上 下
13 / 13

13話 暴動事件?妙だな?

しおりを挟む
「原因不明の暴動事件?」


「うん、最近至る所で起きているらしいよ?」


それはいつも通り魔族倒したり、ダラダラ過ごしている日の事だった。
ベッドに横になっていると、俺に勇者が相談をしてきたのだ。


どうやら勇者によると、最近王国の至る所で暴動が起きているらしい。
ただ、暴動といったものの、普通の暴動ではないようだ。


なぜかいつもケガ人はでていないらしいのだとか。
どれも被害は体を触られたとか、服を脱がされたとか、
そんなものであるらしい。


「問題ではあるとおもうけどさあ、それ俺達がでる必要ある?どちらかといえば衛兵の仕事だろ?」


「そうなんだけど、原因が一切不明なんだよ。みんな急に意識がなくなったって。
数人ならまだしも、数百人が同じように答えてるんだ。おかしいだろ?」


「おかしいとは思うぜ。明らかに催眠系の魔法が使われてる感じもするけど。
王国に危害を加えるってより、愉快犯か別の何かだろ。すぐ捕まるさ」


「そうだといいんだけど・・・」


勇者は歯切れの悪い返事を返した。
まだ納得してないようで、渋い顔をしている。


勇者はかなり心配しているようだが、俺はあまりそうは思わんかな。
催眠系の強みは、自身の正体を明かさずに相手に攻撃を加えられる点だ。


だからもし本気で王国を攻撃するつもりなら、相手側に躊躇する理由はない。
一気にとんでもない被害を出させるはずだ。


にも関わらず、現状ケガ人はいっさいなし。
使えば使うほど特定が進むリスクがあるのに、こんなふざけた使い方をしているのだ。
ただの遊びで使用者は使っている可能性が高いだろう。


王国の衛兵は優秀だ。
愉快犯程度ならすぐに尻尾を掴んで引きずり出す。


そんな愉快犯のために、わざわざ勇者さまがでる必要もねえと思うんだけどな~。


「まあ、気になるってんなら調査してみるか。案外、お前の勘は当たるしな」


「ほんと!?ありがとう、アルト!すぐに戦士と聖女も呼んでくる!」


俺が返答すると、勇者はニッコニコの笑顔を浮かべて、すぐさま支度を始める。
散歩を了承してもらったワンコか、お前は。


ノリノリの勇者にため息をつきながら、俺も準備する。


「で、どうだ、アルト?魔力の反応は」


戦士と聖女とすぐに合流して、実際に暴動があった場所へと赴く。
そうして魔力の残滓を確認していると、戦士が訊ねてきた。


「確かに魔法が使われてるね。洗脳系、いや魅了系かな?
どちらかと言えばサキュバスとかインキュバスが使うやつだね」


「魔王軍の残党か?」


「いや、そうとも限らないんじゃない?どっちも食事のために人にちょっかいをかける奴らだ。
王国にたまたま来た奴が、ご当地グルメを楽しんでるだけかもしれん」


「グルメって・・・」


「人間だって旅行先に行ったら、そこのご当地料理を食べるだろ?
淫魔からしてみれば、同じ事なのだろうさ」


真面目に警戒している戦士に、冗談を交えて答える。


サキュバスやインキュバス達淫魔は、どちらかといえば中立だ。
人間の味方でもなければ敵でもない。


彼ら彼女からしてみれば、ただ食事をしてるだけなのだろう。
そんな奴らにヤメロというのは、ご飯を食べるなと言うに等しい。


以前、必死に取り締まった国もあったが、結末は悲惨だ。
国民の大半が操られたった一夜で滅亡したとの噂もあるくらいだ。


食の恨みはおそろしい。
へたに手を出さない方が得策だろうね。


「しかしやられっぱなしも面白くないもんだ」


「確かに。とはいえ有効な対策があるわけでもねえしなあ」


「倒せないのか?」


「倒せる。けど割に合わんよ。戦うとなれば高確率で市民が盾にされる。
しかも敵側に付かれるリスクも考えると現実的ではないね」


現場を後にし、帰路に着く。


「勇者達の方は何か成果はあるだろうか?」


「さあ?でも無くても相手にこちらが警戒してるってことが伝わればいいさ。
そうすりゃ奴らも自制くらいはしてくれる」


「ずいぶん詳しいんだな?」


「前にインキュバスに会ったことがある。その時に色々とね」


「話せるのか!?」


「普通に。言われなきゃただのイケメンだったよ。
話も通じるし、案外紛れてるのかもしれないぜ?」


「むむむ!そうなのか!まだまだ知らぬことばかりだな、俺も」


戦士は顎を手でさすりながら、うなった。
いやべつに淫魔に詳しい必要はないんじゃないかなあ?
俺も洗脳系の魔法について知りたいから話しただけだし。


しばらく歩いて勇者達と合流する。
予想通り勇者達の方も収穫はないようだ。


でも町では、勇者様が被害を聞いてわざわざ駆けつけてくれたという話で溢れてきている。
人望を手に入れた、という点では大成功だろう。


こういう所が勇者が勇者たるゆえんなんだろうなと、思いました。


「すまない、アルト。徒労に終わってしまったようだ」


「構わんよ。この町の名産が食えたんだ。大満足だよ」


夜、勇者とともに町を出歩く。
勇者は自身の杞憂に皆を付き合わせたことを後悔しているようだ。


真面目くんめ。たいしたことないならないでいいじゃないか。
落ち込んでいる暇が会ったら観光しようぜ、観光!


めちゃくちゃおいしいよ?ここの肉串さん。
ほれ、俺のをやるよ!


「あ、ほんとだ。おいしい」

と、勇者とそんなやりとりをしていると、


「や、やめてください」


というかすかな声がどこからか聞こえてきた。


「なあ、アルト、いま」


「聞こえたな。路地裏からみたいだけど」


「行ってくる!」


「あ、おい!って、いっちまったよ・・・」


勇者は声を聞いた途端、俺の返答も待たずに
声の元へとすっ飛んでいってしまった。


本当に変わらねえやつだよ、勇者は。
俺はそんな真面目くんの後をため息をつきながら、必死に追うのであった。


あいつ速え!
追いつけねえ!


この体本当に魔術以外クソザコなんですけどお!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪役令嬢戦記!~大切な人のために戦います~

naturalsoft
ファンタジー
【2020年大幅な見直しと挿絵の増加、追加執筆中】 どうやら生前大ヒットした国民的乙女ゲームに良く似た世界に転生しました。 現在の私のキャラなのですが、タイトル通り悪役令嬢の立場であるシオン・フィリアス公爵令嬢として産まれ変わりました。 本来なら良くある卒業パーティーで、断罪イベントの中でざまぁされるキャラですが【良く似ている世界】であってゲームとは違うのですよ。偶発的にモンスターの大氾濫(スタンピード)が発生してしまい国内が大いに荒れて大勢の人が死に、国は弱体化しました。それに付け込んで他国も侵略してきたからさー大変です!悪役令嬢物語が戦国乱戦のゲームに早変わり!私、生き残れるのかしら!?ってゆーか、ヒロインよ!何とかしなさいな!えっ、恋愛乙女ゲームだったから何の力も無いですって!? 使えなーい!!!!ヒロインって何でしたっけ??? ※投稿スピード重視の為、誤字脱字は気付き次第直していきます。 ※100話を記念して【漫画】を投稿しました。同名タイトルの漫画もお楽しみ下さい! 【キャラ画像公開しました!イラストでよりイメージしやすくなると思います!】 【漫画版】漫画:少女部門ランキング1位獲得! 【悪役令嬢戦記!パロディ編】絵本部門ランキング1位獲得! (試し書きの練習版で1位とか……) ありがとうございます! (小説より高評価で複雑な気持ちです)

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...