29 / 46
2章 王国編
29話
しおりを挟む
「お久しぶりです、アリシア様」
「様はやめてください、艦長さん」
帝国歴、1211。
血で血を洗う内戦。
あれから2年の月日がたった。
帝国はすさまじい勢いで復興を遂げている。
焼け野原と、残骸。
多くの人々が悲しみにくれる。
まるで地獄のような状況。
だが、そんな地獄は、もうどこにもない。
人々は笑う。
子ども達が駆け回る。
至る所で新しい建物が建つ。
まだ、みんなの心に傷はあるけれど。
誰もが、前を向けている。
明日は今日よりも良くなると。
希望に満ちあふれている。
帝国は、立ち直ったのだ。
「大きくなられましたな」
「はい!艦長さんも、新型艦はどうですか?」
「少し癖はありますが、いいですよ。さすが彼女の姉妹なだけあります。ぜひまたお越しください。あの馬鹿共も喜びますよ」
艦長さんと微笑み合う。
新しい帝国をみつめながら。
たくさんの思い出が思い出される。
2年前。
リヴァイヤサンに拾われた時の事を。
彼女の艦内で、兵士さん達ともに過ごした日々を。
内戦が終わった後。
私は、兵士さん達とお別れした。
そして父の元でいろいろとお仕事をした。
復興のための資金。
それらを集めるために各国を訪問する日々。
寝る間も惜しんで、マナーを学ぶ。
慣れないことで、大変だった。
たくさん失敗もしてしまった。
けれど、良かったと思う。
頑張った甲斐があったというものだ。
こうして復興した帝国をみていると。
艦長さんたちは、戦艦に戻っている。
リヴァイヤサンは、もういない。
今は、ドレットノート、という船に、彼らは乗っている。
兵士さん達は、そのままだ。
私の居場所が、そのまま残っている。
また彼らと一緒に過ごしたい。
心から、そう思う。
臣下さんから小言を言われそうだけど。
これだけは、譲れないのだ。
「ずっと、こんな日々が続いてほしいものですな」
「・・・共和国、ですか?」
「ええ、最近また活発になってきました。よく飽きないモノですよ」
艦長さんがため息をつく。
共和国。
帝国の北にある国の事だ。
規模は帝国の三分の一くらい。
だが何度も帝国と戦争をした歴史を持つ国だ。
内戦時はエルメラを支援した。
そして何度も帝国軍を妨害したそうだ。
内戦の後遺症は、まだ多く残っている。
特に国同士の関係は、ひどいモノだ。
帝国が劣勢だという偽情報。
その情報で一部の国は反乱軍についた。
でも、実際勝ったのは帝国だ。
反乱軍についてしまった国は、さあ大変。
必死に頭をさげるもの。
敵対行動を続けるもの。
いやいや裏切っていませんよ、とウソをつくもの。
実に多様な態度を取っている。
共和国も、そんな問題児の一人だ。
父も、臣下さん達も、あきれていた。
こいつらにプライドはないのか、と。
少し不安に思う。
「ご安心ください。今の我々ならば、負けません」
すると艦長さんが力強く言った。
安心させようとしてくれているようだ。
思わず、笑う。
助けていただいてばかりだ。
リヴァイヤサンのみなさんには。
戦場で戦うことが兵士さんたちの仕事。
なら、政治で戦うのが私達の仕事だ。
彼らを、無駄な戦争に行かせない。
そのために、戦う。
頑張ろう、と思った。
今までの恩を、返せるように。
「アリシア様、陛下がお呼びです」
しばらく艦長さんと話す。
すると父からの呼び出しがかかった。
予定はなかったはずだ。
緊急の用事なのだろう。
「すみません、艦長さん」
「いえいえ、では、私はこれで。頑張ってください」
「はい!」
手を振りながら艦長さんと別れる。
今度は、必ず船に行こうと思った。
たくさん、お土産もって。
よろこんでもらえるだろうか?
余韻に浸りつつ、歩き出す。
向かうは父の元だ。
「お待たせしました」
「急にすまない」
部屋に入る。
父はこちらを見つめた。
資料を片手に持ちながら。
父も大忙しだ。
ボロボロの帝国を復興させるために。
寝る間も惜しんで働いている。
けれど、共にいる時間は減らしていない。
今までの空白を埋めるように、
この2年間は多くの時間を共に過ごした。
分かった気がした。
父と過ごして母の言っていたことが。
父は、案外さみしがり屋だ。
表情には出さないけれど。
「どうしましたか?」
「ああ、これを見てくれ」
資料を手渡される。
内容を読んでみる。
「留学?」
資料には、私が王国に留学してみてはどうか、という趣旨の言葉が書かれていた。
「様はやめてください、艦長さん」
帝国歴、1211。
血で血を洗う内戦。
あれから2年の月日がたった。
帝国はすさまじい勢いで復興を遂げている。
焼け野原と、残骸。
多くの人々が悲しみにくれる。
まるで地獄のような状況。
だが、そんな地獄は、もうどこにもない。
人々は笑う。
子ども達が駆け回る。
至る所で新しい建物が建つ。
まだ、みんなの心に傷はあるけれど。
誰もが、前を向けている。
明日は今日よりも良くなると。
希望に満ちあふれている。
帝国は、立ち直ったのだ。
「大きくなられましたな」
「はい!艦長さんも、新型艦はどうですか?」
「少し癖はありますが、いいですよ。さすが彼女の姉妹なだけあります。ぜひまたお越しください。あの馬鹿共も喜びますよ」
艦長さんと微笑み合う。
新しい帝国をみつめながら。
たくさんの思い出が思い出される。
2年前。
リヴァイヤサンに拾われた時の事を。
彼女の艦内で、兵士さん達ともに過ごした日々を。
内戦が終わった後。
私は、兵士さん達とお別れした。
そして父の元でいろいろとお仕事をした。
復興のための資金。
それらを集めるために各国を訪問する日々。
寝る間も惜しんで、マナーを学ぶ。
慣れないことで、大変だった。
たくさん失敗もしてしまった。
けれど、良かったと思う。
頑張った甲斐があったというものだ。
こうして復興した帝国をみていると。
艦長さんたちは、戦艦に戻っている。
リヴァイヤサンは、もういない。
今は、ドレットノート、という船に、彼らは乗っている。
兵士さん達は、そのままだ。
私の居場所が、そのまま残っている。
また彼らと一緒に過ごしたい。
心から、そう思う。
臣下さんから小言を言われそうだけど。
これだけは、譲れないのだ。
「ずっと、こんな日々が続いてほしいものですな」
「・・・共和国、ですか?」
「ええ、最近また活発になってきました。よく飽きないモノですよ」
艦長さんがため息をつく。
共和国。
帝国の北にある国の事だ。
規模は帝国の三分の一くらい。
だが何度も帝国と戦争をした歴史を持つ国だ。
内戦時はエルメラを支援した。
そして何度も帝国軍を妨害したそうだ。
内戦の後遺症は、まだ多く残っている。
特に国同士の関係は、ひどいモノだ。
帝国が劣勢だという偽情報。
その情報で一部の国は反乱軍についた。
でも、実際勝ったのは帝国だ。
反乱軍についてしまった国は、さあ大変。
必死に頭をさげるもの。
敵対行動を続けるもの。
いやいや裏切っていませんよ、とウソをつくもの。
実に多様な態度を取っている。
共和国も、そんな問題児の一人だ。
父も、臣下さん達も、あきれていた。
こいつらにプライドはないのか、と。
少し不安に思う。
「ご安心ください。今の我々ならば、負けません」
すると艦長さんが力強く言った。
安心させようとしてくれているようだ。
思わず、笑う。
助けていただいてばかりだ。
リヴァイヤサンのみなさんには。
戦場で戦うことが兵士さんたちの仕事。
なら、政治で戦うのが私達の仕事だ。
彼らを、無駄な戦争に行かせない。
そのために、戦う。
頑張ろう、と思った。
今までの恩を、返せるように。
「アリシア様、陛下がお呼びです」
しばらく艦長さんと話す。
すると父からの呼び出しがかかった。
予定はなかったはずだ。
緊急の用事なのだろう。
「すみません、艦長さん」
「いえいえ、では、私はこれで。頑張ってください」
「はい!」
手を振りながら艦長さんと別れる。
今度は、必ず船に行こうと思った。
たくさん、お土産もって。
よろこんでもらえるだろうか?
余韻に浸りつつ、歩き出す。
向かうは父の元だ。
「お待たせしました」
「急にすまない」
部屋に入る。
父はこちらを見つめた。
資料を片手に持ちながら。
父も大忙しだ。
ボロボロの帝国を復興させるために。
寝る間も惜しんで働いている。
けれど、共にいる時間は減らしていない。
今までの空白を埋めるように、
この2年間は多くの時間を共に過ごした。
分かった気がした。
父と過ごして母の言っていたことが。
父は、案外さみしがり屋だ。
表情には出さないけれど。
「どうしましたか?」
「ああ、これを見てくれ」
資料を手渡される。
内容を読んでみる。
「留学?」
資料には、私が王国に留学してみてはどうか、という趣旨の言葉が書かれていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
933
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる