【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命

文字の大きさ
上 下
3 / 38

第3話 メインヒロインと友達になる

しおりを挟む
 目の前に並んでいる剣3本は、残酷な表情をしながら嘲笑うように俺を見つめていた。

 ──あいにく、もうお前の入るクラスは決まってるんだよ。

 そう言われているようでなんか癪だ。
 アーサーの入る【ニューエイジ】に自分も、なんて別に思ってない。ただ【ダークエイジ】にさえ入らなければ、それでいいのだ。

 しかーし──。

『レッド・モルドロス、【ダークエイジ】に決定!』

 マクナール先生の凛々しい声が大広間を駆ける。
 
 だよなぁ。

 知ってたけど、なんか悔しい。こんな感じで、自分ではどうにもならないようなことに対して嘆いたところで、何も変わらないんだけどさ。
 どうして俺は悪役に転生したんですかね。

「よろしくお願いします」

 闇派閥のテーブルに行き、先輩達や先に組分けされた新入生達に挨拶する。

 当然挨拶を返してくる奴はいなかった。
 まあ、予想通りだ。

 ていうか、みんな見るからに悪そうな奴らだなぁ。
 確かに映画本編でも、あそこの連中は将来闇の騎士団入りが決まっている、みたいな軽蔑したセリフが出てきたくらいだし。

 友達になれそうな奴がひとりもいないってのはどういうことなのかな? これ、学院として問題では?



 ***



 案の定、俺に友達はできなかった。

 主人公アーサー君は勇者候補が揃う【ニューエイジ】の善良な友達に囲まれ、すっかり楽しそう。
 映画の中でのレッドがここで嫉妬心を募らせていたのも納得できる。

 でも俺はそんな妬むようなことはしない。

 アーサーがどれだけいい奴か知っているのだから。我らが主人公アーサーは、どんなに過酷な状況でも諦めず、周囲を励まし、自分のことよりも他人のことを優先できる、まさに勇者に相応しい人物なのだから。

 その代わりと言ってはなんだけど、とにかく実力を磨いた。
 
 授業では最前列に座って先生の話を1秒たりとも聞き逃さず、実技でも常に自分より強い相手との対戦で少しずつレベルを上げていく。
 同じ組の生徒と授業は共にするわけだけど、半年もしないうちに他のみんなよりも圧倒的に強くなってしまった。

 まあ、【ダークエイジ】は言ってみれば不良の集まり。

 真面目な奴なんて俺だけだ。
 思い返してみれば、俺は前世の頃から真面目だった。
 
 真面目であることなんて、自分の普通を際立たせるつまらない要素でしかないと思っていたわけなのに、ここに来てようやく理解する──真面目であることは全然普通なんかじゃない。
 
 むしろ凄いことなのだ、と。

 そうして俺は【ダークエイジ】で前代未聞の優等生という評価を得ることができた。
 最初はそんなに気にしていなかったものの、14歳になったくらいの頃だろうか。周囲の連中も恋愛というものに本格的に足を突っ込みだした。

 友達は相変わらず同じクラスにはいない。

 入学して4年もたつのに友達がいないなんて、正直あり得ない話ではある。
 でも本当なのだ。
 【ダークエイジ】のみんなは俺のことを自分達以上の変人だと思って近づいてくることもない。

 とはいえ、【ニューエイジ】や【シルバーエイジ】に知り合い、というか、友人っぽい人は何人か存在していた。

 主人公アーサー君は頼もしい友達に囲まれていて関わる隙などなかったわけだけど、メインヒロインのシャロットとは、ひょんなことがきっかけで関わるようになったわけだ。

『今日も図書館でお勉強ですか、レッドくん』

『え、あ、どうも』

 俺は入学してから1周間とたたないうちに、学院図書館の常連になっていた。
 
 毎日放課後には1時間程度ここに通い、魔術や歴史の文献を読み漁る。
 それから少し文学作品でも読んで、リラックス。
 この世界に娯楽は少ないので、すっかり小説を読むことが娯楽の中心となっていた。

 テレビやスマホがない生活も、案外いける。

 それどころか、スマホがいかに1日の時間を奪っていたのかを実感し、完全にスマホアンチとなりました。めでたしめでたし。



 ***



 14歳、4年生のある日、図書館で勉強していた俺に、ひとりの女子生徒が話し掛けてきた。
 それがメインヒロインのシャロットだ。

 彼女は完全に主人公サイドの人間なので、特に大人になってからだけど、悪役レッドのことを忌み嫌うようになった。そんな悪役とメインヒロインが絡むというイベントは、この物語に必要なのだろうか。

「あの……ところで君は……」

「はい、なんでしょう?」

「いやー、どうして俺の隣の席に座って、俺のことをじっと潤った目で見つめてくるのかなー、なんて思ったりして」

 この時がシャロットとの初対面だった。
 というか、今までにすれ違ったりしたことはあるものの、話したのはこれが初めてだ。

 まさしく正統派ヒロインといった感じの顔立ちだ。

 いわゆる清楚系って感じ?
 肌は白く透き通っていて、大きくパッチリとした瞳は青。俺も憧れた碧眼だ。

 肩にかかる長い髪はブロンド。
 金髪に碧眼なんて、王道美女ヒロインの正規ルートを辿っている女だぜ、まったく。

 で、そんな可愛い美少女に隣から見つめられると、読書に集中できないんですが!

「ずっと話し掛けるタイミングを狙っていたんですけど、集中の邪魔をしてしまったら申し訳ないと思っていまして」

「はあ、なるほど」

「ですが、今回勇気を振り絞ったんです、私! どうでしょう?」

「えーっと、何が?」

「お友達になってくれませんか?」

「え!?」

 つい驚いて声を張り上げてしまった。
 ここは神聖なる図書館だというのに。

 すまない、読書愛好家の友よ。
 今回ばかりは許してくれたまえ。

 俺が驚いたのは、シャロットの友達の作り方があまりに大胆で下手であることではなく、こっちを見つめるシャロットの目があまりにも可愛すぎてキュンとしてしまったことでもなく、物語のメインヒロインともあろうお方が、悪役である俺なんかと友達になろうとしているこの状況だ。

 映画を観る立場の観客からすれば、普通に嫌な展開では?
 
 メインヒロインと悪役は、仲良くなってはいけないのだ!
 だって、そうだろう──ハーマ◯オニーと◯フォイが実は大親友、とかだったらなんか嫌じゃね?(厳密に言えば、これは『メインヒロインと悪役』っていうポジションじゃないものの、結構わかりやすい例じゃないかと思う)

「なんでいきなり、そんなことを?」

 俺はアホ面で聞き返した。
 拍子抜けしたような感じだった。

 するとシャロットは少し恥ずかしそうに頬を赤らめて。
 
 僅かに微笑み。

 そして口を開いた。

「他の誰よりも努力する貴方が、とても魅力的でしたので」

 俺を見つめたまま、エヘッと笑う。
 ここだけ見ると小悪魔系美少女だろ。なんだかズルい。

「別に構いませんけど」

 なんだか上から目線な言い方になってしまった。

 でもこの状況でどんな返事をすればいいのかもわからないし、とっさに出てきた言葉に任せるしかない。
 生意気な奴だって思われないといいけど。

 その考えを否定するかのように、シャロットは無垢な笑みを浮かべ、グッと俺に接近した。

 この世界でも、女子って本当にいい香りするんだな。それはシャロットに限っての話なのだろうか。
 とにかくありがとう、異世界よ。

 そうして、俺とシャロットは図書館で話すようになった。
 
 俺からわざわざ話し掛けるわけじゃなく、彼女が結構ガツガツ来るからだ。

 おかしい。

 映画でのシャロットはこんな積極的なキャラではなかったはず。
 やっぱり俺が悪役のテンプレから外れた行動を繰り返していることで、物語に大きな影響を与えてしまっているのかもしれない。

 だとすれば、俺が悪役ではなく、勇者でもなく、主人公を超えるほどの人気キャラになるのも、時間の問題だと思う。





《次回4話 美少女からの告白を断る》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...