷静になったエイダンは、舌打ちをしてアレクサンダーから手を離した。
「私は不確定で個人的なことに三人を巻き込みたくないと考えただけです。アレクは私が言う前から気づいていました。もし不快な気持ちにさせてしまったのなら、謝罪致します」
「まあまあ、アリア君が気にすることでもないさ。とにかく、だ。実はボクも少し前から西園寺オスカー君のことが気になっていてね。ついさっき、彼の決闘を観戦してきたよ」
アリアが何か発言すると、他の三人がうるさくなる。
それをよく理解しているアレクサンダーは、自分で会議を進行することにした。副会長という立場だけではなく、純粋な実力という面でも抜きん出ている彼は、この実力者の集団をまとめるのに必要不可欠な存在である。
両手を頭の後ろで組みながら、リラックスして話を続けるのだった。
「あれは凄かったなぁ。剣術の決闘なのに、剣を放り投げて素手で一撃! あまりの威力に闘技場の壁が半壊! 久しぶりにあんな面白いものを観たよ」
「膨大な魔力を持ちながら、白兵戦も得意ということかしら。ますます興味が湧いてきたわ」
オスカーVSグレイソンの決闘をこっそり見ていたアレクサンダーの言葉に、前のめりになっているルーナが興奮して声を上げる。
「エイダン君、彼はきみに匹敵するかそれ以上の怪力の持ち主だよ。魔力もヤバいみたいだし、それでいて剣術も優れている。構えを見れば一目瞭然だね」
「おめぇ調子乗ってんじゃねぇぞ」
「ごめんごめん。まあ、ブチ切れリンゴ潰し大会があれば、筋肉ゴリラのきみが圧勝するだろうね」
エイダン以外の全員が笑った。
アリアでさえも、控えめではあるが笑っている。
ゴリラの顔が怒りで赤くなった。
「あとでぶっ殺してやる」
「それは怖いなー。覚悟しとくよ。それでさっきの話の続きだけど――」
脅しを適当に流して次の話に移るアレクサンダー。
「――正直に言うと、このボクでも西園寺オスカー君に勝てるかわからない。もしあの決闘が彼の本気なら、まだボク達の方が実力は上だろう。でも、ボクには彼が本気のようには見えなかった。あれでも相当加減してるっぽいね」
「吾輩は実際にその決闘を見ていないから聞くが、その後対戦相手はどうなった?」
「それが、死んでしまったんだ……」
深刻そうに下を向くアレクサンダー。
その様子を見ても、誰も何も反応しなかった。
「いやはや、少し不謹慎な冗談だったかもしれないな、悪い。実際は優秀な西園寺オスカー君が治癒魔術で傷を全て癒やしていたよ。骨も折れて、内臓もいくつか破裂していたと思うんだけどねぇ。それを一瞬で治したわけさ。勇者候補なのに魔術まで使えるとはね。それに、治癒魔術は選ばれし者しか使えないらしいし」
「「「「……」」」」
これには他の四人も唖然としている。
アレクサンダーが口にした通り、治療魔術は限られた才能ある者にしか使えない。それも、内臓や骨まで治癒してしまうほどのレベルは上級魔術師でも難しい。
実際、オスカーが使用したのは治癒魔術でなく使い勝手の悪い神能だが、そんなことを彼らは知る由もない。
西園寺オスカーという規格外な少年に、どう対応していけばいいのか。
