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2章 王国編

29話

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「お久しぶりです、アリシア様」


「様はやめてください、艦長さん」


帝国歴、1211。


血で血を洗う内戦。
あれから2年の月日がたった。


帝国はすさまじい勢いで復興を遂げている。


焼け野原と、残骸。
多くの人々が悲しみにくれる。


まるで地獄のような状況。


だが、そんな地獄は、もうどこにもない。


人々は笑う。
子ども達が駆け回る。


至る所で新しい建物が建つ。


まだ、みんなの心に傷はあるけれど。
誰もが、前を向けている。


明日は今日よりも良くなると。
希望に満ちあふれている。


帝国は、立ち直ったのだ。


「大きくなられましたな」


「はい!艦長さんも、新型艦はどうですか?」


「少し癖はありますが、いいですよ。さすが彼女の姉妹なだけあります。ぜひまたお越しください。あの馬鹿共も喜びますよ」


艦長さんと微笑み合う。
新しい帝国をみつめながら。


たくさんの思い出が思い出される。


2年前。


リヴァイヤサンに拾われた時の事を。
彼女の艦内で、兵士さん達ともに過ごした日々を。


内戦が終わった後。


私は、兵士さん達とお別れした。
そして父の元でいろいろとお仕事をした。


復興のための資金。
それらを集めるために各国を訪問する日々。


寝る間も惜しんで、マナーを学ぶ。


慣れないことで、大変だった。
たくさん失敗もしてしまった。


けれど、良かったと思う。

頑張った甲斐があったというものだ。
こうして復興した帝国をみていると。


艦長さんたちは、戦艦に戻っている。
リヴァイヤサンは、もういない。


今は、ドレットノート、という船に、彼らは乗っている。


兵士さん達は、そのままだ。
私の居場所が、そのまま残っている。


また彼らと一緒に過ごしたい。
心から、そう思う。


臣下さんから小言を言われそうだけど。
これだけは、譲れないのだ。


「ずっと、こんな日々が続いてほしいものですな」


「・・・共和国、ですか?」


「ええ、最近また活発になってきました。よく飽きないモノですよ」


艦長さんがため息をつく。


共和国。


帝国の北にある国の事だ。
規模は帝国の三分の一くらい。


だが何度も帝国と戦争をした歴史を持つ国だ。


内戦時はエルメラを支援した。
そして何度も帝国軍を妨害したそうだ。


内戦の後遺症は、まだ多く残っている。
特に国同士の関係は、ひどいモノだ。


帝国が劣勢だという偽情報。
その情報で一部の国は反乱軍についた。


でも、実際勝ったのは帝国だ。


反乱軍についてしまった国は、さあ大変。


必死に頭をさげるもの。
敵対行動を続けるもの。


いやいや裏切っていませんよ、とウソをつくもの。


実に多様な態度を取っている。
共和国も、そんな問題児の一人だ。



父も、臣下さん達も、あきれていた。
こいつらにプライドはないのか、と。


少し不安に思う。


「ご安心ください。今の我々ならば、負けません」


すると艦長さんが力強く言った。
安心させようとしてくれているようだ。


思わず、笑う。


助けていただいてばかりだ。
リヴァイヤサンのみなさんには。


戦場で戦うことが兵士さんたちの仕事。
なら、政治で戦うのが私達の仕事だ。


彼らを、無駄な戦争に行かせない。
そのために、戦う。


頑張ろう、と思った。
今までの恩を、返せるように。


「アリシア様、陛下がお呼びです」


しばらく艦長さんと話す。
すると父からの呼び出しがかかった。


予定はなかったはずだ。
緊急の用事なのだろう。


「すみません、艦長さん」


「いえいえ、では、私はこれで。頑張ってください」


「はい!」


手を振りながら艦長さんと別れる。


今度は、必ず船に行こうと思った。
たくさん、お土産もって。


よろこんでもらえるだろうか?


余韻に浸りつつ、歩き出す。


向かうは父の元だ。


「お待たせしました」


「急にすまない」


部屋に入る。
父はこちらを見つめた。


資料を片手に持ちながら。


父も大忙しだ。


ボロボロの帝国を復興させるために。
寝る間も惜しんで働いている。


けれど、共にいる時間は減らしていない。


今までの空白を埋めるように、
この2年間は多くの時間を共に過ごした。


分かった気がした。
父と過ごして母の言っていたことが。


父は、案外さみしがり屋だ。
表情には出さないけれど。


「どうしましたか?」


「ああ、これを見てくれ」


資料を手渡される。
内容を読んでみる。


「留学?」


資料には、私が王国に留学してみてはどうか、という趣旨の言葉が書かれていた。
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