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8話
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ルーク視点。
朝、目を覚ます。
日がすでに昇っていた。
お昼近くだ。
急いでベットから飛び起きた。
遅刻だ。
完全に寝過ごした。
冷や汗をかく。
「おい!どうして起こさないんだ!」
大声で叫んだ。
起こすのは侍女の仕事だ。
にも関わらず、その仕事を怠慢していた。
そのせいで怒られるのは僕なんだぞ。
仕事をしない奴に払う金はない。
解雇してやろうと、怒りながら部屋を出た。
そこで気づく。
違和感に。
屋敷は静まりかえっていた。
まるで誰もいないかのように。
「な、なんだ!?」
物音が一切無い。
話し声も、忙しそうに移動する音も。
走りながら各部屋を回った。
どこにも人の気配はなかった。
それどころか荷物すら運び出されている。
たった一夜だ。
寝て起きただけの時間だ。
いったいそんな短時間に、何があったというのだ。
「サリア!」
自身の妻の名を叫ぶ。
部屋に入った。
だが、彼女の姿はない。
「これは!?」
机には、一枚の書類だけが残されていた。
紙を手に取って、読む。
あなたは、選択を間違えた。
そう、書かれていた。
背筋が凍った。
思い出すのは、サリアの言葉。
「本当に、ウソは、ついていないのよね?」
「あの野郎!」
サリアは、気づいていたのだ。
浮気の事について。
その上で、彼女は問うた。
浮気をしているんかどうかと。
舐めた女だ!
僕がいなければ何もできないというのに!
知らないままでいれば、幸福であったものを。
わざわざ自分の方から、壊しにいくなど。
「サリア!」
紙を破いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ルーク!お前は、何をしたのだ!?」
一度、実家へと帰った。
金も、みなの行き先もわからないためだ。
実家につくと、両親が駆け寄ってくる。
襟を掴まれ、問い詰められる。
まるで泥棒を問い詰めるかのように。
「な、なんのことだよ!?」
思わずとぼけた。
両親のここまで鬼気迫る姿をみるのは、久しぶりだった。
「お前が浮気したと、みんなが言っている。賠償の請求も来た!どうしてくれるのだ!この馬鹿息子」
「へ?」
拳が飛んでくる。
視界が揺れた。
血の味がして、頬がジンジンと痛む。
殴られた、と気づくには、もう少し時間がかかった。
「今すぐ、謝罪をしにいくぞ!」
両親に掴まれ、動かされる。
まるで家畜でも連行する際のように。
つれていかれたのは、サリアの別宅だった。
結婚の際に、義両親が住むために建てた屋敷だ。
そこにつれて行かれる。
「このたびは、誠に、申し訳ございませんでした。サリア様に直接会って、謝罪を」
両親が屋敷の前で頭を下げる。
地面に頭をこすりつけ、震える声で。
「ふふふふ、何あれ」
「ほら、サリア様の」
「ああ、不倫男ね」
通行人達がそれをみて、笑った。
不倫男。
どうやら噂はとても広がっているようだ。
どうして、こんなことになった。
昨日までは、何事もなかったじゃないか。
「あら?ずいぶんとおそかったですね」
聞き慣れた声が聞こえた。
思わず、振り向く。
目の前には、サリアがいた。
まっすぐこちらを見つめていた。
青い瞳で、見下すように。
「な、なんで・・・」
違和感を覚えた。
サリアの姿に。
なにかが、おかしい。
そして気づいた。
目が、合っていることに。
盲目の彼女と、目が合ったことはない。
目が合うと言うことは、見えているという証拠だ。
「ま、まさか!?まさか!?」
「気づきましたか?私、もう、目が見えているのですよ」
サリアは微笑んだ。
その笑みは、まるで悪魔のようであった。
朝、目を覚ます。
日がすでに昇っていた。
お昼近くだ。
急いでベットから飛び起きた。
遅刻だ。
完全に寝過ごした。
冷や汗をかく。
「おい!どうして起こさないんだ!」
大声で叫んだ。
起こすのは侍女の仕事だ。
にも関わらず、その仕事を怠慢していた。
そのせいで怒られるのは僕なんだぞ。
仕事をしない奴に払う金はない。
解雇してやろうと、怒りながら部屋を出た。
そこで気づく。
違和感に。
屋敷は静まりかえっていた。
まるで誰もいないかのように。
「な、なんだ!?」
物音が一切無い。
話し声も、忙しそうに移動する音も。
走りながら各部屋を回った。
どこにも人の気配はなかった。
それどころか荷物すら運び出されている。
たった一夜だ。
寝て起きただけの時間だ。
いったいそんな短時間に、何があったというのだ。
「サリア!」
自身の妻の名を叫ぶ。
部屋に入った。
だが、彼女の姿はない。
「これは!?」
机には、一枚の書類だけが残されていた。
紙を手に取って、読む。
あなたは、選択を間違えた。
そう、書かれていた。
背筋が凍った。
思い出すのは、サリアの言葉。
「本当に、ウソは、ついていないのよね?」
「あの野郎!」
サリアは、気づいていたのだ。
浮気の事について。
その上で、彼女は問うた。
浮気をしているんかどうかと。
舐めた女だ!
僕がいなければ何もできないというのに!
知らないままでいれば、幸福であったものを。
わざわざ自分の方から、壊しにいくなど。
「サリア!」
紙を破いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ルーク!お前は、何をしたのだ!?」
一度、実家へと帰った。
金も、みなの行き先もわからないためだ。
実家につくと、両親が駆け寄ってくる。
襟を掴まれ、問い詰められる。
まるで泥棒を問い詰めるかのように。
「な、なんのことだよ!?」
思わずとぼけた。
両親のここまで鬼気迫る姿をみるのは、久しぶりだった。
「お前が浮気したと、みんなが言っている。賠償の請求も来た!どうしてくれるのだ!この馬鹿息子」
「へ?」
拳が飛んでくる。
視界が揺れた。
血の味がして、頬がジンジンと痛む。
殴られた、と気づくには、もう少し時間がかかった。
「今すぐ、謝罪をしにいくぞ!」
両親に掴まれ、動かされる。
まるで家畜でも連行する際のように。
つれていかれたのは、サリアの別宅だった。
結婚の際に、義両親が住むために建てた屋敷だ。
そこにつれて行かれる。
「このたびは、誠に、申し訳ございませんでした。サリア様に直接会って、謝罪を」
両親が屋敷の前で頭を下げる。
地面に頭をこすりつけ、震える声で。
「ふふふふ、何あれ」
「ほら、サリア様の」
「ああ、不倫男ね」
通行人達がそれをみて、笑った。
不倫男。
どうやら噂はとても広がっているようだ。
どうして、こんなことになった。
昨日までは、何事もなかったじゃないか。
「あら?ずいぶんとおそかったですね」
聞き慣れた声が聞こえた。
思わず、振り向く。
目の前には、サリアがいた。
まっすぐこちらを見つめていた。
青い瞳で、見下すように。
「な、なんで・・・」
違和感を覚えた。
サリアの姿に。
なにかが、おかしい。
そして気づいた。
目が、合っていることに。
盲目の彼女と、目が合ったことはない。
目が合うと言うことは、見えているという証拠だ。
「ま、まさか!?まさか!?」
「気づきましたか?私、もう、目が見えているのですよ」
サリアは微笑んだ。
その笑みは、まるで悪魔のようであった。
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