【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命

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第26話 おかしな生徒会長

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 今日の放課後、練習はお互いに本気だった。

 体が密着しても、顔が近くなっても、明日のオーディションのことだけを考えていたので気にならない。
 俺は最強の集中モードに入っていた。

 3分間の演技で、見せ場となるのは3か所。

 本番はどのペアも一斉に踊る。そのため、審査員の目を引くポイントを多く作っておくことで、しっかり評価されつつ、周囲との比較もされる。
 
 最初の見せ場が冒頭だ。
 華麗さではエレガント&フロストのペアに負ける。だからここは元気に、俺が高くリリーを上げ、逆立ち状態のリリーが落ちてくる瞬間、片方の手を離して横にひねりを加える。

 複雑な技だが、これは練習でなんとか息が合うようになった。

 次に大切になるのが中盤のアクロバット。
 派手にやる。
 ゲイル&ハローちゃんのペアに明るさでは負けるので、とことん目立つことを優先した。

「そこで必要になるのが、リリーのスキルだ」

「リリーの?」

「ああ、君のスキルは目立つには最高だからな」

「しゃ、しゃいこう?」

 リリーの顔が真っ赤になった。
 まただ。

 俺は絶対に、誓って顔が赤くなってないが、リリーはすぐに顔を真っ赤にする。それもそれで可愛いが、そんな赤くしてばかりだと脳に血が上り過ぎる、なんてことになるんじゃないか?

「むぅ。ジャックくん、いつもずるいんだよぅ」

「それで、スキルのことだが──」

「き──聞いてかったの!!」

「ん?」

 気づけばリリーはもじもじしている。
 明日はオーディション当日。絶対につかみたい代表の座。

 ライバルであるブレイズに、高い壁というものを見せなくてはならない。

「中盤でリリーの個性を使うとなると、最後に同じスキルで盛り上げるのはやりにくい。だから最後、俺が炎を起こしてタイフーン先生の注目をいただく」

 そう、俺はクラスメイトから炎のスキル持ちだと思われている。
 テストで派手に使ったのは炎だけだったからだ。

 いろいろな種類を使い過ぎて、学園の話題になるのだけは避けたかった。

 で、リリーもたぶん俺のスキルといったら炎だと思っている。

 問題は、ブレイズも俺のスキルのことを炎だと思っているのか、ということだ。
 もしそうなら、あんなライバル意識されるのは当然か。本当のことを言った方がいいのか?

 ブレイズに?
 ないない。

 少し仲よくなった(?)とはいえ、秘密を共有できるほど信頼しているわけでも、仲が深いわけでもない。
 そんな状態で秘密を話すのは危険過ぎる。

「ジャックくんのスキルって、炎だったよね?」

「うん、もちろん」

 そう思い込んで頷く。
 秘密を言いたいが言わない。俺はもっとできる、っていうのをリリーに知ってもらいたい。

 だが、秘密を共有できる友人は残り2人。
 簡単に決めることはできなかった。

「あとは明日、この構成を完璧に披露するだけだ」


 ***


 たっぷり練習をして、万全の準備ができた。

 まだリリーと密着することには慣れないが、演技に支障はない。
 動きは体に叩き込み、目をつぶっていてもできるレベルにまで仕上げることができた。

 睡眠もたっぷり。

 2日分の疲れをしっかり取ることもでき、元気いっぱいだ。

「ジャックくん、おはよ! 今日、頑張ろーね」

 4人の朝食の場に、リリーが走ってきた。
 可愛い微笑みを向けてまた去っていく。

 それを見てゲイルもフロストも気合いが入ったらしい。

「準備万端ってか。おれたちも勝つことしか見えてないぜ! 今回ばかりは、おれが輝かせてもらう!」

「ぼくはまだまだ未熟だ。ジャックに比べれば練習も努力もまったく足りない」

 フロストは謙虚過ぎるが、ゲイルはいい調子だ。
 3組が完璧な演技をして、その完璧で競い合う。それほど清々しいことはない。

「あとは3時間目のアクロバットの授業を待つだけか」


 ***


「さあ、いよいよこのときがやって来た! ボクはむしろ、前夜祭での大会より、この選抜オーディションの方が盛り上がると思ってる。いい風を起こしてくれ」

 タイフーン先生のテンションは最高潮に達していた。
 こんなに楽しそうな先生は見たことがない。

 周囲にはクラスメイトだけでなく、数名の先生も観に来ている。

 担任のイーグルアイ先生も、鋭い目を光らせて俺たちを観察していた。
 他にも俺たちエリートクラスの授業を受け持つ先生が見える。授業がたまたまないんだろう。

 それにしても、かなり期待値が高いな。

 ここまで緊張するとは思ってなかった。
 みんなの前で、先生たちの前で、リリーとドキドキのアクロバットダンスをするのか?

「演奏隊もスタンバイ完了! 代表を競い合う3ペアはスタート位置について!」

 演奏隊はこの学園の演奏クラブの生徒たち。
 
 王国大会で金賞も受賞している実力者たちだ。

「審査員はボクの他に、キミたちの担任であるイーグルアイ先生、そして生徒会長のリード・サンダーくんだ!」

 タイフーン先生の隣にいる小柄な、金髪に赤色のメッシュが入った少しパンクな生徒。
 
 見た目だけだと少し怖そうな彼は、この学園の生徒会を統率する生徒会長だ。
 スキル『落雷』を持っているらしい。

「やあやあ、みんなー! 今年の1年生、エリートクラスはまさに癖のある個性と優秀さがそろった、面白いクラスだって聞いてるよー」

 いや、あんたが1番癖強いぞ。

 あの見た目からは想像できないこの陽気さと抜けた感じ。
 入学式の会長挨拶では、ほとんどの新入生が驚きのあまり椅子から跳び上がったほどだ。

「いやー、おいらね、アクロバットダンスめっちゃ好きなんですよ。だからもう、今日はいーぱい楽しませてもらいまーす!」

 だめだこりゃ。
 イーグルアイ先生、審査はすべてあなたがしてください。
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