上 下
30 / 38

断章4 初戦敗退

しおりを挟む
 ──初戦敗退。

 その言葉がシャロットの脳裏に焼きついた。

 着実に実力をつけてきたはずなのに、その力が打ち砕かれる。

 接戦だった。
 僅かなズレが生じるだけで、勝敗は簡単に覆ってしまう。それほどまでに、シャロットとセルシの実力は拮抗していた。

「レッドくんっ──」

『うぉぉぉぉおおおお!』

 セルシの勝利に歓声が上がる。

 愛する者レッドはこの戦いをどう見ただろうか。

 必ず勝つと意気込んでおきながら、負けてしまった。
 決して傲慢になっていたわけではない。とはいえ、ダスケンデール学院を首席で卒業した、という経歴は、彼女に自信を与えていた。

 しかし、卒業してすぐ、その自信が打ち砕かれる。

 レッドの座る観客席。
 彼の失望する表情を見たくない。

 しかし──。

(そもそも見てないっ──!)

 目を見開き、何度も確認した。

 そして気づけば、レッドはどこかに消えている。
 自分に失望して出ていってしまったのだろうか、とシャロットは考える。

 悔しい。

 その思いを噛み締めた。
 拳を握り締めた。

 そして――。

(レッドくんに慰めてもらいましょう)

 シャロットはすっかり開き直り、立ち上がった。
 
(待っていてくださいね、レッドくん)

 先ほどのシリアスな後悔は何だったんだ、とでもいうような立ち直りで、戦場フィールドを出る。

 血が流れていた。
 彼女の紅い血が、闘技場の歴史に組み込まれる。

 初戦敗退。

 それが今後シャロットにどのような影響を与えるのか。
 
 その屈辱を動機として飛躍するのか……もはやその結末はレッドのみぞ知る。





《作者コメント》
 せっかくですので、ここで少しコメントを挟ませてください。

 作者、エース皇命こうめいの推しキャラはズバリ、コンスタスです。
 だって可愛いし、小さいんですよ。

 僕のホームページには好きな作品やキャラがずらっと書いてあるのですが、小柄なキャラが多いです。


 でも、純粋なキャラクター性でいえば、僕はメインヒロインのシャロットを推しとして挙げるでしょう。

 彼女とレッドとの掛け合いが、この物語の面白さを生んでいると言っても過言ではありません。
 そこにラメセスやコンスタスが混じることで、新しい化学反応が起きます。

 エンターテイナーの僕が読者あなたに求めることはたったひとつ。

 作品を広めてもらうことでも、他の作品を読んでもらうことでもありません。

 ──楽しんで読んでもらうこと、です。

 何のために小説を書いているのか。
 そう問われれば、僕は読者を楽しませるため、と答えます。

 ポイントを上げるとか、書籍化するとか、ランキング1位を目指すとか、そういった下心も、前はありました。というか、今も当然、書籍化したいし、ランキングの上位も狙っています。

 でも、1番はやっぱり、楽しませることです。

 僕は今まで、短い人生ですが、心動かされる作品に出合い、勇気付けられたり、泣いたり、笑ったりしてきました。
 あなたには、そんな体験をしてほしいんです。

 エンターテイナーとして、それを第一に考える。
 もしこの作品を読み、あなたが面白いと少しでも思ってくださったのなら、僕は嬉しいです。





《次回27話 いいところで没収試合になる》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】勇者パーティーの裏切り者

エース皇命
ファンタジー
「この勇者パーティーの中に裏切り者がいる」  Sランク勇者パーティーの新人オーウェン=ダルクは、この神託の予言が示す『裏切り者』が自分のことだと思っていた。    並々ならぬ目的を持ち、着実に実力をつけていくオーウェン。    しかし、勇者パーティーのリーダー、ウィル=ストライカーから裏切り者が別にいることを知らされる。  容疑者はオーウェンを除いて6人。  リーダーのウィルに、狼の獣人ロルフ、絶世の美女ヴィーナス、双子のアルとハル、そして犬の獣人クロエ。  一体誰が勇者パーティーの裏切り者なのか!?  そして、主人公オーウェンの抱える狂気に満ちた野望とは!?  エース皇命が贈る、異世界ファンタジーコメディー、開幕! ※小説家になろう、エブリスタでも投稿しています。 【勇者パーティーの裏切り者は、どうやら「俺」じゃないらしい】

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

処理中です...