15 / 16
15話
しおりを挟む
数日後。
私は2年ぶりに実家へと足を運んだ。
馬車に揺られながら父の統治する領地へと足を運ぶ。
村へと続く道に人陰はなかった。
1年前に見たあの発展ぶりがウソのようだ。
工場が見えてくる。
工場は稼働している様子はなかった。
私達に多くの優秀な労働者とシェアを奪われた末路だ。
父にお金を供給していた資金源。
最初に潰しておいて本当に良かったと思う。
実家の前に馬車が止まる。
降りて実家を見つめてみると、それはひどいモノだった。
まるで廃墟だ。
窓や扉などがすべてない。
売れそうなものはすべて取られてしまったらしい。
そうなるくらいなら家ごと売ればいいものを。
代々継いできた家を売りたくないという意地を張った結果、このざまだ。
歩き、屋敷の中へと入る。
数名の護衛とメイドさんとともに。
「お金なら、ないですよ」
すぐに女の子の声が聞こえてきた。
声の方を向く。
するとそこには妹のアイリスがいた。
2年ぶりの再会だ。
かなり彼女は大きくなっていた。
腕には赤ちゃんが抱えられていた。
アイリスはこちらをにらみつけている。
私達を借金取りだと思っているようだ。
(まあ、違わないけどね)
「ひさしぶり、大きくなったね、アイリス」
「・・・姉さん?」
私が声を掛ける。
するとアイリスはすぐに気づいたようだ。
じわりと目に涙が浮かぶ。
顔には悲しみ、怒り、苦痛といった様々な感情が交じっていた。
でも、それでも、彼女は私のもとに駆け寄ってくる。
「会いたかった、会いたかったよお」
「・・・・・・」
泣きじゃくりながらアイリスはひざまずく。
そして片手でアルトを抱え、もう片方の手で私の足を掴んだ。
アルトはスヤスヤと眠っている。
私はそんな二人を、ただ静かに見つめていた。
(さて、どうしてやろうか)
この二人に対しての感情は複雑だ。
二人は私の代わりに両親にたくさんかわいがられた。
そのことについての嫉妬はある。
だが、アルトには何もするつもりはない。
憎いという感情は確かにあるが、彼は無実だ。
産まれてきたことを、罪とはしたくなかった。
アイリスについては、迷っている。
彼女は状況を理解しながら、両親に従った。
まだ反抗できる年齢ではなかったのは確か。
でも、到底私の味方だとは思うことはできない。
ギュルギュルとアイリスのお腹が鳴った。
どうやらしばらく何も食べていないようだ。
顔色も悪い。
頬も明らかにこけていた。
「姉さん?」
「あなたには、チャンスをあげる」
「な、何の話?」
「私の元で働いて。そしてその働きで、今後の処分を決めてあげる。どう?」
私はアイリスに提案した。
処分をしても、許しても納得はできない。
ならどちらを選ぶか彼女に選ばせてやる。
しっかりと心を入れ替えれば許す。
そうでないなら両親と同じ末路を迎えさせてやる。
それが、私の決定だった。
アイリスは私の提案にコクコクと頭を縦に振った。
交渉成立のようだ。
「二人を馬車に。父様と母様は?」
「こ、この先の部屋に」
「わかった。ありがとう」
私は二人のことをメイドさん達に任せて前に進む。
護衛には待機を命じた。
一人で部屋の中に入る。
「おひさしぶりです、ただいま帰りました」
そして笑顔で部屋の中の人物達に挨拶をした。
「・・・どの面をさげて、ここに来た」
部屋の中の人物は、こちらをにらみつけている。
すでに私が来ているのには気づいていたようだ。
低い声で私に向かって告げてきた。
彼はボロボロの衣服を身にまとい。
何も無い下手の地べたに座り。
安い酒をあおって酔っている。
私はそんな人に対して満面な笑みを浮かべる。
そして精一杯の明るい声で言ってやるのだ。
「この面ですよ。お元気そうでなによりです、お父様」
私を裏切った、父に向かって。
私は2年ぶりに実家へと足を運んだ。
馬車に揺られながら父の統治する領地へと足を運ぶ。
村へと続く道に人陰はなかった。
1年前に見たあの発展ぶりがウソのようだ。
工場が見えてくる。
工場は稼働している様子はなかった。
私達に多くの優秀な労働者とシェアを奪われた末路だ。
父にお金を供給していた資金源。
最初に潰しておいて本当に良かったと思う。
実家の前に馬車が止まる。
降りて実家を見つめてみると、それはひどいモノだった。
まるで廃墟だ。
窓や扉などがすべてない。
売れそうなものはすべて取られてしまったらしい。
そうなるくらいなら家ごと売ればいいものを。
代々継いできた家を売りたくないという意地を張った結果、このざまだ。
歩き、屋敷の中へと入る。
数名の護衛とメイドさんとともに。
「お金なら、ないですよ」
すぐに女の子の声が聞こえてきた。
声の方を向く。
するとそこには妹のアイリスがいた。
2年ぶりの再会だ。
かなり彼女は大きくなっていた。
腕には赤ちゃんが抱えられていた。
アイリスはこちらをにらみつけている。
私達を借金取りだと思っているようだ。
(まあ、違わないけどね)
「ひさしぶり、大きくなったね、アイリス」
「・・・姉さん?」
私が声を掛ける。
するとアイリスはすぐに気づいたようだ。
じわりと目に涙が浮かぶ。
顔には悲しみ、怒り、苦痛といった様々な感情が交じっていた。
でも、それでも、彼女は私のもとに駆け寄ってくる。
「会いたかった、会いたかったよお」
「・・・・・・」
泣きじゃくりながらアイリスはひざまずく。
そして片手でアルトを抱え、もう片方の手で私の足を掴んだ。
アルトはスヤスヤと眠っている。
私はそんな二人を、ただ静かに見つめていた。
(さて、どうしてやろうか)
この二人に対しての感情は複雑だ。
二人は私の代わりに両親にたくさんかわいがられた。
そのことについての嫉妬はある。
だが、アルトには何もするつもりはない。
憎いという感情は確かにあるが、彼は無実だ。
産まれてきたことを、罪とはしたくなかった。
アイリスについては、迷っている。
彼女は状況を理解しながら、両親に従った。
まだ反抗できる年齢ではなかったのは確か。
でも、到底私の味方だとは思うことはできない。
ギュルギュルとアイリスのお腹が鳴った。
どうやらしばらく何も食べていないようだ。
顔色も悪い。
頬も明らかにこけていた。
「姉さん?」
「あなたには、チャンスをあげる」
「な、何の話?」
「私の元で働いて。そしてその働きで、今後の処分を決めてあげる。どう?」
私はアイリスに提案した。
処分をしても、許しても納得はできない。
ならどちらを選ぶか彼女に選ばせてやる。
しっかりと心を入れ替えれば許す。
そうでないなら両親と同じ末路を迎えさせてやる。
それが、私の決定だった。
アイリスは私の提案にコクコクと頭を縦に振った。
交渉成立のようだ。
「二人を馬車に。父様と母様は?」
「こ、この先の部屋に」
「わかった。ありがとう」
私は二人のことをメイドさん達に任せて前に進む。
護衛には待機を命じた。
一人で部屋の中に入る。
「おひさしぶりです、ただいま帰りました」
そして笑顔で部屋の中の人物達に挨拶をした。
「・・・どの面をさげて、ここに来た」
部屋の中の人物は、こちらをにらみつけている。
すでに私が来ているのには気づいていたようだ。
低い声で私に向かって告げてきた。
彼はボロボロの衣服を身にまとい。
何も無い下手の地べたに座り。
安い酒をあおって酔っている。
私はそんな人に対して満面な笑みを浮かべる。
そして精一杯の明るい声で言ってやるのだ。
「この面ですよ。お元気そうでなによりです、お父様」
私を裏切った、父に向かって。
27
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる