13 / 46
1章 帝国編
13話
しおりを挟む
目を覚ます。
魔の前が真っ暗だった。
身動きが取れない。
どうやら手足を縛られているようだ。
狭い何かに押し込められている。
口も塞がれている。
体が揺れる。
どうやら移動しているようだった。
覚えているのは、兵士が来たこと。
3人組の兵士に囲まれて、口を塞がれて、意識を失ったこと。
彼らは言っていた。
エルメア様が、あなたをお待ちです、と。
おそらく連れて行かれるのだろう。
憎き、弟の元に。
理由はすぐに思い付く。
父への、人質だ。
このような小娘の使い道。
それしか考えられない。
エルメアも義父達と同じだ。
私を金の卵を産むヒナだと思っている。
このままだと、父に迷惑がかかってしまう。
そう思い、思いっきり体を動かし、叫んだ。
「ムー!!ムー!!」
「うぉお!」
男性の驚く声が聞こえる。
暴れる私をとめようと押さえつけてくる。
押さえつける。
ということは暴れられたら不味いわけだ。
必死に暴れてやる。
彼らは、私を殺せない。
殺してしまえば、人質にならないから、
されたとしても、痛いことくらいだ。
そういうことは慣れている。
義父達にさんざんやられたのだ。
あれ以上の地獄は、どこにもないだろう。
だから、怖じ気づくな。
「止まれ!」
「クソがあ!」
乾いた音が聞こえる。
世界がぐらりと揺れた。
何かに叩き付けられる。
突然の事に頭をぶつける。
何もわからない。
でも、何か起こっていることだけは、わかった。
「逃げるな!」
「行け!行けえ!」
怒声が飛び交う。
無数の音が飛び交い始める。
「よくもやってくれやがっな」
突然前が明るくなる。
袋から引きずり出された。
目を開く。
目も前には兵士さん達がいた。
怖い顔をして、こちらに銃を向けている。
「テメエのせいで台無しだ!」
頭に何かがあたる。
横を見ると、拳銃だった。
医務室に来た兵士達。
彼らが私を掴み、頭に銃を当てているのだ。
「アリシアちゃん!?なんで!?」
兵士さん達が驚きの声をあげた。
「撃つな!あたるぞ!」
兵士さんが慌てる。
銃を持つ手が震えていた。
必死に仲間達を制止する。
「そうだ、それでいい」
私を掴む兵士達は、ジリジリと下がっていく。
私を盾にして。
下がるたびに、床に血がしたたる。
兵士はケガをしているようだ。
私を使かむ手から血が出ている。
刃物や擦り傷ではない。
もっと大きな何かだった。
「近づいてくるんじゃねえ!」
兵士が発砲をする。
兵士さんたちは身をかがめる。
物陰に隠れ、やり過ごしていた。
反撃をしようと銃を構えるが、顔をしかめた。
撃てないんだ。私がいるから。
私を掴む兵士たちは撃ち続ける。
一方的に。
顔見知りの兵士さん達を。
「ぐう!」
一人の兵士さんが打ち抜かれる。
肩を押さえて倒れる。
血が溢れた。
地面に赤い池を作った。
私のせいだ。
私のせいで、人が傷ついている。
兵士さん達は強い。
普通なら、こんな兵士達には負けない。
でも、私がいるせいで、勝てないんだ。
甲板にでる。
甲板では大砲が火をふいていた。
鼓膜がやぶれてしまいそうな轟音がなる。
リヴァイヤサンも、何かと戦っているようだ。
「来たぞ!」
兵士が海の方を見る。
目線の先には小さな船があった。
少しずつこちらに近づこうとしてきている。
あれに乗らされるのだ。
「卑怯者め」
兵士さん達が叫んだ。
私のせいで、多くの兵士さんがケガをしている。
そして、その現実はこれからも変わらない。
連れ去られたら、今度は反乱軍の盾にされる。
私のせいで、誰かが傷つく。
傷つく人を見ているのが嫌だった。
そんな未来に幸福などない。
それだけははっきりとわかった。
兵士達の顔を見る。
彼らの目線は、兵士さんと船に分かれてる。
誰もこちらを見ていない。
このまま、いれば前と同じだ。
義父達と同じように、すべて奪われてしまう。
大切な兵士さん達を傷付けてしまう。
以前は、父が助けてくれるのを待っていた。
そのせいで、苦しみ続けるはめになった。
でも、今は違う。
「な!?」
油断している兵士に体当たりをする。
兵士はバランスを崩す。
体を大きく揺らし、船の淵に行く。
もう、奪わせはしない。
私の、宝物を。
瞬間、船が揺れた。
何かが爆発したようだ。
ぐらりと船が傾く。
倒れかけていた兵士達は、
さらにバランスを崩した。
そして、そのまま海へと落ちる。
私を、捕まえたまま。
「アリシアちゃん!」
ゆっくりと時が流れる。
兵士さん達が駆け寄ってくるのが見えた。
私の方へと手を伸ばしてくれる。
でも、それよりも速く、落下した。
海へと、真っ逆さまに。
これでいいのだ。
自分のせいで、奪われるくらいなら。
こういう結末のほうが、良いと思った。
魔の前が真っ暗だった。
身動きが取れない。
どうやら手足を縛られているようだ。
狭い何かに押し込められている。
口も塞がれている。
体が揺れる。
どうやら移動しているようだった。
覚えているのは、兵士が来たこと。
3人組の兵士に囲まれて、口を塞がれて、意識を失ったこと。
彼らは言っていた。
エルメア様が、あなたをお待ちです、と。
おそらく連れて行かれるのだろう。
憎き、弟の元に。
理由はすぐに思い付く。
父への、人質だ。
このような小娘の使い道。
それしか考えられない。
エルメアも義父達と同じだ。
私を金の卵を産むヒナだと思っている。
このままだと、父に迷惑がかかってしまう。
そう思い、思いっきり体を動かし、叫んだ。
「ムー!!ムー!!」
「うぉお!」
男性の驚く声が聞こえる。
暴れる私をとめようと押さえつけてくる。
押さえつける。
ということは暴れられたら不味いわけだ。
必死に暴れてやる。
彼らは、私を殺せない。
殺してしまえば、人質にならないから、
されたとしても、痛いことくらいだ。
そういうことは慣れている。
義父達にさんざんやられたのだ。
あれ以上の地獄は、どこにもないだろう。
だから、怖じ気づくな。
「止まれ!」
「クソがあ!」
乾いた音が聞こえる。
世界がぐらりと揺れた。
何かに叩き付けられる。
突然の事に頭をぶつける。
何もわからない。
でも、何か起こっていることだけは、わかった。
「逃げるな!」
「行け!行けえ!」
怒声が飛び交う。
無数の音が飛び交い始める。
「よくもやってくれやがっな」
突然前が明るくなる。
袋から引きずり出された。
目を開く。
目も前には兵士さん達がいた。
怖い顔をして、こちらに銃を向けている。
「テメエのせいで台無しだ!」
頭に何かがあたる。
横を見ると、拳銃だった。
医務室に来た兵士達。
彼らが私を掴み、頭に銃を当てているのだ。
「アリシアちゃん!?なんで!?」
兵士さん達が驚きの声をあげた。
「撃つな!あたるぞ!」
兵士さんが慌てる。
銃を持つ手が震えていた。
必死に仲間達を制止する。
「そうだ、それでいい」
私を掴む兵士達は、ジリジリと下がっていく。
私を盾にして。
下がるたびに、床に血がしたたる。
兵士はケガをしているようだ。
私を使かむ手から血が出ている。
刃物や擦り傷ではない。
もっと大きな何かだった。
「近づいてくるんじゃねえ!」
兵士が発砲をする。
兵士さんたちは身をかがめる。
物陰に隠れ、やり過ごしていた。
反撃をしようと銃を構えるが、顔をしかめた。
撃てないんだ。私がいるから。
私を掴む兵士たちは撃ち続ける。
一方的に。
顔見知りの兵士さん達を。
「ぐう!」
一人の兵士さんが打ち抜かれる。
肩を押さえて倒れる。
血が溢れた。
地面に赤い池を作った。
私のせいだ。
私のせいで、人が傷ついている。
兵士さん達は強い。
普通なら、こんな兵士達には負けない。
でも、私がいるせいで、勝てないんだ。
甲板にでる。
甲板では大砲が火をふいていた。
鼓膜がやぶれてしまいそうな轟音がなる。
リヴァイヤサンも、何かと戦っているようだ。
「来たぞ!」
兵士が海の方を見る。
目線の先には小さな船があった。
少しずつこちらに近づこうとしてきている。
あれに乗らされるのだ。
「卑怯者め」
兵士さん達が叫んだ。
私のせいで、多くの兵士さんがケガをしている。
そして、その現実はこれからも変わらない。
連れ去られたら、今度は反乱軍の盾にされる。
私のせいで、誰かが傷つく。
傷つく人を見ているのが嫌だった。
そんな未来に幸福などない。
それだけははっきりとわかった。
兵士達の顔を見る。
彼らの目線は、兵士さんと船に分かれてる。
誰もこちらを見ていない。
このまま、いれば前と同じだ。
義父達と同じように、すべて奪われてしまう。
大切な兵士さん達を傷付けてしまう。
以前は、父が助けてくれるのを待っていた。
そのせいで、苦しみ続けるはめになった。
でも、今は違う。
「な!?」
油断している兵士に体当たりをする。
兵士はバランスを崩す。
体を大きく揺らし、船の淵に行く。
もう、奪わせはしない。
私の、宝物を。
瞬間、船が揺れた。
何かが爆発したようだ。
ぐらりと船が傾く。
倒れかけていた兵士達は、
さらにバランスを崩した。
そして、そのまま海へと落ちる。
私を、捕まえたまま。
「アリシアちゃん!」
ゆっくりと時が流れる。
兵士さん達が駆け寄ってくるのが見えた。
私の方へと手を伸ばしてくれる。
でも、それよりも速く、落下した。
海へと、真っ逆さまに。
これでいいのだ。
自分のせいで、奪われるくらいなら。
こういう結末のほうが、良いと思った。
10
お気に入りに追加
871
あなたにおすすめの小説

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる