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第5話 パーティを結成する
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ダスケンデール学院を卒業し、メインヒロインからの告白を断ってから2日。
俺は実家に帰って絶世の美女に溺愛されていた。
やっぱり母親はいい。
マザコンと言われても喜んで受け入れよう。
シャロットとは卒業してからも友達だぜっ、っていう感じで、俺はあの告白を受けてすぐに逃げ出した。
まあ、ヤンデレが怖かったっていうのもある。少なくとも、あのまま放置しておけばいい感じで主人公とくっついてくれるんじゃないか?
よくよく考えてみれば、あんな美少女からの告白を断る男って、俺ぐらいなのでは?
やっぱり、罪な男だぜ、俺は。
『レッド、あなたのお友達が来たみたいよ』
昼食を取り終わり、自分の部屋ですっかり退屈していた俺に、母さんの声が掛かった。
なんか嫌な予感がする。
俺のお友達といえば、彼女しかいないと思うけど……。
「よかったわね、卒業してもこうして来てくれて」
「その友達はどこに──」
「あら、もう家に入れたわ」
慌てて部屋を出て、居間に駆け出す俺。
別に嫌じゃない。
嫌じゃないけどっ──。
──親の前でヤンデレムーブかまされるのは困るんですが!!
「レッドくんっ!」
居間に到着した瞬間、柔らかいものが俺の体に直撃し、母さんが驚きの声を漏らす。
客とはシャロットだった。
この世界で最も大切なもの、みたいな感じで俺を抱き締めている。
退屈していたこともあって、嫌というほどでもなかったけど……。
なるほど。
美女に異性として溺愛されるってこんな感じか。
母さんは感動して涙を流している。
俺に恋人ができたと勘違いしているのかもしれない。確かにシャロットは清楚系だし、親からの評価も高そうな正統派美少女だから、母さんとしては嬉しいのかも。
「シャロットちゃん、もしかして息子とは……そういう関係なの? 結婚式はいつ?」
花柄のハンカチで涙を拭きながら、母さんが聞く。
もう完全にシャロットのこと認めてるし。
ていうか結婚式ってなんだよ!
「はい……実はつい先日恋人になりまして……婚約もしています!」
「あら!」
「ですからお母様は私を実の娘のように扱って──」
「ちょっと待て待て!」
暴走しているふたりを、この中で唯一まともな俺が止める。
「俺達は付き合ってないって」
「レッドくん、あの言葉は嘘だったのですか?」
狂気が潜んでいるようにも見える瞳で、俺を見つめるシャロット。
メインヒロインがこんなヤバい奴だなんて、知らなかったよ……トホホ……。
「告白には応えられないって言ったじゃないか」
「あら、どうしてこんな可愛い子からの愛の告白を断ったの?」
「それはちょっと事情がありまして」
母さんからの本気の質問をごたごたと流す。
俺は『英雄物語』に出てくるセルシという女性に心奪われていた。
さほど活躍するキャラじゃないけど、主人公を想う一途な気持ちを見て、完全に落ちてしまったのだ。
この世界に転生したからには、実際に会いたいし、付き合いたい。
俺は本気なんだ。
ずっと物語の中だと思って諦めていた恋が、現実にできそうなのだから。
「お母様、ご安心ください。必ず私がレッドくんの心を奪ってみせます。そして一生彼を幸せにしますから」
「あら、頼もしいわ」
すっかり仲よくなってるし。
友達と母さんの間に友情ができるのは構わないけど、俺を巻き込むのはやめて欲しい。
「レッドくん、そろそろ本題に入ってもいいですか?」
まだ本題じゃなかったんだ。前置きって重いね。
ていうか、ちゃんと本題があったことにも驚きだ。
会いたくて来ちゃった、みたいな可愛い理由なのかと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
「私と、冒険者パーティーを組んでくださいっ!」
俺の警戒とは裏腹に、まったく予想外のことを口にするシャロット。
どうして急に冒険者パーティーなんて言い出す?