生徒会としては、どう対処することが正しいのか。その判断は幹部であるこの五人に委ねられている。
アリアは悔しかった。
人生で初めての告白をして、呆気なく振られてしまったことが。
エイダンは許せなかった。
アリアがその実力を認めるような生徒が、これまで一切目立たずにその実力を隠していたことが。
そしてガブリエルは気に食わなかった。
急に出てきた一年生が、麗しのアリアに告白されたことが。そしてそれを容赦なく振ったことが。
ルーナは興味が湧いた。
今まで男っ気のなかったアリアの心を奪った、西園寺オスカーという少年に。
それから、アレクサンダーは。
新たに登場した最強の新入生の存在に翻弄されている、自分達生徒会の状況が面白くてたまらなかった。
「よし、それじゃあ多数決を採ろう!」
元気な声で副会長が言う。
「ミステリアスで独特な西園寺オスカー君と敵対し、規格外な彼の存在を学園から排除する、もしくは、超強くてかっこいい西園寺オスカー君と協力関係を築き、彼の存在を学園の希望として推していく」
満足げな表情だ。
「少しお待ちください、アレク。敵対するといっても、そこまでする理由は──」
「なんだか面白そうじゃないか」
「えぇ?」
「学園最強の組織であるはずの〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉が、たったひとりの生徒と敵対する物語……面白そう、じゃないか」
アレクサンダーはそれ以上説明しなかった。
黙って天井を見つめ、多数決の開始を宣言する。
「まずは、彼と協力することに賛成の、お優しい諸君は挙手を」
ここで生徒会長のアリアと、西園寺オスカーに興味津々なルーナの手が挙がった。
オスカーとの会話で、生徒会を敵に回すことになるだの、強気なことを言っていたアリアだが、彼女の慈悲深さを侮ってはならない。
「なるほど。じゃあヤバい実力を隠していそうな彼と敵対したい馬鹿な諸君は挙手を」
エイダンとガブリエルの手はすぐに挙がり、少しして副会長も手を挙げる。
男子と女子で意見が分かれてしまった。しかし、これは多数決。多い方が優勢である。
「多数決は公平だからね。その結果、生徒会は、西園寺オスカー君と今後敵対していくことが決定した、ということさ。サイコーに面白くなりそうだ」
《キャラクター紹介》
・名前:白竜アレクサンダー
・年齢:18歳
・学年:ゼルトル勇者学園3年生
・誕生日:7月20日
・性別:♂
・容姿:藍色の短髪、白銀の瞳
・身長:166cm
・信仰神:雷の神ゼロス
《一学期期末テスト編の予告》
圧倒的な実力をグレイソン達に証明したオスカー。
まだセレナには実力を隠しつつも、新しい友人としてグレイソン、クルリン、ミクリンを迎え入れる。
友人が増えたと思えば、もう一学期期末テストの時期がやってきた。
生徒会幹部から送り込まれた刺客、九条ガブリエル。
彼から提示された勝負は、筆記試験の合計点数だった。
全科目で満点を取り、〈座学の帝王〉と呼ばれるほどの秀才に対し、実力を隠したいオスカーはどのようにして勝利するのか。
西園寺オスカーの奇行から、目が離せない!
お気に入り登録、エール、よろしくお願いします!
生徒会室で行われている〈守護者会議〉。
生徒会長のアリアが放った一言に、残りの四人全員が黙り込んだ。
エイダンがそんなのあり得ないと怒鳴り散らすこともない。
ガブリエルが論理的に質問を繰り出すこともない。
ルーナが冗談はよしてと笑って流すこともない。
そして、副会長の白竜アレクサンダーはというと。
なぜか自慢げに頷いていた。
アリアは魔眼を持っている。
それが決定打だ。
彼女の魔眼が西園寺オスカーの秘めている魔力を見抜いたのなら、それがいくら突拍子のないことだったとしても事実である。
「本人と話をしてみましたが、おそらく本人も自分の魔力の大きさを自覚していると思われます。実際、ここ二週間生徒会の監視がついていることにも気づいていました」
「待てよ、二週間あいつを監視してたってのか!? 俺様は聞いてねぇぞ!」
「吾輩も初耳だ……」
「ワタシにも教えて欲しかったわ」
ここで黙っていた三人が一斉に口を開く。
生徒会長アリアは学園で人気の存在である。
それは生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の中でも同様だ。ガブリエルは密かに彼女に対して友情以外の好意を持っているし、エイダンは対抗心を燃やし、ルーナは彼女を一番の親友だと思っている。
穏やかで寛容。
それでいてリーダーシップがあり、頭も切れ、実技においても学年トップの高い実力を誇っている。同じ人間として、勇者候補として、尊敬できる人格の持ち主だ。
「こうなるから言わなかったのさ」
また騒がしくなった三人に対して、副会長が笑いながら言った。
「おい! おめぇは知ってたのかよ!」
「まぁね。ボクは副会長だから」
「この野郎! 俺様とやり合いてぇのか!!」
エイダンが椅子から立ち上がり、アレクサンダーに怒鳴る。
アレクサンダーはというと、余裕の表情で微笑んでいるだけだ。
それを見てさらに苛立ったエイダン。
彼の胸ぐらを乱暴につかみ、思いきり睨みつける。大柄なエイダンと、小柄なアレクサンダー。
「阿呆、無謀な戦いはやめておけ。貴様ごときがアレクサンダーに敵うはずがない」
エイダンを止めたのはガブリエルだった。
軽蔑するような視線を投げている。
「その者の強さは貴様もよく理解しているだろう」
「ちぇっ」
少し冷静になったエイダンは、舌打ちをしてアレクサンダーから手を離した。
「私は不確定で個人的なことに三人を巻き込みたくないと考えただけです。アレクは私が言う前から気づいていました。もし不快な気持ちにさせてしまったのなら、謝罪致します」
「まあまあ、アリア君が気にすることでもないさ。とにかく、だ。実はボクも少し前から西園寺オスカー君のことが気になっていてね。ついさっき、彼の決闘を観戦してきたよ」
アリアが何か発言すると、他の三人がうるさくなる。
それをよく理解しているアレクサンダーは、自分で会議を進行することにした。副会長という立場だけではなく、純粋な実力という面でも抜きん出ている彼は、この実力者の集団をまとめるのに必要不可欠な存在である。
両手を頭の後ろで組みながら、リラックスして話を続けるのだった。
「あれは凄かったなぁ。剣術の決闘なのに、剣を放り投げて素手で一撃! あまりの威力に闘技場の壁が半壊! 久しぶりにあんな面白いものを観たよ」
「膨大な魔力を持ちながら、白兵戦も得意ということかしら。ますます興味が湧いてきたわ」
オスカーVSグレイソンの決闘をこっそり見ていたアレクサンダーの言葉に、前のめりになっているルーナが興奮して声を上げる。
「エイダン君、彼はきみに匹敵するかそれ以上の怪力の持ち主だよ。魔力もヤバいみたいだし、それでいて剣術も優れている。構えを見れば一目瞭然だね」
「おめぇ調子乗ってんじゃねぇぞ」
「ごめんごめん。まあ、ブチ切れリンゴ潰し大会があれば、筋肉ゴリラのきみが圧勝するだろうね」
エイダン以外の全員が笑った。
アリアでさえも、控えめではあるが笑っている。
ゴリラの顔が怒りで赤くなった。
「あとでぶっ殺してやる」
「それは怖いなー。覚悟しとくよ。それでさっきの話の続きだけど――」
脅しを適当に流して次の話に移るアレクサンダー。
「――正直に言うと、このボクでも西園寺オスカー君に勝てるかわからない。もしあの決闘が彼の本気なら、まだボク達の方が実力は上だろう。でも、ボクには彼が本気のようには見えなかった。あれでも相当加減してるっぽいね」
「吾輩は実際にその決闘を見ていないから聞くが、その後対戦相手はどうなった?」
「それが、死んでしまったんだ……」
深刻そうに下を向くアレクサンダー。
その様子を見ても、誰も何も反応しなかった。
「いやはや、少し不謹慎な冗談だったかもしれないな、悪い。実際は優秀な西園寺オスカー君が治癒魔術で傷を全て癒やしていたよ。骨も折れて、内臓もいくつか破裂していたと思うんだけどねぇ。それを一瞬で治したわけさ。勇者候補なのに魔術まで使えるとはね。それに、治癒魔術は選ばれし者しか使えないらしいし」
「「「「……」」」」
これには他の四人も唖然としている。
アレクサンダーが口にした通り、治療魔術は限られた才能ある者にしか使えない。それも、内臓や骨まで治癒してしまうほどのレベルは上級魔術師でも難しい。
実際、オスカーが使用したのは治癒魔術でなく使い勝手の悪い神能だが、そんなことを彼らは知る由もない。
西園寺オスカーという規格外な少年に、どう対応していけばいいのか。
生徒会としては、どう対処することが正しいのか。その判断は幹部であるこの五人に委ねられている。
アリアは悔しかった。
人生で初めての告白をして、呆気なく振られてしまったことが。
エイダンは許せなかった。
アリアがその実力を認めるような生徒が、これまで一切目立たずにその実力を隠していたことが。
そしてガブリエルは気に食わなかった。
急に出てきた一年生が、麗しのアリアに告白されたことが。そしてそれを容赦なく振ったことが。
ルーナは興味が湧いた。
今まで男っ気のなかったアリアの心を奪った、西園寺オスカーという少年に。
それから、アレクサンダーは。
新たに登場した最強の新入生の存在に翻弄されている、自分達生徒会の状況が面白くてたまらなかった。
「よし、それじゃあ多数決を採ろう!」
元気な声で副会長が言う。
「ミステリアスで独特な西園寺オスカー君と敵対し、規格外な彼の存在を学園から排除する、もしくは、超強くてかっこいい西園寺オスカー君と協力関係を築き、彼の存在を学園の希望として推していく」
満足げな表情だ。
「少しお待ちください、アレク。敵対するといっても、そこまでする理由は──」
「なんだか面白そうじゃないか」
「えぇ?」
「学園最強の組織であるはずの〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉が、たったひとりの生徒と敵対する物語……面白そう、じゃないか」
アレクサンダーはそれ以上説明しなかった。
黙って天井を見つめ、多数決の開始を宣言する。
「まずは、彼と協力することに賛成の、お優しい諸君は挙手を」
ここで生徒会長のアリアと、西園寺オスカーに興味津々なルーナの手が挙がった。
オスカーとの会話で、生徒会を敵に回すことになるだの、強気なことを言っていたアリアだが、彼女の慈悲深さを侮ってはならない。
「なるほど。じゃあヤバい実力を隠していそうな彼と敵対したい馬鹿な諸君は挙手を」
エイダンとガブリエルの手はすぐに挙がり、少しして副会長も手を挙げる。
男子と女子で意見が分かれてしまった。しかし、これは多数決。多い方が優勢である。
「多数決は公平だからね。その結果、生徒会は、西園寺オスカー君と今後敵対していくことが決定した、ということさ。サイコーに面白くなりそうだ」
《キャラクター紹介》
・名前:白竜アレクサンダー
・年齢:18歳
・学年:ゼルトル勇者学園3年生
・誕生日:7月20日
・性別:♂
・容姿:藍色の短髪、白銀の瞳
・身長:166cm
・信仰神:雷の神ゼロス
《一学期期末テスト編の予告》
圧倒的な実力をグレイソン達に証明したオスカー。
まだセレナには実力を隠しつつも、新しい友人としてグレイソン、クルリン、ミクリンを迎え入れる。
友人が増えたと思えば、もう一学期期末テストの時期がやってきた。
生徒会幹部から送り込まれた刺客、九条ガブリエル。
彼から提示された勝負は、筆記試験の合計点数だった。
全科目で満点を取り、〈座学の帝王〉と呼ばれるほどの秀才に対し、実力を隠したいオスカーはどのようにして勝利するのか。
西園寺オスカーの奇行から、目が離せない!
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