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20 姉とのデートで恋人ムーブ
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待ちに待った土曜日がやってきた。
木曜日及び金曜日の放課後は呼び出しを華麗にスルーすることで、休日の練習──と言えるのかどうかわからないこと──を回避することができた。
そして俺は、孤高の休日を謳歌しようと──。
「秋くん、はい、あーん」
「ひとりで食べれるから」
目の前には姉さん。
白と黒のストライプシャツを着た、シマウマみたいな美少女。
いや、シマウマは美少女じゃないので、姉さんは美少女じゃないのかもしれない。帰納法で導くには難しい論題だ。
俺と姉さんは五番街にあるアイス屋に来ていた。
無論、最初からここに来ると決めていたわけではない。
ひとりで本屋に行って喫茶店でじっくり読書して帰ってくるつもりだったのに……姉さんがついてきたのだ。
「秋くんはストロベリー好きだよね」
「基本的にここ来たらストーストーストロベリーしか食べないよ。絶対美味しいっていう保証がある」
「お姉ちゃん元々はチョコミントが好きだったけど、秋くんがストロベリー好きだから乗り換えたんだよね~」
自分の好みは大切にしてほしい。
俺がチョコミントを食べれば、姉さんはやっと本当に好きなアイスを食べられるわけだ。
「ほら、あーん」
抵抗するのにも疲れたので、素直にパクっとアイスを食べる。
姉さんとは家族だし、間接キスがどうとか考えることはない。
それに、少し前に唇も奪われたし……。
俺たちの隣のテーブルでは、20代くらいの若いカップルがイチャイチャを見せつけながらアイスを頬張っていた。
傍から見れば、俺と姉さんのやりとりも恋人のそれに見えるんだろうな。
姉弟だとわかればドン引きされるだろうか。
少なくとも、ブラコンが過ぎる姉さんは引かれるだろう。俺は被害者を装っておけばいい。
「秋くん、そういえば松丸先生が休日の練習について聞いてきたけど、どうするの?」
「え、いつ聞かれたの?」
「今、LIМEで」
姉さんと松丸先生、お互いに連絡取ってるのか。
危険な組み合わせだ。
絶対に身内に関わらせたくない相手だが、姉さんも同じくらいに危険な雰囲気を漂わせているので、ある意味お似合いだな。
姉さんが松丸先生とのチャット画面を見せてくる。
ちらっと確認しただけでも、結構な下ネタが……きっと気のせいだ。
「休日は家庭の用事で忙しいって送っといて」
「そうだね。秋くんお姉ちゃんとのデートで忙しいもんね」
姉さんは相変わらず文字の入力が速い。
何度か腱鞘炎を乗り越えているだけの経験と実力がある。
「先生、今五番街来てるんだって」
「は?」
「ドキドキするね。秋くんとのラブラブデートが見られちゃったらどうする?」
どうもしないけど。
「あ、噂をしたらほんとにいた」
繊細で綺麗な姉さんの指を追うと、その先には松丸先生の姿が。
普段学校では仕事着というか、いわゆる無難な格好をしているが、プライベートでの私服はまったく違う。
短めのショートジーンズに、水色のブラウス。
手提げのショルダーバッグに、厚底のサンダル。
どこか大人っぽさも感じさせながら、女子高生にも見えるような若々しさも感じる。
こんな美女が歩いていたら、ナンパされまくりじゃないのか。
いや、自分には高嶺の花だと思って声をかけられない人も多いのかもしれない。
「ちょっと秋くん、見惚れてるの?」
「まあ、ちょっとは」
「むー、お姉ちゃんには見惚れてくれないくせに」
「見慣れてるから仕方ないよ」
姉さんはご立腹の様子だ。
ここはちょっとだけ褒めることも必要。
「今日の姉さんの格好、シマウマみたいで可愛いよ」
「だよね、シマウマって可愛いよね」
姉さんがシマウマ好きでよかった。
「あ、先生に気づかれたよ、秋くん」
「……」
松丸先生は瑞々しい美脚を周囲に見せつけながら、堂々とこっちまで歩いてきた。
できれば気づかずにスルーしてくれた方がよかったが、今はもう遅い。
松丸先生はいつもの桃の香りと、ほんの少し強い化粧の匂いがした。
「秋空君、私からは逃げられないのよ」
色っぽい声でぐっと距離を詰めてくる。
姉さんは松丸先生のブラウスの袖を引っ張り、それを阻止しようとしていた。
「帰宅部っていうのは休日は自由ですよね? だからそっとしていただけると助かります」
俺は正当な自由を主張する。
でも──。
「自由だけれど、部活動な以上、活動が入っていたら参加しないと。そうでしょう?」
「秋くんは私のものですよ、先生。毎週土曜と日曜は秋くんとデートをすることになってるんです」
それは初耳だ。
「とりあえず、会えてよかったです。先生はひとりなんですか?」
「秋空君、それって、彼氏いないからひとりで寂しく歩いてるんですか、って意味かしら?」
「いえ、そんな深い意味があったわけじゃ──」
「いいの。私はとんでもなく美人だから、またすぐに彼氏なんてできるから」
「よかったですね。応援してます」
「私もアイス食べようかしら。ちょっと待っててちょうだい」
もう逃げられなくなった。
先生がアイスを食べ終わるまでは、ここから出ることはできない。この隙に逃げようとするのは流石に失礼すぎる。
もう一度言っておくが、松丸先生は一応教師なのだ。
「秋くん、今のうちに逃げる?」
「逃げないよ」
「でも、デートを邪魔する人は邪険に扱っていいっていう校則があるし、仕方ないと思うよ?」
そんな校則はない。
少なくとも、入学のしおりには書いてなかった。
「アイス食べ終わるのなんてせいぜい10分くらいだし、ちょっと我慢すればいいんじゃないかな」
「もう、秋くんってお人好しなんだからぁ」
先生との会話を我慢するとか言ってる時点でお人好しではない。
「松丸先生も一緒に食べるんだったら、お姉ちゃんと秋くんのラブラブっぷり、見せてあげようね」
《次回21話 元カノのデート現場を目撃する》
木曜日及び金曜日の放課後は呼び出しを華麗にスルーすることで、休日の練習──と言えるのかどうかわからないこと──を回避することができた。
そして俺は、孤高の休日を謳歌しようと──。
「秋くん、はい、あーん」
「ひとりで食べれるから」
目の前には姉さん。
白と黒のストライプシャツを着た、シマウマみたいな美少女。
いや、シマウマは美少女じゃないので、姉さんは美少女じゃないのかもしれない。帰納法で導くには難しい論題だ。
俺と姉さんは五番街にあるアイス屋に来ていた。
無論、最初からここに来ると決めていたわけではない。
ひとりで本屋に行って喫茶店でじっくり読書して帰ってくるつもりだったのに……姉さんがついてきたのだ。
「秋くんはストロベリー好きだよね」
「基本的にここ来たらストーストーストロベリーしか食べないよ。絶対美味しいっていう保証がある」
「お姉ちゃん元々はチョコミントが好きだったけど、秋くんがストロベリー好きだから乗り換えたんだよね~」
自分の好みは大切にしてほしい。
俺がチョコミントを食べれば、姉さんはやっと本当に好きなアイスを食べられるわけだ。
「ほら、あーん」
抵抗するのにも疲れたので、素直にパクっとアイスを食べる。
姉さんとは家族だし、間接キスがどうとか考えることはない。
それに、少し前に唇も奪われたし……。
俺たちの隣のテーブルでは、20代くらいの若いカップルがイチャイチャを見せつけながらアイスを頬張っていた。
傍から見れば、俺と姉さんのやりとりも恋人のそれに見えるんだろうな。
姉弟だとわかればドン引きされるだろうか。
少なくとも、ブラコンが過ぎる姉さんは引かれるだろう。俺は被害者を装っておけばいい。
「秋くん、そういえば松丸先生が休日の練習について聞いてきたけど、どうするの?」
「え、いつ聞かれたの?」
「今、LIМEで」
姉さんと松丸先生、お互いに連絡取ってるのか。
危険な組み合わせだ。
絶対に身内に関わらせたくない相手だが、姉さんも同じくらいに危険な雰囲気を漂わせているので、ある意味お似合いだな。
姉さんが松丸先生とのチャット画面を見せてくる。
ちらっと確認しただけでも、結構な下ネタが……きっと気のせいだ。
「休日は家庭の用事で忙しいって送っといて」
「そうだね。秋くんお姉ちゃんとのデートで忙しいもんね」
姉さんは相変わらず文字の入力が速い。
何度か腱鞘炎を乗り越えているだけの経験と実力がある。
「先生、今五番街来てるんだって」
「は?」
「ドキドキするね。秋くんとのラブラブデートが見られちゃったらどうする?」
どうもしないけど。
「あ、噂をしたらほんとにいた」
繊細で綺麗な姉さんの指を追うと、その先には松丸先生の姿が。
普段学校では仕事着というか、いわゆる無難な格好をしているが、プライベートでの私服はまったく違う。
短めのショートジーンズに、水色のブラウス。
手提げのショルダーバッグに、厚底のサンダル。
どこか大人っぽさも感じさせながら、女子高生にも見えるような若々しさも感じる。
こんな美女が歩いていたら、ナンパされまくりじゃないのか。
いや、自分には高嶺の花だと思って声をかけられない人も多いのかもしれない。
「ちょっと秋くん、見惚れてるの?」
「まあ、ちょっとは」
「むー、お姉ちゃんには見惚れてくれないくせに」
「見慣れてるから仕方ないよ」
姉さんはご立腹の様子だ。
ここはちょっとだけ褒めることも必要。
「今日の姉さんの格好、シマウマみたいで可愛いよ」
「だよね、シマウマって可愛いよね」
姉さんがシマウマ好きでよかった。
「あ、先生に気づかれたよ、秋くん」
「……」
松丸先生は瑞々しい美脚を周囲に見せつけながら、堂々とこっちまで歩いてきた。
できれば気づかずにスルーしてくれた方がよかったが、今はもう遅い。
松丸先生はいつもの桃の香りと、ほんの少し強い化粧の匂いがした。
「秋空君、私からは逃げられないのよ」
色っぽい声でぐっと距離を詰めてくる。
姉さんは松丸先生のブラウスの袖を引っ張り、それを阻止しようとしていた。
「帰宅部っていうのは休日は自由ですよね? だからそっとしていただけると助かります」
俺は正当な自由を主張する。
でも──。
「自由だけれど、部活動な以上、活動が入っていたら参加しないと。そうでしょう?」
「秋くんは私のものですよ、先生。毎週土曜と日曜は秋くんとデートをすることになってるんです」
それは初耳だ。
「とりあえず、会えてよかったです。先生はひとりなんですか?」
「秋空君、それって、彼氏いないからひとりで寂しく歩いてるんですか、って意味かしら?」
「いえ、そんな深い意味があったわけじゃ──」
「いいの。私はとんでもなく美人だから、またすぐに彼氏なんてできるから」
「よかったですね。応援してます」
「私もアイス食べようかしら。ちょっと待っててちょうだい」
もう逃げられなくなった。
先生がアイスを食べ終わるまでは、ここから出ることはできない。この隙に逃げようとするのは流石に失礼すぎる。
もう一度言っておくが、松丸先生は一応教師なのだ。
「秋くん、今のうちに逃げる?」
「逃げないよ」
「でも、デートを邪魔する人は邪険に扱っていいっていう校則があるし、仕方ないと思うよ?」
そんな校則はない。
少なくとも、入学のしおりには書いてなかった。
「アイス食べ終わるのなんてせいぜい10分くらいだし、ちょっと我慢すればいいんじゃないかな」
「もう、秋くんってお人好しなんだからぁ」
先生との会話を我慢するとか言ってる時点でお人好しではない。
「松丸先生も一緒に食べるんだったら、お姉ちゃんと秋くんのラブラブっぷり、見せてあげようね」
《次回21話 元カノのデート現場を目撃する》
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