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16話
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「お前のせいで、すべてが台無しになった」
「私もお父様のせいで人生がめちゃくちゃになりました」
「だからなんだ!お前は家族の幸せをなんだと思っているんだ!」
「父様こそ、私の事をなんだと思っていたのですか?」
「黙れ!」
父が酒瓶を投げてきた。
首を傾けて避ける。
酒瓶は壁にぶつかって崩れた。
避けなければ顔面に直撃していただろう。
実の娘に、なんということをするのだ。
「お前さえ、お前さえ邪魔をしなければ」
「母様はどこに?」
「消えたよ。俺を裏切ってどこかに行ってしまった。領民の奴らの罵声に耐えれなかったんだ。あいつら調子がいいときはさんざんおだててたくせに。悪くなったとたんに手のひらを返しやがった。馬鹿だの、娘を売ったクズだの、俺の気持ちも知らないで、散々罵ってきやがる」
「そうですか」
「お前のせいだ」
父は言葉をつぶやく。
「あの変態に好き勝手やれていればよかったものを。それが一番お似合いだろう。いいや、今も好き勝手されてるんだろう?お前に工場が経営出来るわけないものな。汚れた売女め。消え失せろ」
「あら?お言葉には気をつけたほうがいいですよ?」
私は書類を父に見せつける。
「なんだよ、それ」
「借用書です。父様の借金は私がすべて買い上げました。だからあなたは今、私に借金をしているのですよ?」
「は!だからどうした」
「借りたモノは、返すのが鉄則です。だからあなたには、返していただきます。これからの時間、すべてを犠牲にしてでも」
お願いします、と護衛さんに告げます。
すると護衛さん達が部屋に入って来て父を捕まえました。
このまま体を壊されては困るのです。
だってまだお金を返していただいていないのですから。
「な、なにすんだ!?」
「あなたには私の所有する鉱山で働いていただきます。借金が返し終わるまで、ずっと。安心してください。母様も、必ず見つけ出して送りますので」
「やめろ!離せ!」
「連れていってください」
「母様も必ず見つけ出しましょう。
「フレデリカ!それが産んだ親に対する態度か!この悪魔!売女め!」
父はたくさんの罵声を吐いた。
散々私のことを罵ってくる。
これがもし、愛する人間の言葉であったのならば、辛かっただろう。
涙を流しながら、崩れ落ちていただろう。
でも、今は何も感じなかった。
だって、私はもう彼のことを愛していない。
父などとは思っていない。
ただの裏切り者だ。
人との約束を無下にし、自分だけ幸福を掴む愚か者だ。
そんな人間を、なぜ愛さねばいけないのか。
「頑張ってください。家族皆で。もう二度と、あなた達のことは愛しませんから」
こうして私は父を鉱山へと送った。
父はそこで借金を返し終わるまで働き続けてもらう。
その後、母もすぐに見つけて同じ鉱山に送り込んだ。
私の名前を散々叫んでいたが、容赦はしない。
父と共に仲良く働いてもらっている。
二人で働けば借金を返すスピードは2倍だ。
とても頑張ってほしいと思った。
空になった領地は私のものになった。
とはいえあまり統治している余裕もないので使用人さんにお願いする。
彼は快く引き受けてくれた。
もともとすごく優秀な方だ。
きっとうまくやってくれるだろう。
ただ領民には甘くしすぎないようにとだけ伝えておく。
父がこうなったのも、領民の影響が大きかったから。
同じ轍を踏まないように。
釘はしっかりとさしておく。
「お茶が入りましたよ。姉様」
「ありがとう。ここでの生活には慣れた?アイリス?」
「うん。まだまだ大変だけど、楽しいよ」
ジークを抱きかかえながら、お茶を飲む。
入れてくれたのはアイリスだ。
彼女はうちでメイドとして働いている。
この働き具合で彼女を鉱山送りにするかどうかは決める。
でも、一生懸命やっているようなので、たぶん送らなくて済むだろう。
アルトは私の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
唯一の完全な被害者だ。
この子にはこんなドロドロな家族関係を送ってほしくない。
ここできちんと、育てようと思った。
赤ちゃんが珍しいのか、メイドさんの間でもう人気者になっている。
特にメイド長などはデレデレだ。
健やかに育ってほしいと思った。
「フレデリカちゃ~ん。僕にもいっぱいなでなでしてよ~」
・・・ポルコは相変わらずだ。
私がアルトを抱えているのに嫉妬して、自分も抱えて欲しいとせがんでくる。
コイツといたらアルトに悪影響がでそう。
できるだけ同じ部屋にはいさせないようにしようと思う。
「よ!フレデリカ!」
「アリスさん、お久しぶりです」
「おう!元気だったか?驚いたよ、あの豚を手なずけ手なずけちまうなんて」
「案外慣れると可愛いですよ?アリスさんもどうですか?」
「え!!やだやだ!お前もずいぶん毒されてんじゃねえの!」
「ふふふ、そうかもです」
こうして私の復讐は終わった。
お金とは怖いものだ。
