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2章 王国編

43話

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「もう動いて平気なのかい?」


「はい。だいぶ良くなりました」


村のお仕事を手伝いながら、質問に答える。


村に来てから、二日がたった。
体調は改善してきている。


傷口はまだ痛む。
けれどふらつきも、気持ち悪さも引いていた。


移動は、まだ厳しそうだ。
歩いたりすると再び傷口が開くかもしれない。


だから、絶対に安静に。
家から出てはいけないと、注意された。


で、今、村の女性達と共に、糸を紡いでいるわけだ。
働かざるもの、食うべからず。


せめて治療と食事分は返したいと思い、手伝わせていただいている。


手紙はすでに送ってもらった。
下手に動けば、逆に合流が遅れるかもしれない。


「ほら、踏ん張れ!坊主!」


「グヌヌヌヌ!」


スグルは外で力作業をしているようだ。
踏ん張る声だけ、聞こえてきた。


「それにしても、災難だってね~、崖から落ちたんだって?」


「はい。まさかこんなことになるとは、思いもよりませんでした」


みなさんには、真実を伝えていない。
森で薬草を採っていたら、二人で崖に落ちたと説明した。


まだばれてはいないようだ。
私達が皇女と王子で、誘拐されたという事実は。


まだ誰が味方なのかわからないのだ。
正体を明かすのは最小限にする。


「さて、そろそろ食事にするべえ」


そう女性達が言い、お昼を作り始めた。
少し私も手伝う。


食事は、なかなかのモノだった。


石のように堅いパンがひとかけら。
それに野草をいれたスープが並ぶ。


別に嫌がらせを受けているわけではない。
村の人全員が、同じ食事であった。


「悪いなあ、ケガをしてんのに、こんなもんしか食わせらんなくて」


「みいんな、貴族様がもっていっちまうんだ」


村の皆さんが、思い思い愚痴を吐く。
そうやら生活はかなり厳しいようだ。


パンをスープに付けて、口に運ぶ。


「おいしいです」


みなさんに、感謝を告げた。


「・・・・・・うげぇ」


それに対し、スグルは気持ち悪そうな顔をしていた。
どうやら食事になれないようだ。


口を手で押さえている。


「よく、食べられるね」


スグルがこっそり耳打ちしてきた。
その言い方は失礼だろう。


大切な食料を分けてくれた、みなさんに。
確かに、貴族からしてみれば、粗末かもしれない。


でも、みなこれを食べて生きてるのだ。
自分の食べるものを否定されて、嬉しくはならない。


スグルの口にパンを押し込む。
これ以上、無駄口を叩かせないために。


スグルはモガモガとしていた。


「おい!みんな!みろ、これを!」


そうやって食事を取っていると。
別の男性がこちらに駆け寄ってきた。


彼の手には、ライフルが握られている。
確か、王国が使用しているものだ。


思わず目を見開く。


軍隊の装備は厳重に管理されている。
市民では手に入らないはずだ。


それなのに、なぜ。


「おめえ、それどこで手に入れたんだ!」


「くれたんだ!商人さんがよお!これで動物でも撃って食えってなあ!」


ウソだ。


ありえない。
あれは軍の装備だ。


しかも今現在使われているもの。
動物を撃つならば、猟銃で十分だ。


「ねえ、あれって」


「はい、おそらく、盗まれたものですね」


スグルも気づいたらしい。
こっそり情報を共有する。


胸が、ざわざわとした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おい!急いで銃を隠せ!あんた達も、家に隠れてろ!」


数時間後。


村が慌ただしくなった。
何事だろうと見つめていると、家に入らされた。


みなさんに隠れてな、と念を押される。


「な、なに!?」


「わかりません」


一応、言うことを聞いておく。
部屋の中に隠れておく。


こっそり、外を見ながら。


「ふん!いつ来ても寂れた村だな!」


すると馬に乗った人間達が来る。
王国の制服を着ている人間だ。


偉そうにふんぞり返り、村へと入ってきた。


「おい、今回の分を渡せ」


「はは、こちらになります」


村の皆さんが、何かを差し出す。
小麦や布などを。


あれは徴税官だ、と気づいた。
村から税金を集めているのだ。


村の人が苦しいと嘆いていた元凶。
それが、目の前にいた。


「・・・足りないぞ」


「へ?いえ、そ、そんなはずは!前回と同じはずです」


「馬鹿者!税は上がったのだ!そんな事も知らぬのか!貴様らは!」


村人がムチで叩かれた。。
地面に倒れ、そのまま何度も叩かれ続けている。


「無駄な!労力を!かけさせるな!」


「お、おやめください!それに急に増税だなんて!あんまりだ!」


「知ったモノか!」


さらに叩かれる。
とても見ていられない状況だった。


「おい、何を手間取っているのだ」


「は!申し訳ありません。二アール様!」


再び、別の声が聞こえる。
新たに数人、村に入ってきた。


その声には、聞き覚えがあった。
嫌な記憶が、呼び覚まされる。


でっぷりと出たお腹に、長いひげ。
人を家畜のように見下す目を持つ男。


二アール。
私の、養父であった。


ここは、義父の領地なのだ。
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