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1章 帝国編
9話
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「クソ!クソ!クソ!なんで負けているんだよ!」
エルメアは机を叩く。
彼は反乱軍の長であり、皇帝クロードの弟だ。
貴族達を率い帝国に反旗を翻した男だ。
前皇帝と現皇帝の妻を毒殺し、
圧倒的な軍備力でクロードを追い詰めていた。
そのはずだった。
だが今の反乱軍に当時の勢いはない。
クロードの策略により多くの軍隊はやられ、
共に反乱を企てた貴族達は処刑されてしまっていた。
帝国は体勢を立て直し、反撃に出てきている。
数日前にも、帝国の新型艦に拠点を潰されたばかりだ。
日に日に反乱軍を裏切るものもでている。
残っているものも、戦意は低い。
みなクロードを恐れているのだ。
下手に抗えば、処刑されてしまう。
処刑されるくらいならば、無駄な抵抗はせずに、降伏したほうが良いと。
「なんで!なんでいつもあいつなんだ!みんな僕じゃなくてあいつの話をする!」
エルメアは頭をかきむしる。
物心ついたときから、彼はクロードと比べられていた。
一歳差の兄は、すべての面で優秀であった。
臣下も、母も、前皇帝も、褒めるのは兄ばかり。
エルメアを見ているモノは、誰もいない。
兄は、弟が持たぬモノをすべて持っていた。
人々の賞賛も、端正な顔立ちも、優秀な頭も、優れた身体能力も、帝位継承権も、美しい妻も、かわいらしい子も、すべて持っている。
どれだけ手を伸ばそうとも手に入らぬものを、持っている。
だから、エルメアは決めたのだ。
兄からすべてを奪ってやろうと。
何も持たぬ自分が、すべて手に入れてやろうと。
そうして彼は、クロードの杯に毒を盛った。
クロードが死ねば、すべて自分のモノになると信じて。
だが、そううまくはいかなかった。
偶然にも、毒杯を、クロードの妻、クロージャがあおってしまったのだ。
クロージャは血を吐いて死んだ。
すぐに原因が調査され、犯人がエルメアだとばれてしまった。
もう、後戻りはできなかった。
すぐさま皇帝も毒殺し、現状に不満を持つ貴族達をかき集めた。
皇帝が死に、動揺している帝国相手に大攻勢をかけた。
多くの忠臣たちを殺した。
クロードの大切なモノを奪ってやった。
そして、あともう少しでクロード自身の首も取れたというのに。
どうして今、劣勢になっているのだ。
「なにか、なにか手は無いか!死にたくない!死にたくない!」
「エルメア様、入ります」
「なんだ!」
「スパイから情報が」
「情報?」
部屋に入って来た部下が書類を渡す。
書類を見つめて、エルメアは目を見開く。
書類には、皇帝クロードの一人娘である、
アリシアが、新型戦艦に乗っている可能性がある。
という情報が載っていた。
「ふふふふふ!あははははははは!」
「エルメア様?」
「あるじゃないか!一発逆転の方法が!あいつの一番の弱点が!」
エルメアは高らかに笑った。
クロードの唯一の弱点。
それは愛情の深さだった。
前皇帝と同じように、彼は血縁となると判断が鈍る。
エルメアはすでにその対象ではない。
だが、実の娘となれば、別だろう。
愛した亡き妻との、子なら。
ずっとアリシアのことは探させていた。
だが、どうしても見つけることが出来ていなかった。
けれど、今、彼女の尻尾はつかめたようだ。
「アリシアを捕まえて、人質にする!そすればあいつはもう動けない!勝てる!まだ勝てるぞ!まっていろよ、クロード!あははははは!」
部屋には、笑い声が響く。
エルメアの奇妙な笑い声が。
エルメアは机を叩く。
彼は反乱軍の長であり、皇帝クロードの弟だ。
貴族達を率い帝国に反旗を翻した男だ。
前皇帝と現皇帝の妻を毒殺し、
圧倒的な軍備力でクロードを追い詰めていた。
そのはずだった。
だが今の反乱軍に当時の勢いはない。
クロードの策略により多くの軍隊はやられ、
共に反乱を企てた貴族達は処刑されてしまっていた。
帝国は体勢を立て直し、反撃に出てきている。
数日前にも、帝国の新型艦に拠点を潰されたばかりだ。
日に日に反乱軍を裏切るものもでている。
残っているものも、戦意は低い。
みなクロードを恐れているのだ。
下手に抗えば、処刑されてしまう。
処刑されるくらいならば、無駄な抵抗はせずに、降伏したほうが良いと。
「なんで!なんでいつもあいつなんだ!みんな僕じゃなくてあいつの話をする!」
エルメアは頭をかきむしる。
物心ついたときから、彼はクロードと比べられていた。
一歳差の兄は、すべての面で優秀であった。
臣下も、母も、前皇帝も、褒めるのは兄ばかり。
エルメアを見ているモノは、誰もいない。
兄は、弟が持たぬモノをすべて持っていた。
人々の賞賛も、端正な顔立ちも、優秀な頭も、優れた身体能力も、帝位継承権も、美しい妻も、かわいらしい子も、すべて持っている。
どれだけ手を伸ばそうとも手に入らぬものを、持っている。
だから、エルメアは決めたのだ。
兄からすべてを奪ってやろうと。
何も持たぬ自分が、すべて手に入れてやろうと。
そうして彼は、クロードの杯に毒を盛った。
クロードが死ねば、すべて自分のモノになると信じて。
だが、そううまくはいかなかった。
偶然にも、毒杯を、クロードの妻、クロージャがあおってしまったのだ。
クロージャは血を吐いて死んだ。
すぐに原因が調査され、犯人がエルメアだとばれてしまった。
もう、後戻りはできなかった。
すぐさま皇帝も毒殺し、現状に不満を持つ貴族達をかき集めた。
皇帝が死に、動揺している帝国相手に大攻勢をかけた。
多くの忠臣たちを殺した。
クロードの大切なモノを奪ってやった。
そして、あともう少しでクロード自身の首も取れたというのに。
どうして今、劣勢になっているのだ。
「なにか、なにか手は無いか!死にたくない!死にたくない!」
「エルメア様、入ります」
「なんだ!」
「スパイから情報が」
「情報?」
部屋に入って来た部下が書類を渡す。
書類を見つめて、エルメアは目を見開く。
書類には、皇帝クロードの一人娘である、
アリシアが、新型戦艦に乗っている可能性がある。
という情報が載っていた。
「ふふふふふ!あははははははは!」
「エルメア様?」
「あるじゃないか!一発逆転の方法が!あいつの一番の弱点が!」
エルメアは高らかに笑った。
クロードの唯一の弱点。
それは愛情の深さだった。
前皇帝と同じように、彼は血縁となると判断が鈍る。
エルメアはすでにその対象ではない。
だが、実の娘となれば、別だろう。
愛した亡き妻との、子なら。
ずっとアリシアのことは探させていた。
だが、どうしても見つけることが出来ていなかった。
けれど、今、彼女の尻尾はつかめたようだ。
「アリシアを捕まえて、人質にする!そすればあいつはもう動けない!勝てる!まだ勝てるぞ!まっていろよ、クロード!あははははは!」
部屋には、笑い声が響く。
エルメアの奇妙な笑い声が。
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