今更やり直したいと言われても。うわべだけの妹と浮気したのはあなたの方でしょうに。

さようなら元彼様。妹と末永くお幸せに。

 あら？急にどうしましたか元彼様。しばらくぶりに会ったと思ったら急に復縁を迫るなんて。それほど考えが変わるような出来事でもあったのでしょうか？


 そんな必死な顔で、痩せ細った姿で僕たちやり直せないかな？などとおっしゃらないでください。もう何もかも手遅れなんですよ。あれだけ人のことを罵倒しておいて、今更被害者ずらしてもなんの同情もできません。今一度自分が私にしたことと、掛けた言葉を思い出してみることをおすすめしますわ。


 え？覚えていない？それは大変ですわね。それならば私が一から教えて差し上げましょう。おやおや、遠慮なんてしないでくださいまし。私にとっても、あなたにとっても大切な事なのですから。


 まず、私とあなたの信頼関係が崩れ始めたのは、あなたが妹と浮気していたことがきっかけですの。何ヶ月も仕事で遅くなると言い訳しながら、妹と会っていたと知ったときはさすがに私も驚きましたわ。


 とっても楽しかったのでしょう？あの子はうわべだけは素晴らしい子ですからね。昔からそうですの。だからきちんと私はお伝えしたのですよ？あの子は危ないから辞めた方がいいと。今回は許すから帰ってきて欲しいと。


 そうしたら、あなたは何と言いましたか？私に何をしましたか？このウソつきめと私を罵倒しましたわよね。お前など妹と違い何の役にも立たないといいながら、たくさん私に平手打ちをくださったのですのよ。忘れたとは言わせませんわ。それともご自身がやったことはすぐに忘れてしまうのかしら？


 そうだったら気の毒ですわ。良いお医者様をご紹介することくらいははできますわよ。一度看てもらうことをお勧めしますわ。


 あら？そんな怒こった顔をしないでくださいまし。あなたのためを思って言っていますのよ。おっと、話がそれてしまいましたわ。いけない、いけない。


 浮気がばれた後、あなたはすぐ、一方的に私との婚約破棄を宣言しましたわ。そしてお前にやるものは一つもないと、婚約以前からの私の持ち物も奪い取ってあなたは私を力ずくで追い出しましたわね。


 その後、すべて売り払って妹のために使ったことも知っていますわ。あの中には母の形見もありましたの。取り戻すのにはひどく苦労したものですわ。そして当時の、何もかも失ったという絶望感はそれはそれは深いものでした。


 そうやって絶望する私をあなたは妹と共に笑って見ていましたわね。それはもう愉快そうに、はしたない声で。今でもあのときの事を思い出すと、私は気分が悪くなりますわ。


 それからは、それはもう大変な日々を過ごしましたの。だって頼れる人も、財産もないんですもの。町中を駆け回って、なんとかお仕事をいただいて少しばかりの食事にありつく日々ですわ。夜に寒い外で凍えながら過ごす辛さなんて、あなたには想像できないでしょう？


 でもそんな辛い日々を何度も繰り返して、少しずつ町の皆様に信頼してもらっていって、たくさん助けていただきましたわ。そのおかげで今、私は生きていられていますの。私の事を心から信頼して頼ってくださる皆様と、私の事を大切にしてくださる旦那様と共に。とても今は暖かくて、充実していて、幸せですの。


 だから、私の人生に、あなたはもう必要ないのです。お互い形は違えど、幸せを手に入れたのですからもう関わらないようにいたしましょう。


 あら？どうしてそんなに焦ったお顔をなさるのかしら？もしかして本当に復縁できるおつもりでしたのでしょうか？


 あらあらあら。あらあらあらあら。なんて都合の良いお方。私の事を便利な道具とでも思っているのかしら？


 すべて知っていますのよ。あなたが妹にすべての財産を食い潰されたくさん借金をしていることも。そして私がこの町の町長の息子と結婚した事を聞いて、借金をなんとかして貰おうと画策していたことも。そんなに私のことを舐めていらしたのね。とても残念ですわ。


 もう、すべて手遅れなのですよ？今更やり直したい？馬鹿を言わないでくださいまし。どうして再びあなたと一緒にならなければいけないのですか？あなたが、ご自身で選んだ道です。最期まで責任をもって進んでくださいな。


 もう二度と私の前には現れないでください。あなたの顔など、見たくもないのですわ。さようなら元彼様。妹と末永くお幸せにしてください。