【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命

文字の大きさ
上 下
11 / 38

第10話 架空の婚約を祝福される

しおりを挟む
 ラメセスの言葉を聞いて、鳥肌が立った。

 それはなにも、俺を認めてくれて嬉しかった、とか、実力者に勝てて感動した、とかそういう理由じゃない。
 
 聞いたことのある台詞セリフだったからだ。

 わからないはずがない。
 エルフの剣聖であるラメセスが大声で笑い出し、降参だと認め、そして自分もパーティーの仲間メンバーに加えて欲しいと頼む……台本シナリオ通りの展開だ。

 でも、問題がひとつ。
 その元々のシナリオでは、ラメセスの言葉をもらう相手は俺ではない。我らが主人公、アーサー君なのである。

 俺は今後アーサーが行うはずだったイベント、「ラメセスとの交戦」を得て、本来アーサーが手にするはずだった「ラメセスという戦力」を手にしたのだ。

 またやっちゃった。

 もうこれは、この物語の主人公がレッド・モルドロスに変更された、ということなのか!?

 罪な男だぜ、俺は。

「流石レッドくん! 私の応援は力になりましたか?」

「え、うん、まあ」

「なんだかレッドくんが冷たいです……シクシク……」

「ごめん、別にそんなつもりじゃ──」

「冗談です。では、泣いている私を慰めてくださいね。子供作りましょうか」

 心配して損した。
 相変わらず、シャロットを精神病院に連れていきたい気持ちは健在だ。

 俺があまりにイケメンなせいで、彼女はすっかり骨抜き状態。やっぱり俺の存在は罪なのか……。
 俺は別に女を弄ぶような男になったつもりはない。
 
「君の仲間も随分と面白いね。確か名前はシャロット、だったかい?」

 俺達は20階層から去り、地上に戻っている。
 ちょうど5階層といったところだ。
 このぐらいの階層であれば、モンスターが飛び掛かってきても拳ひとつで撃退できる。

 でも、俺達の強さはモンスター達も直感か何かでわかるらしく、無心に突っ込んでくるようなバカモンスターはいなかった。
 少しは利口だということか。

 俺はあっさりラメセスの加入を許可した。
 ギルドで正式に申請してしまえば、数分後にはもうちゃんとしたパーティメンバーとなる。

 本来なら、シャロットもラメセスも、主人公アーサー側だったはずなのに。

 それに、シャロットはメインヒロイン。
 俺がこんなに物語ストーリーをぶち壊していいのか、とも思ったけど、もう決めた。

 俺は主人公として生きる。

 遠慮なんてしない。

 この世界に誕生したからには、俺の人生を生きてやる。
 たとえそれが、世界の望むものでなかったとしても。

 決意に満ちた自分のかっこよさに騙され、とりあえず前向きに生きてみよう。

「すっかり感心したよ。こう言うと上から目線だって思われるかもしれないけど、君達は僕の期待を遥かに超えてきた」

「レッドくんが期待以上なのは当然です。誰よりも努力していますから」

「まあまあ、俺のことはいいから」

 ラメセスからの称賛の言葉を、ツンと跳ね除けるシャロット。
 俺はそれを滑らかにすべく声を上げる。
 
 確か、『英雄物語ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の中でのシャロットとラメセスは、さほど相性がよくなかったっけ。
 
 理由は本当に不明だけど、シャロットはエルフがあまり好きじゃないらしい。

 偏見を持つな、と注意したいところだけど、恐ろしい過去とかがあったらなんだか気まずいし、そっとしておこう。

 エルフに親を殺されたんです、とか、エルフアレルギーなんです、とかあるかもだしな。

「とにかく、レッドくんの隣は私が歩きますね。ラメセスさん、でしたか? あなたはレッドくんの遥か後ろを歩いてください」

「もしかして、嫉妬しているのかい? 僕は君からレッドを取ったりしないよ」

 愉快なラメセス。
 本当に楽しそうだ。俺達が面白くて仕方ないらしい。

 ラメセスに反発するように、シャロットが俺の腕を引っ張り、豊満な胸に押し当てる。

 こんな美女と腕を組んで歩いている状況は誰もが羨むだろう。でも、俺はセルシ一筋!

 メインヒロインとイチャついている場合ではない。
 セルシに会いたい。

 セルシって誰だ、なんて思っている人のためにもう一度説明しよう。
 
 作中に数分登場する、ほぼモブに近いものの超絶タイプな短髪ショートの美女だ。俺は一目見た瞬間から、彼女に惚れている。
 だから彼女に会わなくてはならない。だからこの麗人メインヒロインの告白も断った。

「ひとつ聞いてもいいかい?」

 またラメセスが口を開く。
 思っていたよりもお喋りだ。もっとクールなキャラだとばかり思っていたけど、実際はそうでもないらしい。

 かなりセリフがカットされていたらしい。人気キャラなんだし、もっとセリフを増やしてやれよ、脚本家!

「ふたりは、付き合っているのかな?」

 この状況を見れば当然の質問。
 
 素早い反応を示したのはシャロットだった。

「はい! 勿論です。学院卒業と同時に婚約しました!」

「へぇ。僕は同じパーティの仲間メンバーになる者として、君達を祝福するよ」

「卒業した時、振ったはずですが!」

 慌てて止め、付き合ってないと訂正するも、あまり効果はない。
 ラメセスもなんとなくわかっているっぽいけど、シャロットの愛の重さには呆れる。

 罪な男だぜ、俺は。

「レッドくん、私のこと、嫌いですか?」

「いやいや、普通に好きだけど。友達として。仲間として。別に異性としてじゃなく」

「え、世界で何よりも好き!? それはもう、言い過ぎですよ~」

 シャロットは耳が遠いらしい。

 頭を抱える俺と、声を上げて笑うラメセス。
 少しずつ、新しい家族パーティが広がっていくような気がしていた。





《次回11話 パーティの名前を決定する》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...