よくも悪くもここまで人生を、人を変えてしまうのだから。
借金は計画的に。
みなさんもどうぞお気を付けくださいな。
「私もお父様のせいで人生がめちゃくちゃになりました」
「だからなんだ!お前は家族の幸せをなんだと思っているんだ!」
「父様こそ、私の事をなんだと思っていたのですか?」
「黙れ!」
父が酒瓶を投げてきた。
首を傾けて避ける。
酒瓶は壁にぶつかって崩れた。
避けなければ顔面に直撃していただろう。
実の娘に、なんということをするのだ。
「お前さえ、お前さえ邪魔をしなければ」
「母様はどこに?」
「消えたよ。俺を裏切ってどこかに行ってしまった。領民の奴らの罵声に耐えれなかったんだ。あいつら調子がいいときはさんざんおだててたくせに。悪くなったとたんに手のひらを返しやがった。馬鹿だの、娘を売ったクズだの、俺の気持ちも知らないで、散々罵ってきやがる」
「そうですか」
「お前のせいだ」
父は言葉をつぶやく。
「あの変態に好き勝手やれていればよかったものを。それが一番お似合いだろう。いいや、今も好き勝手されてるんだろう?お前に工場が経営出来るわけないものな。汚れた売女め。消え失せろ」
「あら?お言葉には気をつけたほうがいいですよ?」
私は書類を父に見せつける。
「なんだよ、それ」
「借用書です。父様の借金は私がすべて買い上げました。だからあなたは今、私に借金をしているのですよ?」
「は!だからどうした」
「借りたモノは、返すのが鉄則です。だからあなたには、返していただきます。これからの時間、すべてを犠牲にしてでも」
お願いします、と護衛さんに告げます。
すると護衛さん達が部屋に入って来て父を捕まえました。
このまま体を壊されては困るのです。
だってまだお金を返していただいていないのですから。
「な、なにすんだ!?」
「あなたには私の所有する鉱山で働いていただきます。借金が返し終わるまで、ずっと。安心してください。母様も、必ず見つけ出して送りますので」
「やめろ!離せ!」
「連れていってください」
「母様も必ず見つけ出しましょう。
「フレデリカ!それが産んだ親に対する態度か!この悪魔!売女め!」
父はたくさんの罵声を吐いた。
散々私のことを罵ってくる。
これがもし、愛する人間の言葉であったのならば、辛かっただろう。
涙を流しながら、崩れ落ちていただろう。
でも、今は何も感じなかった。
だって、私はもう彼のことを愛していない。
父などとは思っていない。
ただの裏切り者だ。
人との約束を無下にし、自分だけ幸福を掴む愚か者だ。
そんな人間を、なぜ愛さねばいけないのか。
「頑張ってください。家族皆で。もう二度と、あなた達のことは愛しませんから」
こうして私は父を鉱山へと送った。
父はそこで借金を返し終わるまで働き続けてもらう。
その後、母もすぐに見つけて同じ鉱山に送り込んだ。
私の名前を散々叫んでいたが、容赦はしない。
父と共に仲良く働いてもらっている。
二人で働けば借金を返すスピードは2倍だ。
とても頑張ってほしいと思った。
空になった領地は私のものになった。
とはいえあまり統治している余裕もないので使用人さんにお願いする。
彼は快く引き受けてくれた。
もともとすごく優秀な方だ。
きっとうまくやってくれるだろう。
ただ領民には甘くしすぎないようにとだけ伝えておく。
父がこうなったのも、領民の影響が大きかったから。
同じ轍を踏まないように。
釘はしっかりとさしておく。
「お茶が入りましたよ。姉様」
「ありがとう。ここでの生活には慣れた?アイリス?」
「うん。まだまだ大変だけど、楽しいよ」
ジークを抱きかかえながら、お茶を飲む。
入れてくれたのはアイリスだ。
彼女はうちでメイドとして働いている。
この働き具合で彼女を鉱山送りにするかどうかは決める。
でも、一生懸命やっているようなので、たぶん送らなくて済むだろう。
アルトは私の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
唯一の完全な被害者だ。
この子にはこんなドロドロな家族関係を送ってほしくない。
ここできちんと、育てようと思った。
赤ちゃんが珍しいのか、メイドさんの間でもう人気者になっている。
特にメイド長などはデレデレだ。
健やかに育ってほしいと思った。
「フレデリカちゃ~ん。僕にもいっぱいなでなでしてよ~」
・・・ポルコは相変わらずだ。
私がアルトを抱えているのに嫉妬して、自分も抱えて欲しいとせがんでくる。
コイツといたらアルトに悪影響がでそう。
できるだけ同じ部屋にはいさせないようにしようと思う。
「よ!フレデリカ!」
「アリスさん、お久しぶりです」
「おう!元気だったか?驚いたよ、あの豚を手なずけ手なずけちまうなんて」
「案外慣れると可愛いですよ?アリスさんもどうですか?」
「え!!やだやだ!お前もずいぶん毒されてんじゃねえの!」
「ふふふ、そうかもです」
こうして私の復讐は終わった。
お金とは怖いものだ。
よくも悪くもここまで人生を、人を変えてしまうのだから。
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