【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命

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最強の中二病編

その04 見目麗しい生徒会長

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「生徒会長か……そろそろ来る頃だと思っていた……」

 風が吹いている。

 俺の黒髪は風にあおられ、目にかかるほどの前髪がふわっと舞う。そして現れる表情は険しく、どこか儚い。

 なるべく目立たないようにして学園生活を送っていた俺としては、まさかこの時機タイミングで生徒会長が自分に目をつけるとは思っていなかった。

 そろそろ来る頃・・・・・・・だなんて思っていたはずがない。

 だが、そう言った方が「かっこよさそう」ではないか。

わたくしがここに来ることを予測しておりまして?」

 おしとやかな声で生徒会長が聞く。

 純粋な疑問だった。
 適当に言っただろ、という風に決めつけているわけでもなく、俺の言葉に深い意味があると信じるかのように。
 彼女はただ「かっこよさそう」という理由で適当なことを呟いた俺に聞いたのだ。

八乙女やおとめ会長、君もあのこと・・・・が目的で来たんだろう?」

「あのこと……まさか、もうすでにわたくしの目的を見抜いていらっしゃるのですか?」

「もし君があのこと・・・・で俺に希望を見い出しているのだとすれば、俺にはどうすることもできない。帰ってくれ」

 あのこと・・・・とは何か。

 俺にもよくわからない。
 そう言っておけば、大抵は相手が勝手に自分の要件と合わせてくれる。彼女の前では、俺は全知全能の生徒となれるわけだ。

「やはり面白い方ですね」

「なに、俺はつまらない男だ」

「いえ、わたくし魔眼・・は誤魔化せません。どうやら貴方様あなたさまは膨大な魔力を保有しているようです」

 一瞬、動揺で冷や汗が首筋を流れた。

 だが、無表情ポーカーフェイスは得意分野。
 その僅かな動揺を表に出すつもりはない。

 どうやら八乙女生徒会長は、思っていたより有能らしい。穏やかそうな彼女からは戦いに飢えているようなガツガツした雰囲気は漂っていない。
 しかしながら、彼女の持っている魔眼・・

 俺にとっては未知の存在だ。
 努力によって得ることのできない、先天性の賜物。その希少性から、〈神々からの祝福〉とも称される。

「魔眼持ちか」

「ええ、幼い頃からわたくしの目には魔力が映ります。西園寺さいおんじオスカーさん、貴方様の纏っている魔力オーラは、この学園のどの生徒よりも多いのです。わたくしを別にすれば、ですが。とはいえ、これが事実であることは確実なのですよ」

「それで、何が言いたい?」

「純粋に聞きたいのです。貴方様の目的を」

「目的?」

「それほどの力を持っておきながら、普段の授業でも試験でも、並大抵の結果を望み、実力を隠している。どうしてなのでしょうか? その先に何か深い理由ワケがあるのですか?」

 遂に来たか。

 俺は薄く微笑んだ。
 彼女は鋭い。いや、正確には彼女の魔眼は鋭い。

 魔眼については図書館の専門書で何度か読んだが、まだまだ解明されていないことも多い。だが、とにかく彼女は俺の魔力量・・・を知ったのだ。

 その点については誤魔化すことなどできない。

「確かに、俺の魔力は他の生徒と比べても抜きん出ているのかもしれない。だが、仮にそうだとしても、使い方がわからなければ意味がない。違うか?」

「なるほど。では、たまたま魔力が多かっただけで、実力を隠しているわけではない――そういうことでしょうか?」

 クリスタルのような澄んだ瞳が俺を見つめる。

 彼女の瞳を最初に見た時、色を正確に認識できなかった。
 あらゆる光を反射し、ころころと色が変わっていくせいだ。それも、魔眼だから、と言われれば納得できる。

「その通りだ」

 見目麗しい生徒会長から視線をそらし、暗くなろうとしている空を見上げた。

 腰に手を当て、ポーズは完璧だ。

「二週間」

 ふと俺は言葉を紡ぐ。

「?」

「君の生徒会とやらの役員が、日替わりで俺を監視していた。気配を消すのが下手な配下だな」

「──ッ!」

 俺は前から気づいていた。

 生徒会が俺に目を付けていることに。

 そう言いたいところだが、実際は少し違う。
 視線に敏感であり、見られていたり尾行されていたらすぐに察知することができる俺は、確かに二週間前から誰か・・が日替わりで監視していることに気づいていた。

 とはいえ、周囲の生徒の名前や人柄にまったく興味のない俺は、彼らが生徒会の役員であることがわからなかったのだ。

 今回生徒会長が自ら話しかけに来てくれたおかげで、八十パーセント程度の確率で彼らが生徒会に関係のある者達だと考えたのだった。
 それで、その予測はどうやら正解だったらしい。

「掴みどころのない方ですね」

「そうか」

「実力を隠しているわけではないと言っておきながら、その直後にその実力を示してくる。先程の言葉に対抗するわけではありませんが、監視役は皆、気配を消す能力に長けた者を選びました。〈探偵学〉の成績上位者です」

「そうか」

 生徒会長の言葉を流し、視線を瞳に戻す。

 すると、彼女がビクッとした。

「そうやってわたくしの目を堂々と見つめることができた者は、貴方様で五人目です」

「五人目か……ならばさほど価値はない」

「いえ、魔眼に関しては良くない言い伝えがありますから」

 魔眼の良くない言い伝えというのは、魔眼持ちの瞳を見つめると、自身に災いが降り注ぐ、という縁起の悪いものだ。

 迷信のようなものなので、信じるつもりはない。

 仮に他の連中がそのくだらない迷信に惑わされて彼女の美しい瞳を見ないのなら、彼らは救いようのない馬鹿だ。
 もしかしたら、彼女はそれで今まで苦しんできたのかもしれない。魔眼を持って生まれるというのは、いいことばかりではないのだ。

 他と違う。
 
 それだけで、偏見を持たれ、差別されることがある。

 俺からすれば、他と違うことは強みでしかないわけだが。

「八乙女会長、君の瞳は魅力的だ。それを見ることができるたった五人のうちのひとりという意味でなら、それは何より価値のあるものなのかもしれない」

 口を開いている最中は絶対に笑わない。

 真剣な表情で想いを伝える。
 一瞬たりとも目を離さない。ここは俺と会長の二人の世界なのだから。

 そして言葉を言い終えると、俺は小さく微笑む。それは瞬きをしてしまえば見逃してしまう。そんな僅かな頬の緩みに、八乙女会長は気づいた。

「――アリア。八乙女会長ではなく、アリア、と呼んでください」

 少し前まで長剣十本分はあった距離が、今では腕一本分。

 すぐそこに八乙女会長――アリアの顔がある。
 
「オスカーさん、もし貴方様が良ければ、わたくしとお付き合いしていただけませんか?」










《キャラクター紹介》
・名前:八乙女やおとめアリア

・年齢:18歳

・学年:ゼルトル勇者学園2年生

・誕生日:4月27日

・性別:♀

・容姿:後ろで結んだ長い銀髪、薄い色素の魔眼

・身長:159cm

・信仰神:美の女神ウィーヌ
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