【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命

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第18話 実力者達のバトルに夢中になる

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 シャープ・アロケルも作中屈指の実力者だ。
 
 ダークエルフという褐色の肌をしたエルフの種族で、闇の魔術を自由に使いこなす。
 俺と同じ黄金の瞳は、対戦相手であるコンスタスに敵意を向けていた。

「興味深いなぁ。レッド、どっちが勝つか賭けでもしないかい?」

「え……」

 ちょいちょいラメセスさん!
 俺の思っていたエルフの剣聖ラメセスのイメージと違いすぎて、かなり引いてます。

 これは冗談なのか、はたまた本気なのか。

「僕はシャープが勝つ方に金貨3枚賭けるよ」

 せめてそこは仲間の応援をしろよ!
 敵の勝利を望んでどうする!?

 彼は誰よりもまともだと信じていたのに……やっぱりこの世界には、もうまともな連中なんて残っていないのか……トホホ……。

「じゃあ俺はコンスタスが勝つ方に金貨1枚」

 てなわけで、俺はもう開き直ることにした。

 コンスタスよ、頼むから勝ってくれ。
 ふたりの実力を把握している俺でも、どちらが勝つのかはわからない。圧倒的な差があるわけでもないし、戦い方も違うから、直接比較ができないのが難点だ。

 物語でも、このフィールドのふたりが戦う描写はなかった。
 ということは、俺は『英雄物語ロード・オブ・ザ・ヒーロー』ファンの誰もが知りたいであろう、コンスタスとシャープの戦いの行方を見れるということか。

 得した気分だ。

「わかった。それで構わないよ。仲間メンバーを信じる気持ちは大事だよね」

 敵に賭けてるお前が言うなそのセリフ!

「私はレッドくんに賭けます」

 シャロットの意味不明なセリフは無視しておこう。



 ***



 上の観客席から見ても、闘技場全体の緊張感がヒシヒシと伝わってくる。
 実力者ふたりはお互いに見つめ合い、攻撃の構えを取った。

 今日の今日まで出場できなかった剣聖ラメセスと同格の実力。

 その激しいぶつかり合いが見たい。

 コンスタスが弓を構え、矢をつがえた。
 彼の弓は小人族コビットの小柄な体格に合わせて、短く小さい。

 弓が短いということはどういうことか。
 それはつまり、高速で矢を放つことができる。体勢をすぐに取ることができる。コンスタスにはちょうどいい武器だ。

 でも、弓が短いことにはデメリットもある。
 それは長い弓ほど遠距離は狙えないということ。

「今回はコンスタスに分がある」

 俺は勝利を確信したかのように言った。
 できるだけイケボで。

「今のセリフ、エロすぎましたね」

 シャロットの反応はとりあえず無視するとして、次に進もう。

 今回の戦場はこの闘技場。
 それはコンスタスの弓の射程におさまる。
 遠距離が狙えない、という弱点は無効なのだ。なら、コンスタスは実力を100%出し切ることができる!

 それに対して、シャープの武器は槍だ。

 長い槍。
 これはリーチが長い分、小学生並みの身長であるコンスタスには苦戦が強いいられる。

 でも一度距離を取ってしまえば、槍なんて敵じゃない。もしくは、超近距離に持ち込めれば、実は隠し持っているコンスタスのナイフで、一撃。

 勝利は見えている。

「動いた──ッ」

 コンスタスが矢を放つと同時に、歓声が上がる。

 百発百中とも名高い彼の攻撃。
 それを受けるのはヒューマンひと殺しのダークエルフ。

 コンスタスは的を外さなかった。

 まっすぐに飛んだ矢は、相手シャープの肩に向かう。

 とはいえ簡単にやられるような相手ではない。
 シャープはその完璧な定まった矢を、槍で弾いた。矢が砕け、地面に落ちる。

「そうだよなぁ」

「まだ終わってないみたいだよ」

 そう上手くいかないか、と溜め息をつく俺に、ラメセスが声をかける。

 砕けた矢からは煙が立っていた。
 白い煙だ。
 その煙はどんどんシャープの体に纏わりついていき、彼の周囲を完全に包み込む。視界を奪った。

 そうか。

 コンスタスの矢にはそれぞれ小細工ギミックが加えられている。
 さっき放った矢は、元からシャープに命中させるつもりなんてなかったのかもしれない。

 槍で払われることを見越して、煙矢を使うことで自分に有利な状況を作ろうとしいていたんだ。

 かっこいい男だぜ、コンスタスは。

「レッドくんなら、あの程度のダークエルフなんて、一撃で倒せますよね」

「それは無理だろ」

「水飲みますか? 特別に口移しして差し上げます」

 俺としては超盛り上がっている戦いバトルを楽しみたいのに、ことごとく邪魔してくるシャロット。

 それに、いつの間にか俺の腕を完全にホールドしていて、頭を肩に乗せてきている。
 爽やかで甘い香りが、俺の鼻に入ってきた。

 それにしても、女の子の体って、なぜにこう柔らかいんだ?

 いかんいかん。
 気にしたら負けだ。

 メインヒロインとイチャついている場合じゃないっ!

 隣の美女のことは頭から除外して、目下の戦いに集中した。

 シャープはどうにか距離を詰めようと、槍を振り回しながら矢を払い続けている。
 
 コンスタスの完璧な弓矢の技術も凄いと思うけど、やっぱりシャープの正確な槍捌きも負けてはいない。細かい矢のひとつひとつを確実に回避する技術。
 敵から学ぶことも多いな。

 戦闘開始から1分くらいたったところで、シャープが急接近した。

 このまま白兵戦に持ち込むつもりだろう。
 そうなるのは避けたいコンスタス。

 とはいえ、緊急事態のために装備しているナイフは腰にある。どんな状態でも戦えるのが、本当の実力者ってやつなのかもしれない。

コンスタスかれはまた距離を取る必要があるね」

「もっと早く決着をつけるべきだったのか……!?」

 遠目だからはよく見えない。
 でも、コンスタスの頬を汗が伝っているような気がした。





《次回断章3 刺激を追い求める者》
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