「卒業後のことを話した時、冒険者になりたいって言いましたよね?」
「え、まあ、そうだけど」
「ですから私も冒険者になります!」
「え?」
「レッドくんに一生ついていくと誓ったのですから、たとえ険しい道のりだったとしても、どこまでもお供します」
いつ、どこで、何に誓ったんだろう。
そういえばシャロットは誠実で、一度認めた相手に対しては忠実なキャラだった。
物語の中ではそれがアーサー君だったわけだけど、今回は俺に懐いたというわけか。
「いいじゃない。シャロットちゃんになら、息子のこと任せられるわ」
母さんが速攻同意する。
「はい、私にお任せください。戦いも、生活も、夜の楽しい営みも……」
怖い怖い。
「俺は別にひとりでも大丈夫──」
「駄目です。私がいますから。ひとりでする必要はありません」
「は?」
こいつ、何言ってるんだ?
「それに、レッドくんには責任があります」
「責任?」
「私を惚れさせた責任です。もう私はレッドくんなしでは生きられない身体になってしまいました」
「あら、もうそんな関係に──」
「誤解だよ誤解! 母さん、シャロットの言うことにいちいち耳を傾けないで!」
「それに、私、学院にレッドくんしかお友達がいなくて……だって、昼休みも放課後も休日も、ずぅーと一緒でしたし」
確かにそうだけどっ!
そればかりは否定できないけどっ!
というのも、彼女はずっと俺についてきていた。
最初は学院図書館での関係だけだと思っていたのに、気づけば放課後の訓練も、休日の訓練も一緒にしていたし、休日に出掛けるっていう友達っぽいこともたまにしていた。
俺だけじゃなく、シャロットにまで友達がいなかったとは思わなかったけど。
だったら俺のせいで、彼女は友達ができなかった?
はっとした。
俺があまりに異性として魅力的すぎて、シャロットを釘付けにしてしまったのだとしたら……なんて罪な男だ、俺は。
いい男すぎて乙女の心をこんなめちゃくちゃにしてしまうなんて!
「わかった。その責任は取るよ。とりあえず、冒険者パーティを組もう」
「あ、というか、もう冒険者ギルドに私とレッドくんの名前で申請してありますので安心してください。こうなることは必然だったのです」
コノヤロウ!
俺は目をハートにするシャロットと、息子の成長を喜ぶ母さんを前に、膝から崩れ落ちた。
《次回6話 最初の依頼を受ける》
俺は実家に帰って絶世の美女に溺愛されていた。
やっぱり母親はいい。
マザコンと言われても喜んで受け入れよう。
シャロットとは卒業してからも友達だぜっ、っていう感じで、俺はあの告白を受けてすぐに逃げ出した。
まあ、ヤンデレが怖かったっていうのもある。少なくとも、あのまま放置しておけばいい感じで主人公とくっついてくれるんじゃないか?
よくよく考えてみれば、あんな美少女からの告白を断る男って、俺ぐらいなのでは?
やっぱり、罪な男だぜ、俺は。
『レッド、あなたのお友達が来たみたいよ』
昼食を取り終わり、自分の部屋ですっかり退屈していた俺に、母さんの声が掛かった。
なんか嫌な予感がする。
俺のお友達といえば、彼女しかいないと思うけど……。
「よかったわね、卒業してもこうして来てくれて」
「その友達はどこに──」
「あら、もう家に入れたわ」
慌てて部屋を出て、居間に駆け出す俺。
別に嫌じゃない。
嫌じゃないけどっ──。
──親の前でヤンデレムーブかまされるのは困るんですが!!
「レッドくんっ!」
居間に到着した瞬間、柔らかいものが俺の体に直撃し、母さんが驚きの声を漏らす。
客とはシャロットだった。
この世界で最も大切なもの、みたいな感じで俺を抱き締めている。
退屈していたこともあって、嫌というほどでもなかったけど……。
なるほど。
美女に異性として溺愛されるってこんな感じか。
母さんは感動して涙を流している。
俺に恋人ができたと勘違いしているのかもしれない。確かにシャロットは清楚系だし、親からの評価も高そうな正統派美少女だから、母さんとしては嬉しいのかも。
「シャロットちゃん、もしかして息子とは……そういう関係なの? 結婚式はいつ?」
花柄のハンカチで涙を拭きながら、母さんが聞く。
もう完全にシャロットのこと認めてるし。
ていうか結婚式ってなんだよ!
「はい……実はつい先日恋人になりまして……婚約もしています!」
「あら!」
「ですからお母様は私を実の娘のように扱って──」
「ちょっと待て待て!」
暴走しているふたりを、この中で唯一まともな俺が止める。
「俺達は付き合ってないって」
「レッドくん、あの言葉は嘘だったのですか?」
狂気が潜んでいるようにも見える瞳で、俺を見つめるシャロット。
メインヒロインがこんなヤバい奴だなんて、知らなかったよ……トホホ……。
「告白には応えられないって言ったじゃないか」
「あら、どうしてこんな可愛い子からの愛の告白を断ったの?」
「それはちょっと事情がありまして」
母さんからの本気の質問をごたごたと流す。
俺は『英雄物語』に出てくるセルシという女性に心奪われていた。
さほど活躍するキャラじゃないけど、主人公を想う一途な気持ちを見て、完全に落ちてしまったのだ。
この世界に転生したからには、実際に会いたいし、付き合いたい。
俺は本気なんだ。
ずっと物語の中だと思って諦めていた恋が、現実にできそうなのだから。
「お母様、ご安心ください。必ず私がレッドくんの心を奪ってみせます。そして一生彼を幸せにしますから」
「あら、頼もしいわ」
すっかり仲よくなってるし。
友達と母さんの間に友情ができるのは構わないけど、俺を巻き込むのはやめて欲しい。
「レッドくん、そろそろ本題に入ってもいいですか?」
まだ本題じゃなかったんだ。前置きって重いね。
ていうか、ちゃんと本題があったことにも驚きだ。
会いたくて来ちゃった、みたいな可愛い理由なのかと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
「私と、冒険者パーティーを組んでくださいっ!」
俺の警戒とは裏腹に、まったく予想外のことを口にするシャロット。
どうして急に冒険者パーティーなんて言い出す?
「卒業後のことを話した時、冒険者になりたいって言いましたよね?」
「え、まあ、そうだけど」
「ですから私も冒険者になります!」
「え?」
「レッドくんに一生ついていくと誓ったのですから、たとえ険しい道のりだったとしても、どこまでもお供します」
いつ、どこで、何に誓ったんだろう。
そういえばシャロットは誠実で、一度認めた相手に対しては忠実なキャラだった。
物語の中ではそれがアーサー君だったわけだけど、今回は俺に懐いたというわけか。
「いいじゃない。シャロットちゃんになら、息子のこと任せられるわ」
母さんが速攻同意する。
「はい、私にお任せください。戦いも、生活も、夜の楽しい営みも……」
怖い怖い。
「俺は別にひとりでも大丈夫──」
「駄目です。私がいますから。ひとりでする必要はありません」
「は?」
こいつ、何言ってるんだ?
「それに、レッドくんには責任があります」
「責任?」
「私を惚れさせた責任です。もう私はレッドくんなしでは生きられない身体になってしまいました」
「あら、もうそんな関係に──」
「誤解だよ誤解! 母さん、シャロットの言うことにいちいち耳を傾けないで!」
「それに、私、学院にレッドくんしかお友達がいなくて……だって、昼休みも放課後も休日も、ずぅーと一緒でしたし」
確かにそうだけどっ!
そればかりは否定できないけどっ!
というのも、彼女はずっと俺についてきていた。
最初は学院図書館での関係だけだと思っていたのに、気づけば放課後の訓練も、休日の訓練も一緒にしていたし、休日に出掛けるっていう友達っぽいこともたまにしていた。
俺だけじゃなく、シャロットにまで友達がいなかったとは思わなかったけど。
だったら俺のせいで、彼女は友達ができなかった?
はっとした。
俺があまりに異性として魅力的すぎて、シャロットを釘付けにしてしまったのだとしたら……なんて罪な男だ、俺は。
いい男すぎて乙女の心をこんなめちゃくちゃにしてしまうなんて!
「わかった。その責任は取るよ。とりあえず、冒険者パーティを組もう」
「あ、というか、もう冒険者ギルドに私とレッドくんの名前で申請してありますので安心してください。こうなることは必然だったのです」
コノヤロウ!
俺は目をハートにするシャロットと、息子の成長を喜ぶ母さんを前に、膝から崩れ落ちた。
《次回6話 最初の依頼を受ける》
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