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今日は帝国の貴族達が住むところをひっそりと抜け出して、平民達が暮らすところに来ている。
いわゆる視察というやつだ。
それとちょっと原作で言うところのイベントがあるので、それをクリアしにいくという目的もある。
私が首とのお別れを回避するためには帝国から逃げるか、革命を起こさないようにするかの2パターンがある。
逃走をすると、帝国の刺客に追われ一生暗殺に怯えることになってしまう。
それは私には無理そうなのでやめておく。
で、肝心な革命を起こさせないを選択するには平民の生活を知って、改善する必要があると思い至ったのだ。
肝心な平民街の様子はとてもひどかった。
しばらく洗っていなであろうボロボロの服を着て、昼間から酔って道ばたで寝ている労働者たち。
みな栄養状態も悪いのか、痩せ細っている。
貴族達が重税を課しているせいだ。
見ていられなかった。
それから私は今回のためにボロボロな服をきて変装しているのだけど、完全に浮いてしまっていた。
服がボロボロでも頬はこけていなし、お風呂にも入っているから体はきれいなのだ。
やはり頭で考えただけの変装ではだめらしい。
次はもっと気をつけようと思った。
「どうか!どうか娘をお助けください!」
そんな風に平民街を歩いていると、誰かが必死に叫ぶ声が聞こえてきた。
声のする方をみると、母親が私と同じ年齢くらいの子を抱えながら男性にしがみついていた。
男性は邪魔そうに母親を蹴り飛ばす。
母親は子どもを守るために手を使い、自分の顔を地面に打ち付けてしまっていた。
みつけた。
やはり原作のイベント通りだ。
「どうしましたか?」
私は予想通りの行動を取っている母親に声をかけた。
「助けてください!娘が、病気で!」
母親はそう言うと私に腕に抱える子どもを見せてきた。
高熱でうなされているようだ。
栄養状態も、まともな治療もない現在、病気は前世よりもおそろしいものになっている。
特に体力のない子どもにしてみれば悪魔だ。
母親には薬どころか食料すら買ってやれそうな余裕はない。
泣き叫び、誰かにすがるしかなにのだろう。
そんな母親の腕の中で苦しむ私と同年代の少女の名前はヘレナ。
平民でありながら魔法が使え、後に帝国を滅ぼす革命を引き起こすことになる元凶。
原作での主人公だ。
本で彼女はここで熱を出し、誰も助けてくれなかったことでひどい人間不信になってしまう。
で、そんなヘレナが学園に入学をして、カッコイイ美男子達とふれあいだんだん人を信じられるようになっていくというのが主なストーリーなわけだ。
「ヘレナ!ヘレナ!お願い、目を開けて!」
でも、そんなストーリーを歩まれては困る。
私は彼女に倒され、首を落とされてしまうのだから。
さて、どうしよう、と思った。
私は魔法が使える。
だからこの子を治してやることもできる。
けれどそれをしたら革命が起こる可能性はのこったままだ。
ここで治すふりをして、彼女には死んで貰えば、反乱を遅らせることもできるだろう。
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
「いやああ!いやよお!」
でも、逆の考えもある。
ここで魔法を使い、彼女を救って貴族に貸しをつくっておくのだ。
そうすれば彼女は革命をおこした際、よい貴族の方もいると葛藤し処刑をとりやめてくれるかもしれない。
人間不信はなくなり、学園へ入学した後に紡がれる物語も変わるはずだ。
そうすれば私を一緒に倒したお仲間さんたちとも協力できなくなる。
お優しい主人公様なのだ。
その善意につけ込ませてもらおう。
私はヘレナの胸に手を当てる。
そして魔法を使って彼女を治療した。
青い炎がヘレナを包み込む。
そして炎が消えると、ヘレナの熱は下がっていた。
「・・・お母さん?」
「え?え?」
ヘレナは意識が戻ったようでうっすらと目を開ける。
もう大丈夫だろう。
母親は何が起こったか分からないという顔をしていた。
ついでに母親の顔の傷も治しておく。
「今のは魔法?まさか、あなたは・・・」
母親がそこまで口を開いたので、唇に指を当て黙ってもらった。
平民街に貴族がいるとばれれば、どんなめに会うかわからないから。
これはナイショなのだ。
「では、私はこれで。またね」
私はヘレナと母親に手を振りながら急いでその場を離れる。
母親はただ唖然としていた。
ヘレナはうっすらと開けた目で私をみている。
きっと彼女とはまた出会う羽目になる。
だから、またね。
じゃあねじゃなくて。
できれば次会うときに敵でないことを祈るばかりだ。
まあでも、打算ありきでも人助けは悪いことではないだろうと思った。
いわゆる視察というやつだ。
それとちょっと原作で言うところのイベントがあるので、それをクリアしにいくという目的もある。
私が首とのお別れを回避するためには帝国から逃げるか、革命を起こさないようにするかの2パターンがある。
逃走をすると、帝国の刺客に追われ一生暗殺に怯えることになってしまう。
それは私には無理そうなのでやめておく。
で、肝心な革命を起こさせないを選択するには平民の生活を知って、改善する必要があると思い至ったのだ。
肝心な平民街の様子はとてもひどかった。
しばらく洗っていなであろうボロボロの服を着て、昼間から酔って道ばたで寝ている労働者たち。
みな栄養状態も悪いのか、痩せ細っている。
貴族達が重税を課しているせいだ。
見ていられなかった。
それから私は今回のためにボロボロな服をきて変装しているのだけど、完全に浮いてしまっていた。
服がボロボロでも頬はこけていなし、お風呂にも入っているから体はきれいなのだ。
やはり頭で考えただけの変装ではだめらしい。
次はもっと気をつけようと思った。
「どうか!どうか娘をお助けください!」
そんな風に平民街を歩いていると、誰かが必死に叫ぶ声が聞こえてきた。
声のする方をみると、母親が私と同じ年齢くらいの子を抱えながら男性にしがみついていた。
男性は邪魔そうに母親を蹴り飛ばす。
母親は子どもを守るために手を使い、自分の顔を地面に打ち付けてしまっていた。
みつけた。
やはり原作のイベント通りだ。
「どうしましたか?」
私は予想通りの行動を取っている母親に声をかけた。
「助けてください!娘が、病気で!」
母親はそう言うと私に腕に抱える子どもを見せてきた。
高熱でうなされているようだ。
栄養状態も、まともな治療もない現在、病気は前世よりもおそろしいものになっている。
特に体力のない子どもにしてみれば悪魔だ。
母親には薬どころか食料すら買ってやれそうな余裕はない。
泣き叫び、誰かにすがるしかなにのだろう。
そんな母親の腕の中で苦しむ私と同年代の少女の名前はヘレナ。
平民でありながら魔法が使え、後に帝国を滅ぼす革命を引き起こすことになる元凶。
原作での主人公だ。
本で彼女はここで熱を出し、誰も助けてくれなかったことでひどい人間不信になってしまう。
で、そんなヘレナが学園に入学をして、カッコイイ美男子達とふれあいだんだん人を信じられるようになっていくというのが主なストーリーなわけだ。
「ヘレナ!ヘレナ!お願い、目を開けて!」
でも、そんなストーリーを歩まれては困る。
私は彼女に倒され、首を落とされてしまうのだから。
さて、どうしよう、と思った。
私は魔法が使える。
だからこの子を治してやることもできる。
けれどそれをしたら革命が起こる可能性はのこったままだ。
ここで治すふりをして、彼女には死んで貰えば、反乱を遅らせることもできるだろう。
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
「いやああ!いやよお!」
でも、逆の考えもある。
ここで魔法を使い、彼女を救って貴族に貸しをつくっておくのだ。
そうすれば彼女は革命をおこした際、よい貴族の方もいると葛藤し処刑をとりやめてくれるかもしれない。
人間不信はなくなり、学園へ入学した後に紡がれる物語も変わるはずだ。
そうすれば私を一緒に倒したお仲間さんたちとも協力できなくなる。
お優しい主人公様なのだ。
その善意につけ込ませてもらおう。
私はヘレナの胸に手を当てる。
そして魔法を使って彼女を治療した。
青い炎がヘレナを包み込む。
そして炎が消えると、ヘレナの熱は下がっていた。
「・・・お母さん?」
「え?え?」
ヘレナは意識が戻ったようでうっすらと目を開ける。
もう大丈夫だろう。
母親は何が起こったか分からないという顔をしていた。
ついでに母親の顔の傷も治しておく。
「今のは魔法?まさか、あなたは・・・」
母親がそこまで口を開いたので、唇に指を当て黙ってもらった。
平民街に貴族がいるとばれれば、どんなめに会うかわからないから。
これはナイショなのだ。
「では、私はこれで。またね」
私はヘレナと母親に手を振りながら急いでその場を離れる。
母親はただ唖然としていた。
ヘレナはうっすらと開けた目で私をみている。
きっと彼女とはまた出会う羽目になる。
だから、またね。
じゃあねじゃなくて。
できれば次会うときに敵でないことを祈るばかりだ。
まあでも、打算ありきでも人助けは悪いことではないだろうと思った。
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