上 下
12 / 38

第11話 パーティの名前を決定する

しおりを挟む
 ギルドにて。

 俺は早速ラメセスを新しいパーティ仲間メンバーとして迎え入れるための申請を行った。

 どうやら受付嬢のアリシアはラメセスと共犯だったらしい。
 強い仲間を求めていたラメセスは、パーティーの結成をギリギリまで遅らせていた。その理由はダスケンデール学院の卒業生となる俺を待つためで、今回、その期待を超える結果になった、とのことだ。

 水色の髪が揺れ、頬が緩む。
 アリシアも達成感を感じているようだった。多分だけど、ラメセスのことが好きなんだろう。

 大好きなラメセスさんのお力になれて光栄です、みたいな感じかな。

 流石は乙女の恋心を理解する鋭い男だ。
 やっぱり、この世界での俺は、男としての格が違う。

「これで申請の手続きが完了しました」

 内心でどう思っているのかはわからない、いつもの冷静な対応をするアリシア。

 その後俺はいくつかの書類にサインすることになった。
 この世界の文字は中二病の心をくすぐるので、書けるようになって本当に嬉しい。

「これはギルドの決まりなのですが、3名以上が所属するパーティには、名前を付けていただくことになっています。どうされますか?」

「名前?」

「はい。どんなものでも構いませんが、品位を下げるようなものは遠慮していただいて──」

「そんな名前は付けませんから」

 アリシアに品のない男だと思われていたことにショックだ。

 ちらっとラメセスの方を見ると、君が決めろ、とでも言うようにゆっくりと頷かれた。

 で、問題は──。

「私、思いつきました。【レッドとシャロットの愛の巣窟】なんていうのはどうでしょう? 最高のネーミングセンスだと思うのですが」

「どんなネーミングセンスしてるんだよ!」

 頬を可愛く赤らめながら、控えめに手を上げて発言するシャロット。

 その可愛らしい様子にそぐわない馬鹿げた発言。
 そして恐ろしいネーミング。

 そもそもラメセスが加わって3人になったというのに、俺とシャロットふたりだけの名前を入れるなんていうのは間違っている。
 ていうか、本当に好きなんだな、俺のこと。

 相変わらず、罪な男だぜ。

「え、最高の名前、ですか? そんな褒めてくださるなんて照れてしまいます」

 そんなこと言ってません。

「レッド、君が責任者リーダーなんだし、名前は君に任せるよ。僕は何も文句は言わない」

 ラメセスがかっこよすぎる。
 同じパーティの一員になれてよかった。

「レッドくん、私の提案を採用してくれますよね?」

「それはやめとく」

「どうしてですか? レッドくんとの愛のために、寝ずに考えたのに」

「考えたの数秒前だろ」

「愛が拒絶されたような気がして悲しいです……シクシク」

 もうシャロットという美女は一体何なのか。
 メンヘラなのか、ヤンデレなのか。

 それとも、厄介なふたつの属性を掛け持ちした、とんでもない化け物なのか。

「嘘泣きはやめてくれる?」

「バレてしまいましたか。テヘペロ」

「可愛いからって許しません」

「え、今、可愛いって言いましたか? もう、女ったらし~」

 はぁ、と溜め息を漏らす俺の隣で、面白そうに笑うラメセス。
 今後はこの光景がずっと続いていくのだろうか。

「それで、どうされますか?」

 ほんの少し苛立った様子で、アリシアが聞いてきた。

 一瞬鳥肌が立つ。
 ギルドの受付嬢に嫌われるわけにはいかない。まあ、俺が嫌われるというより、シャロットが嫌われることになるだろうけど。

 それに、アリシアは仕事しているんだ。
 今の俺達は明らかに迷惑客といったところだろう。

「すみません。じゃあ、決めます」

 と言って、すぐに思いつくものでもない。

 ヤバい。
 焦って汗を垂らす。

 早く決めないと、アリシアが盛大に機嫌を損ねてしまう。アリシアに嫌われてしまう。考えろ、俺。

「【最強ストロンゲスト】とか?」

 ヤケクソで出てきたのがこれだった。

 なんかイタいネーミングではあるけど、仕方ない。
 シャロットが考えたものよりは遥かにマシだ。それに、この名前からは強い意志を感じる。このパーティーを成長させて、いずれは最強になるぞ、みたいな?

 強くなりたいという気持ちも、嘘ではない。
 だから、これでいいと思った。

「僕は気に入ったよ。賛成だ」

「やっぱり私の考えアイディアが最善な気がします」

「ふたりとも、ありがとう。【最強ストロンゲスト】で決まりだな」

「私の意見無視されてませんか?」

 シャロットの発言は全て無視で、俺は強引にパーティー名を確定させた。

 また書類だのなんだの面倒くさかったけど、決意ができたのは気分がいい。
 この仲間と、今後は自分の限界に挑み続けていくことになる。シャロットは時にうるさいものの、俺の1番の親友であることに変わりはない。

 これでいいんだ。

 【最強ストロンゲスト】になるために、俺達は歩みを始めたばかり。
 実力者のラメセスも加入し、いい勢いがついた。

 大切な仲間メンバーであるふたりの顔を見て、俺は言った。

「親睦会のために、早速酒場に行こう! ずっと酒場に憧れてたんだ」





《次回12話 小人族の青年が乱入する》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】勇者パーティーの裏切り者

エース皇命
ファンタジー
「この勇者パーティーの中に裏切り者がいる」  Sランク勇者パーティーの新人オーウェン=ダルクは、この神託の予言が示す『裏切り者』が自分のことだと思っていた。    並々ならぬ目的を持ち、着実に実力をつけていくオーウェン。    しかし、勇者パーティーのリーダー、ウィル=ストライカーから裏切り者が別にいることを知らされる。  容疑者はオーウェンを除いて6人。  リーダーのウィルに、狼の獣人ロルフ、絶世の美女ヴィーナス、双子のアルとハル、そして犬の獣人クロエ。  一体誰が勇者パーティーの裏切り者なのか!?  そして、主人公オーウェンの抱える狂気に満ちた野望とは!?  エース皇命が贈る、異世界ファンタジーコメディー、開幕! ※小説家になろう、エブリスタでも投稿しています。 【勇者パーティーの裏切り者は、どうやら「俺」じゃないらしい】

悪行貴族のはずれ息子【第1部 魔法講師編】

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン! ★第2部はこちら↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/450916603 「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」 幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。 東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。 本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。 容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。 悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。 さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。 自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。 やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。 アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。 そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…? ◇過去最高ランキング ・アルファポリス 男性HOTランキング:10位 ・カクヨム 週間ランキング(総合):80位台 週間ランキング(異世界ファンタジー):43位

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

処理中です...