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私は盛大に転び頭を打ち付けたことで、前世の記憶を思い出した。


どうやら私は、元々大学生であったらしい。
それが突然胸が痛くなって、視界が途切れてから後は覚えていない。
おそらく心臓麻痺かなにかで死んだのだろう。


前世の記憶と今世の記憶が混じる。


不快さに顔を歪めながら鏡を見つめると、きれいでかわいい少女の姿が写った。


私は、この子を知っている。
自分だからと言うわけではない。


前世の記憶として、知っているのだ。


名前は確か、マリー・トワネット。


昔大好きで何度も読み返していたファンタジー小説にでてくる悪役令嬢そのものだった。


国が飢饉に陥りながらも自身は贅沢することをやめず、住民達が明日食べるパンもないのだ!と必死に訴えたにも関わらず鼻で笑いながら、ではケーキをたべればいいじゃない?と返した悪女。


最終的には、主人公がおこした反乱で倒されて、断頭台で処刑。
国は平和になってめでだしめでたしのハッピーエンドだったはず。


そんな女になぜ私が、と心で愚痴りながら、まずは状況確認だと決心するのであった。


部屋を見ると豪華な装飾が施されたもので溢れている。
テーブルにはお皿一杯のケーキやらお菓子。


どれ一つとっても、平民には絶対に手が届かない高級品だ。


小説では国は貴族達の浪費によって経済不安や飢饉が
おこり、革命にいたってしまった。


これ、まずいのでは?


数日後。


いろいろ確認をしてみたが、やっぱり私の予測は当たっているようだ。


私のいる国はロザ帝国。
ロザ大陸の大半を支配する大国だ。


そして住民は貴族、平民に区分され、
貴族には祝福を、平民には重税を与えている。


私ことマリーは貴族の生まれで相当いい思いをしているようだ。


砂糖がまだとても貴重な時代に、たっぷりと使ったお菓子を日常的に与えられ、服や宝石も毎日あたらしいものが送られてくる。


帝国を支える貴族の中でも、さらに位が上の大貴族なのだから当然なことであるらしい。


で、当然のように貴族の皆様は働いていない。


ここで問題、この高級品は誰のお金で購入されているでしょう?


A、平民達の血税、である。


・・・このままだと処刑ルート直行かもしれない。


確か革命が起こるのはマリーが18歳の時。
今の私が5歳だそうだから13年後のことだ。


しかし革命の火種はかなり昔からくすぶってきていたはずなので対処するならば早いにこしたことはないだろう。


処刑台で首ちょんぱだけは絶対に嫌だ。
避けるためにも色々努力をしようと決意し、今日は眠るのであった。



次の日。


今日は魔法書を読んで勉強をしている。


この世界には魔法というモノが存在していて、何もないところから火をおこしたり風を起こしたりすることができる。


なぜか読んだだけで青い炎をだせるようになったわ。
こんなに簡単なんだ。魔法って。


とりあえず自分で自分を守れるだけの力はほしい。
だから魔法の練習は必死にやろうと思う。


帝国において身分が貴族と平民にわけられているのも、この魔法のせいだった。


魔法が使える人間が貴族で、使えない人が平民だ。


魔法は強い。だから魔法が使えない平民が貴族に反乱を起こそうモノなら一瞬で鎮圧されてしまう。


貴族達はその圧倒的な力で平民を押さえつけて、高い税金をむしり取っているのだ。


で、そんな帝国貴族の生活を終わらせたのがこの物語の主人公。
平民として産まれた何の変哲もない少女であったが、生まれつき魔法が使えたため、貴族に対抗。


結果、彼女を筆頭にした革命がおきて帝国は崩壊し、貴族の皆様は首と胴体がさようならされたわけだ。


もし私が首チョンパを回避したいならば逃げるか、革命を起こさせないか、の2択になる。


まだ革命まで時間があるから急いで決断する必要はないが考えておかねばならない。


自分の首がかかっているのだ。
頑張らない理由はなかった。
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