32 / 46
2章 王国編
32話
しおりを挟む
「アリシアさん!一緒に食事を取りませんか?」
「いいえ、アリシア様は私達と食べるのよ!」
「なんですって!」
「文句でもあるのですの!」
いがみ合う二つのグループ。
生徒達が私を取り合う。
お互いににらみつけ合っている。
間に火花が出ている気がした。
私は必死になだめる。
一緒に食べよう、と。
どうして、こうなっているのだろう。
思わずにはいられなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
学校生活が始まった。
ミネルヴァ学園。
王国が誇る最大の教育機関だ。
とても大きな校舎。
充実した設備。
どれをとっても帝国とは引けをとらない。
そのくらいすごい所だった。
私は、そんな学校に通う事になる。
入学初日は大変だった。
留学生。
その立場だけでも注目されるというのに。
私には皇女という肩書きまで追加されるのだ。
当然、生徒たちの注目の的となる。
一瞬で囲まれた。
講義が終わった瞬間に。
そしてたくさんの質問がやってくるのだ。
必死に質問に答える。
あっという間に時間が過ぎる。
最初は不安で一杯だった。
でも、不安を感じる暇も無かった。
実際は。
数日後。
だいぶ落ち着いてきた。
少しずつ、打ち解けていく。
王国のみなさんと。
みなさん、親切な人だった。
手取り足取り教えてくれる。
分からない事、知らないことを。
くだらない事を話す。
同じ年齢のの子ども達と。
同年代と一緒にお話をするのは久しぶりだ。
最近はずっと大人と一緒だったから。
かなり新鮮な感じがした。
なかなか悪くはない、と思った。
こんな生活も。
でも、そんな思いは、長くは続かなかった。
「アリシアさん!一緒に食事を取りませんか?」
少女達が声を掛けてくる。
食事のお誘いだった。
まだ一緒にいたことのない子達だ。
緊張しているようだ。
ソワソワと、手足を動かしている。
私は、よろこんで了承する。
たくさん人と交流するのが、留学の意義だ。
断る理由などなかった。
「いいえ、アリシア様は私達と食べるのよ!」
立ち上がり、彼女らに付いて行こうとする。
すると急に道が塞がれた。
別のグループの子達だった。
私の腕を掴む。
そして引き寄せられた。
自分たちのものであると、主張するように。
「なに?私達が先に声を掛けたんだけど」
「あら?没落貴族達のみなさんが?よくもまあできましたわねえ」
「なんですって!」
「文句でもあるのですの!」
いがみ合う二つのグループ。
生徒達が私を取り合う。
お互いににらみつけ合っている。
間に火花が出ている気がした。
私は必死になだめる。
一緒に食べよう、と。
彼女達の仲はよくないようだ。
お話を聞く限りは。
没落貴族。
その単語だけ、はっきりと聞き取れた。
学園は、寄付で成り立っているらしい。
多くが貴族達からの寄付だ。
その膨大な金額で設備を維持している。
そのせいで階級があるそうだ。
学校内での、生徒の偉さに。
たくさん寄付をしている貴族。
その家の生徒はとても偉い。
そして寄付が少ない家はその逆だ。
とても分かりやすい制度。
でも、好きになれそうではなかった。
「アリシア様!このような者達と共に過ごさぬ方が良いですわよ」
生徒さんが親切に教えてくれる。
王国での常識を。
本当の、善意の気持ちで。
そんな生徒達を、別の生徒達がにらみつける。
そこで私は気づくのだ。
また、とんでもない所に来てしまったのだと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ずいぶんとお疲れですね?」
「うん。ちょっとね」
夜。
パウルさんに指摘される。
どうやら顔に疲れが出ているらしい。
隠せているつもりだったのだけれど。
彼にはお見通しのようだ。
今日あったことを話す。
「普通の事ですね。身分制を採用する国では」
「でも帝国ではなかったよ?」
「帝国がおかしいのです。皇帝陛下の改革のたまものですよ。内戦という対価を払うことになりましたが」
パウルはあきれたように言った。
彼も身分制というものを嫌っているようだ。
ため息までついている。
実にくだらない、と。
「染まらないでくださいよ、アリシア様」
「染まらないよ」
「なら、いいです」
パウルは短く返事をした。
「みなあなたを狙って来ます。頑張って逃げてください」
「助けてよ」
「さあ?その程度はご自身で解決してください。次期皇帝は、そのくらいできませんとね」
パウルは軽口を叩いた。
私はその軽口に言い返す。
そして気づかなかったのだ。
彼が、次期皇帝、と言っていたことに。
「いいえ、アリシア様は私達と食べるのよ!」
「なんですって!」
「文句でもあるのですの!」
いがみ合う二つのグループ。
生徒達が私を取り合う。
お互いににらみつけ合っている。
間に火花が出ている気がした。
私は必死になだめる。
一緒に食べよう、と。
どうして、こうなっているのだろう。
思わずにはいられなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
学校生活が始まった。
ミネルヴァ学園。
王国が誇る最大の教育機関だ。
とても大きな校舎。
充実した設備。
どれをとっても帝国とは引けをとらない。
そのくらいすごい所だった。
私は、そんな学校に通う事になる。
入学初日は大変だった。
留学生。
その立場だけでも注目されるというのに。
私には皇女という肩書きまで追加されるのだ。
当然、生徒たちの注目の的となる。
一瞬で囲まれた。
講義が終わった瞬間に。
そしてたくさんの質問がやってくるのだ。
必死に質問に答える。
あっという間に時間が過ぎる。
最初は不安で一杯だった。
でも、不安を感じる暇も無かった。
実際は。
数日後。
だいぶ落ち着いてきた。
少しずつ、打ち解けていく。
王国のみなさんと。
みなさん、親切な人だった。
手取り足取り教えてくれる。
分からない事、知らないことを。
くだらない事を話す。
同じ年齢のの子ども達と。
同年代と一緒にお話をするのは久しぶりだ。
最近はずっと大人と一緒だったから。
かなり新鮮な感じがした。
なかなか悪くはない、と思った。
こんな生活も。
でも、そんな思いは、長くは続かなかった。
「アリシアさん!一緒に食事を取りませんか?」
少女達が声を掛けてくる。
食事のお誘いだった。
まだ一緒にいたことのない子達だ。
緊張しているようだ。
ソワソワと、手足を動かしている。
私は、よろこんで了承する。
たくさん人と交流するのが、留学の意義だ。
断る理由などなかった。
「いいえ、アリシア様は私達と食べるのよ!」
立ち上がり、彼女らに付いて行こうとする。
すると急に道が塞がれた。
別のグループの子達だった。
私の腕を掴む。
そして引き寄せられた。
自分たちのものであると、主張するように。
「なに?私達が先に声を掛けたんだけど」
「あら?没落貴族達のみなさんが?よくもまあできましたわねえ」
「なんですって!」
「文句でもあるのですの!」
いがみ合う二つのグループ。
生徒達が私を取り合う。
お互いににらみつけ合っている。
間に火花が出ている気がした。
私は必死になだめる。
一緒に食べよう、と。
彼女達の仲はよくないようだ。
お話を聞く限りは。
没落貴族。
その単語だけ、はっきりと聞き取れた。
学園は、寄付で成り立っているらしい。
多くが貴族達からの寄付だ。
その膨大な金額で設備を維持している。
そのせいで階級があるそうだ。
学校内での、生徒の偉さに。
たくさん寄付をしている貴族。
その家の生徒はとても偉い。
そして寄付が少ない家はその逆だ。
とても分かりやすい制度。
でも、好きになれそうではなかった。
「アリシア様!このような者達と共に過ごさぬ方が良いですわよ」
生徒さんが親切に教えてくれる。
王国での常識を。
本当の、善意の気持ちで。
そんな生徒達を、別の生徒達がにらみつける。
そこで私は気づくのだ。
また、とんでもない所に来てしまったのだと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ずいぶんとお疲れですね?」
「うん。ちょっとね」
夜。
パウルさんに指摘される。
どうやら顔に疲れが出ているらしい。
隠せているつもりだったのだけれど。
彼にはお見通しのようだ。
今日あったことを話す。
「普通の事ですね。身分制を採用する国では」
「でも帝国ではなかったよ?」
「帝国がおかしいのです。皇帝陛下の改革のたまものですよ。内戦という対価を払うことになりましたが」
パウルはあきれたように言った。
彼も身分制というものを嫌っているようだ。
ため息までついている。
実にくだらない、と。
「染まらないでくださいよ、アリシア様」
「染まらないよ」
「なら、いいです」
パウルは短く返事をした。
「みなあなたを狙って来ます。頑張って逃げてください」
「助けてよ」
「さあ?その程度はご自身で解決してください。次期皇帝は、そのくらいできませんとね」
パウルは軽口を叩いた。
私はその軽口に言い返す。
そして気づかなかったのだ。
彼が、次期皇帝、と言っていたことに。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
933
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる