上 下
10 / 13

10話 首だけトカゲとのやり取り

しおりを挟む
「ふふふ!来たか、魔術師アルト!」


今日は尋問されている首だけのファフニールに会いに来ている。
奴が捕まっているのは王国の最重要機密を保管する施設だ。


移動は勇者パーティーの面々であっても、目隠しと、耳栓をつけて行われる。
だからこの施設がどこにあるのかは全く分からない。


厳重なのはいいことだ。
再びこいつに脱走されてもこまるのでね。


「で?なんで俺が呼ばれたの?」


「それが、ファフニールがあなたと話したいと。
会わせてくれれば情報を提供するとのことだったのでアルト様にはご協力をお願いしました」


王国の尋問官が淡々と告げた。


どうやら尋問自体は難航しているみたいだね。
うまくいっているならファフニールの奴がこんなに元気な訳がないし、
奴の要求のために俺に協力を要請する必要もない。


まったく、口が軽いのか、堅いのか、はっきりして貰いたいものだ。
勇者とのときはあんなにペラペラしゃべっていたのによお!


「気をつけろよ、アルト」


「おうよ。行ってくる」


心配する勇者に軽く返答をし、俺はファフニールの前に立った。


「貴様に提案がある。ここにいる者どもを皆殺し、私を解放しろ。
さすれば貴様を魔王軍の幹部としてやろう」


「は!論外だね。誰がお前らの下につくかよ」


「そうか?少なくとも、足手まとい達といるよりは
心地よい生活がまってると思うがな?」


ファフニールは、あおりではなく本当に理解出来ない
という声色で告げた。


魔王とその配下達にとって、強さはすべてだ。
強い奴が上につき、弱い奴はその奴隷。
それが魔王軍の絶対原則。


だから俺が俺よりも弱い奴らに従っているのが、理解出来ないのだろう。


「嫌だね。言いたいことはそれだけか?トカゲ野郎?」


「トカ!トカゲ!?またトカゲと言ったか貴様!?私の名はファフニール!誇り高き竜であるぞ!断じてトカゲ野郎ではない!」


「いいやトカゲだね!斬られたらまた生えてくるところとかそっくりだ!」


「貴様!言わせておけば!貴様こそメスのくせにオスらしい言動をしおって!キャラづけでもしておるのか!」


「キャラづけ!?キャラづけじゃねえよ!俺は正真正銘の男だ!」


「はあ?おぬしがか?冗談も休み休み言うことだな!」


「なんだとテメエ!」


「おおん!」


「ああん!」


コンニャロ~。
言いたい放題いいやがって!


「「ふん!」」


「あの、仲良くしないでくださいね?」


「「しとらんわ!」」


おいトカゲ!
声をそろえるんじゃねえ!
本当に仲いいと思われるだろうが!


「それはこちらの台詞だ!」


となんやかんや言い争ったその後、ファフニールが俺に会わせてくれた対価として
何かしゃべり始めたので、尋問官さんと交代をする。


まったく最悪な気分だぜ!
あのトカゲ野郎!後で覚えてろよ!


「それにしては、楽しそうだったけど?」


はあ?どこをどう見たら楽しそうに見えたんだよ!勇者!
どう見てもお互いのプライドをかけた舌戦だっただろうが!


怒りながら秘密施設を後にした。


「さて、やつはどんな情報を吐いてくれるのかね?」


「どうだろう?でも律儀ではありそうだったね」


尿意を催したのでトイレに向かう。


勇者と連れションしながら、ファフニールについて話した。
彼の言うと通り、ファフニールの奴は律儀のようだ。
俺に会わせてくれたら情報をやると宣言して、会えたら本当に話してくれていた。


交渉ができない奴ではないらしい。
なかなか使い道はありそうだ。


「・・・ところでなんだけどさ」


「うん?なに?」


勇者が会話を中断し、気まずそうに聞いてきた。
どうした?なにか困ったことでもあったのか?
やけに顔を赤くしてるが、今度はなんだい?


「なんで、男子トイレ?」


「は?」


勇者が目を背けながら言った。
今俺は男子トイレの、あの立ってする用のトイレで
お花を積んでいる。


勇者はそれが気に入らないらしい。
思わず変な声が出てしまった。


「なんでって、こうする以外ねえだろ?
息子が無くてちと発射しにくいが、安心しろ、外さねえよ」


「そうじゃないよ!女の子が男子トイレにいるのが問題なんだよ!」


「ああ?中身は俺なんだぞ?今更女子トイレなんかに入れるかよ。
それにいちいち座ってたらめんどくせえだろ?」


「落ち着かないんだよ!頼むから!頼むから~!」


勇者の絶叫が男子トイレに響いた。
なんだコイツ。


別にお前と二人だけなんだからいいじゃねえか。
細かいねえ、真面目くんは。まったく、困っちゃうよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

宝で願いを叶えたら女の子になりましたッ!?

ブレイブ
ファンタジー
ダンジョンの最下層、そこには願いを叶える宝があり、リアは中性的な姿をしていることと自分の不幸体質が嫌で、宝で理想の自分にしようとしたが、宝はなぜかリアを女の子にした

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

バツイチ回復術師はオネエ宰相閣下の腕の中に囚われる ~まさかの朝チュンから始まる恋

Hinaki
恋愛
セシリアは45歳のバツイチでアラフィフ。 今から十年前に夫の浮気とその家族からのモラハラに耐え兼ね爆発した結果離婚となった。 セシリア自身この世界でも数少ない聖属性の魔法を有しており、離婚直後より腕利きのヒーラーとして自立していた。 ある日友人である王妃の招待を受け舞踏会へ参加する。 ほろ酔いと満腹になったお腹を抱え中庭へと歩いていく。 途中一人の体調不良の男性がいた。 セシリアは親切心で声をかけ治療を――――からの記憶が途絶えてしまう。 差し込む光で目覚めたセシリアとセシリアの隣で男性が眠っていた。 勿論お互い全裸である。 これが朝チュンと言うヤツかーい⁉ 心の中で盛大に突っ込みはするけれどもセシリアは完全にパニックに陥っていた。 相手の顔や素性なんて知る余裕は何処にもない。 これから先の人生お一人様を押下すると決めた時から男性と必要以上な接触は全て絶っていた。 脱ぎ捨てられたドレスや下着を拾いつつ素早くそれを身に付ければだ。 彼女は気づかれない様に姿を消した。 ゆるふわ設定です。 どうか温かいお気持ちで読んで下さい(o^―^o)ニコ

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

処理中です...